第522回/血の証明、その刹那 - 紅く追憶の水葬(kotonoha*) - ミステリー・サスペンス
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第522回/血の証明、その刹那 - 紅く追憶の水葬(kotonoha*)

ミステリー・サスペンス
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紅く追憶の水葬

紅く追憶の水葬■制作者/kotonoha*(ダウンロード
■ジャンル/閉鎖洋館ミステリーノベル
■プレイ時間/4時間

記憶を失い、病室で目覚めた主人公の元に、「刹那の探偵」と名乗る紅静莉と、その父親紅万象がやって来た。行くあてのない主人公の為に、自分の屋敷に招いてくれるという。その申し出を受けた主人公は、静莉の屋敷へ向かう。静莉の誕生パーティの後、やがて巻き起こる殺人事件。果たして「刹那の探偵」の推理や如何に? そして記憶喪失の主人公との関連は?

ここが○

  • 美しい立ち絵と個性的なキャラクター。
  • バッドエンドになっても該当のフラグだけ立て直せばいいという親切設計。
  • 二転三転する練られたストーリー。

ここが×

  • ミステリーとして見ると、読者に色々不親切な気が。
  • 何となく中二っぽい。
  • 謎解きがあまりしっくり来ない。

■血の証明、その刹那

ミステリーやサスペンスの中でも、いわゆる「閉鎖洋館もの」というのは、一時期一大潮流を巻き起こしました。商業作では「かまいたちの夜」、フリーの作品でも古くは「1999 Christmas eve」がありましたし、ここで取り上げた中にも「氷雨」「七年凪」「ホームタウン」「柵の淵」「ある夏の日、山荘にて……」など、名作もあれこれあります。

が、最近ではこの手の作品をあまり見なくなりました。恐らくですが、閉鎖空間のミステリーって作るのに手間がかかるんですよね。プロットもかなり精緻に組まないといけないでしょうし、マルチエンドにするとなると手間も倍増ではすみません。キャラクターだけで押し切るような展開というのも不可能です。好きでないと、なかなか書いてみようという気になれないでしょう。そんな中、久々に本格的なクローズドサークルものの登場です。

紅く追憶の水葬この物語は、主人公が記憶喪失となって病室で目覚めるところから始まります。そこへやって来たのは、自称「刹那の探偵」紅静莉と、その父親である紅万象。早速静莉は、推理によって主人公が記憶喪失である事を言い当ててみせます。そして、行くあてのない主人公を、自分の屋敷に来ればいいと招き、主人公は静莉の屋敷へ向かう事になりました。

この序盤、いきなり「証明!」と言って背景が変わり、静莉が推理を繰り広げるシーンや、静莉が主人公の事を「オセロ」と名付ける件など、良く言えばアニメっぽくて演出が効いている展開ですし、悪く言えばちょっと中二っぽいというか……。まあ、題材が閉鎖空間でのミステリーという、ともすれば展開が単調になりかねない物語ですから、こういう切り口で個性をつけるというのも、ある意味では「あり」かも知れません。ミステリーにありがちな、変に小難しいレトリックをこねくり回す文章よりは、読みやすく楽しく仕上がっているとも言えます。

オセロは運転手に伴われて静莉の屋敷を訪れ、当日が静莉の誕生パーティである事を聞かされます。登場人物は皆個性豊かで、立ち絵もとても綺麗で良く描けています。登場人物達の会話もなかなか楽しいのですが、肝心の事件がなかなか起きないので、この辺りはちょっと痺れを切らす人が出てくるかも知れません。事件が起こったと思ったら実は……みたいなフェイントもありますし(余談ですが、最初の「事件」では、静莉よりもアッシュの推理の方が理にかなっていて説得力があるように思うのは、私だけでしょうか)。

そしてようやく起こる事件。ミステリーものではあるのですが、あれこれ探索したり、難しい選択肢を選ばされたりしないので、その意味では遊びやすい作品です。探索好きの方には、ここは少々物足りないかも知れませんが、個人的には遊びやすく感じました。1枚絵はそうたくさんはないのですが、ここぞというシーンで効果的に挿入されています。音楽の選択も良く、雰囲気を高めていました。

さて、解決編です。何というか前提、設定に色々無理があるように感じてしまいました。犯人の設定も、「そんな体質がありうるのか!?」という感じの上(私、一応医療技術者なので)、後から言われると「ああ、そうだっけ?」という印象で、特にヒントが与えられた訳でもなく、犯人当てのシーンは完全に当てずっぽうにならざるを得ませんでした。まあ当てずっぽうで間違えても、犯人選択に戻るだけですし、運良く当てられればあとは何も考えなくても主人公が全部やってくれるのですが(笑)。

またオセロの設定についても、何だか伝奇かファンタジーめいていて、「?!」となりました。ミステリーにそういう設定はどうなんだろうと。なので純粋なミステリーを期待していると、後半でちょっとその落差に驚くかも知れません。最後に明かされる事実についても、前半からそれを示唆するような描写があった訳でもなく、どうにも唐突感が拭えません。最後の最後、万象が静莉に依頼して……のところも、「そこまでやらんでも」とちょっと感じました。

フィクションの物語としては、二転三転する展開が読み応えがありますが、二転三転させようとするあまり、ちょっと無理が出て来ているところがあるように感じました。しかし、キャラクターはどれも魅力的で、ミステリーではなく、一本の物語として見れば十分魅力的だと思います(作者さんのサイトには、ノックスの十戒に則っているみたいな事を書かれていましたが、あそこまでやるなら、フィクションに徹してそこはこだわる必要はなかったかと)。

途中で結構選択肢が出て来ます。全部正解しないと、後半でバッドエンド直行になるのですが、章ごとに細かくやり直しが効く上、バッドエンドになった原因選択肢がある場合は、章を選ぶ時に分かるようになっていますので親切です。ツールはRPGツクールMVですが、Macでもプレイできるのがありがたいですね。ノベル用のツールなので、細かいところはノベル専用ツールには及びませんが、普通に遊ぶ分には特に問題はありません。プレイ時間は4時間くらい。推理ものだと身構えなければ、キャラクターのやり取りと二転三転する展開を、十分楽しめると思いますよ。
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