第531回/My mother told me - Kids box(Mrs.ハンマー) - SF
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第531回/My mother told me - Kids box(Mrs.ハンマー)

SF
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Kids box

Kids box準推薦
■制作者/Mrs.ハンマー(ダウンロード
■ジャンル/世界からの脱出ノベル
■プレイ時間/1時間

主人公達といつも一緒に過ごしていた「オンガク」が、ある日突然姿を消した。マザーにその事をきいても、何も答えてくれない。そして主人公がある日森を散策していると、森の奥に壁を発見する。友人のテツも姿を消した事で、主人公はネイを誘って、壁の向こう側へと足を踏み出す決心をした。不思議な雰囲気で送る、SF風物語。

ここが○

  • 文章力が高く読み応えがある。
  • 最初は何が何だか分からないが、徐々に明らかになる世界観。
  • 想像の余地もありながら、前向きな物を感じさせるラスト。

ここが×

  • エンターテインメント性が高い訳ではないので、そういうのを求める人には向かない。
  • 全てが説明される訳でもないので、想像力がないと面白くないかも。
  • エンドロールが何もないなど、ちょっと地味。

■My mother told me

フリーのノベルゲームって、エンターテインメント性の高い、いかにもゲームという物語もたくさんあって、そういうのももちろん好きです。むしろ、そういう楽しい物語の方が好きなのですが、一方で少し考えさせる、想像力を刺激してくれる作品も多く、そういう作品に出会えるのもまたフリーならではです。この作品は、後者です。文章だけの地味な作品ですが、仲々の味わい深さです。

この作品には、立ち絵や1枚絵はなく、文章だけです。文章だけで勝負する作品は、文章力が高い事が多いように思いますが、この作品もしっかり読ませる文章が見事です。また、文章だけの作品って、得てして画面が文章で溢れて、読みながら疲れてしまう事も多いのですが、この作品は適度に改行を入れて、なるべく読みやすくする工夫がなされています。こういう配慮はありがたいですね。

Kids boxさて、この物語。読み始めると、いきなりよく分からない世界観で、ちょっと置いていかれ気味になります。主人公は、オンガク、テツ、ネイといつも一緒に過ごしていたのですが、ある日突然、オンガクがいなくなってしまいました。そしてこの世界ではそれぞれの人物に「マザー」という教育係(?)がいるのですが、マザーも何も教えてはくれません。

こんな感じで始まるのですが、出だしは世界観がよく分からず、物語がどこへ進むかもよく伝わってこず、読み手は「何のこっちゃ?」という感じになるでしょう。しかし読み進めると徐々に世界観が分かってきますし、タイトルの意味も明らかになってきます。壁の向こうに行く中盤からは、展開もなかなかスリリングです。エンターテインメント性が高い物語ではないですし、決して分かりやすいストーリーではないのですが、山あり谷ありでしっかり読ませてくれます。

そして後半からラスト。世界観が明らかになり、明かされる秘密。なるほどとしばらく考え込んでしまいました。考え込んでしまったのですが、読後感は良好です。私は2回読んでしまいました。世界観が明らかになるとは言っても、何もかもが説明される訳ではなく、ラストもちょっと語り足りないところはあります。それでも、非常に想像力を刺激されるラストです。色々と考えてみたくなります。

この作品、取っつきやすくはないのですが、読み進むにつれて段々と読者を引き込んでくれる内容です。考えさせるところはあるものの、決してそこまで難解な作品でもありません。不思議な世界観で、ゲーム的なストーリーではありませんが、何故か読み手を捉える魅力のある物語だと思います。基本的には私はエンターテインメント寄りの作品が好きなのですが、この作品にはそういうのを超えて、読み手を惹きつける力があると思いました。ただ、人間関係の面白さが描写されるタイプの物語ではないので、そこには少し物足りなさを感じるかも知れません。

背景の写真は色々なのですが、いい写真を選んでいると思います。ネイと壁の向こうへ足を踏み入れた時の、SFめいた写真には驚きました。確か、東京だか埼玉だかの地下の、浄水施設があんな感じだとどこかで見た事があるのですが、そこの写真なのでしょうか。その他、雰囲気のある写真が多く、楽しめます。文章だけの作品って、背景写真も凝っている事が多いですね。

が、終わり方があまりにも呆気ないと言いますか、エンドロールも何もなく、タイトルに戻るかどうかを尋ねるアラートウィンドウが出てきて、戻るをクリックするとタイトルに戻るだけという、シンプル極まりない作り。せっかく作品の読後感は余韻があって良いものなのに、ちょっと勿体無いですね。小説ではなくゲームの体裁をとっているのですから、余韻を持続させるエンディングがあればと思いました。またタイトル画面も非常に地味で、これは少し損をしているように思います。もう少しこの辺りも凝っても良かったのでは。

ツールは吉里吉里です。吉里吉里は既読スキップが物凄く早く、この作品のように何度か読み返したい場合は重宝しますね。ただ、高速すぎてあっと言う間にラストに到達したりしますが(笑)。選択肢はなく、じっくり読んでも1時間はかからないと思います。「楽しい」「わくわくする」「感動する」というタイプの作品ではありませんが、読後の感銘が持続する不思議な物語です。時には少し固い物語を読んでみたい方、こんな作品はいかがでしょうか。
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