第521回/探偵は、前しか見ない - 探偵は振り向かない(image lab) - アクション・ドラマ
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第521回/探偵は、前しか見ない - 探偵は振り向かない(image lab)

アクション・ドラマ
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探偵は振り向かない

探偵は振り向かない■制作者/image lab(ダウンロード
■ジャンル/ハードボイルド風探偵ノベル
■プレイ時間/45分

20xx年の東京。政府も警察も機能を果たしていない、混沌とした世界。東京の片隅で事務所を構える加納宏昌は、「裏の探偵」として、半ば便利屋のような仕事を請け負っていた。ようやく一仕事を終えたある日、加納の元に旧知の「表の探偵」山田信吾が瀕死の重傷で現れた。誰かに追われているようなのだが。近未来探偵アクションノベル。

ここが○

  • 立ち絵や1枚絵が非常にハイレベル。
  • 個性的なキャラクター達。
  • スピーディに進む展開。

ここが×

  • 前半に比べ、後半はあまりにあっさり解決してしまっているような。
  • 近未来で退廃的な設定が生かされているとは言い難い。
  • ワイド過ぎる上にフォントが独特で、とにかく文章が読みにくい。

■探偵は、前しか見ない

探偵ものというのは、小説では定番のジャンルですが、フリーのノベルゲームでは案外それほど多くありません。意外と作るのが大変だからかも知れません。そしてこの作品は、近未来の東京が舞台の探偵ものです。探偵ものではあるのですが、推理物でもサスペンスでもありません。探偵アクションものとでも言いましょうか。

舞台は近未来の日本。一応説明には「政府も警察も機能していない」と書いてはありますが、そこまで不穏な雰囲気は全体からは感じられません。一応冒頭で、警察に変わって自警団なる団体が、主人公加納のパートナーである東七菜(「ななな」と読むんだろうか?)の万引き事件に対応するところが描かれてはいますが、設定ほどのアウトローな感じ、危険なイメージは受けません。

探偵は振り向かないそして、一仕事を終えて報酬を受け取った加納の元に、山田信吾という表世界の探偵が、何者かに追われた様子で、重傷を負って加納の事務所に駆け込んできます。山田は札束の入った封筒を加納に預けるのですが……という出だし。探偵ものの出だしとしては定番的な展開ですが、続く事件への興味をひくには十分な幕開けだと思います。

前半は、山田を追っていた組織とのやり取り、謎の美女情報屋ローズとの意味深な関係、パートナーである七菜の過去を示唆する描写など、読者の興味を高める仕掛けになっており、展開のスピーディさもあって、なかなか盛り上がります。最初に書いた通り、推理もサスペンスもないのですが、探偵ドラマとしては掴みも上々で、楽しみながら読めるでしょう。

画面写真を見ていただければお分かりの通り、1枚絵も立ち絵も非常に美麗です。敵役を除いた主要キャラには、みんな立ち絵があるので、ビジュアル面でも楽しめると思います。ただ、上にも書いたように全体の雰囲気が妙に爽やかで、退廃的なハードボイルド的な香りがしないんですよね。立ち絵の可愛らしさもそうですし、音楽もピアノ主体の綺麗な曲がほとんどです。

曲自体はとてもいいですし、それはそれで爽やかな雰囲気を出していていいんですが、絵の可愛さも相俟って、探偵ドラマではなく恋愛ものでも読んでいるような気になってきます。せっかくこういうジャンルなのですから、ジャズとかボサノヴァとかブルースとか、煙草の煙とブランデーグラスが似合うような、もっと渋目の曲を選んでも良かったのではないでしょうか。それだけで全体の印象がかなり変わったと思うのですが。それは裏を返せば、ビジュアルでも音楽でも、いかにも探偵ものという雰囲気が苦手という人でも、楽しめる物語であるとも言えます。

さて、後半は物語が一気に動き始めます。読者も手の汗を握るような緊迫感のある展開になって、さあどうなる、というところなのですが、後半の解決編が、ちょっとあっさりし過ぎているような気がしました。その上、主人公の加納があまり活躍しないんですよね。むしろすぐ捕まってるし(笑)。展開自体は面白いのですが、敵組織がかなり拍子抜けな対応であっさり勝ってしまうので、ここはもう少し危機感を煽って、加納にもっと活躍させても良かったように思います。七菜の過去についても、意味深な描写があった割には何も明らかにならず、ちょっと語り足りない感はあります。

それと、画面はかなりのワイドサイズ(16:9かな)で、上下を黒く切った映画風のビジュアルです。これは作品ジャンルを考えれば、結構効果をあげていると思います。が、その為に文章表示領域が異常に横長になってしまい、非常に読みにくいです。文字サイズも小さく、1行に表示される字が多過ぎる上、フォントが明朝やゴシックではない、独特の文字なんですよね。

読ませる為のフォントって、特別な場合を除いては、明朝かゴシックとそのバリエーションの字体が、やはり読みやすいと思うのです(新聞とか小説が、例えばみかちゃんフォントとかあずきフォントで書かれていたら、多分あまり長時間読むのにはたえないかと……)。文章を読ませるノベルゲームにおいて、文章の読みやすさはある意味一番大事なところですから、ここには少し配慮が欲しい気がしました。

しかし、短時間で読めるアクション作品としては、展開のスピーディさもあって十分楽しめる内容でした。ツールはティラノスクリプト。選択肢はなく、プレイ時間は45分くらい。ゆっくり読んでも1時間はかからないでしょう。ビジュアルが文句なく美しいですから、画面写真で気になったらプレイして間違いはないと思います。ハードボイルドではないのですが、手軽な探偵アクションドラマ。気軽に読んでみてください。
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