第534回/標本は怖いほど美しい - 人間標本(ルリエ工房) - ホラー
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第534回/標本は怖いほど美しい - 人間標本(ルリエ工房)

ホラー
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人間標本

人間標本■制作者/ルリエ工房(プレイする
■ジャンル/雨のバス停サイコホラーノベル
■プレイ時間/10分

趣味である写真の為に、はるばる田舎町へやって来た主人公。首尾よく写真を撮り終えて、雨が降りしきる中いつまでも来ないバスを待っていると、バス停に1人の青年が現れた。退屈しのぎに青年の話を聞くと、彼は昆虫の標本作りが趣味なのだと言うが。読み終えるとちょっと背筋が寒くなってしまう、超短編ホラーノベル。

ここが○

  • オチに向かってだんだん怖さが加速していく展開。
  • 青年の異常な語りと主人公との対比。
  • 文章だけで淡々と語るからこその怖さ。

ここが×

  • スマートフォン用なので、パソコンだと少々読みにくい。
  • ダークなお話なので、苦手な人にはお薦めできない。
  • タイトル通りである意味捻りがない。

■標本は怖いほど美しい

札幌の街には昨日、平年より3週間以上も遅く初雪が降りまして、ホラーを読むまでもなく寒い季節がやって来ました。もうホラーという季節でもないんですが、好きな人は好きそうな掌編ホラーのご紹介です。ホラーと言っても、一般的なホラーとはちょっと違うような気もしますが、ホラー以外にジャンルの分けようもないので、ホラーという事でご了承ください。

舞台は、雨のバス停です。雨のバス停って、「となりのトトロ」のイメージもあるせいか、ちょっと不思議な独特の雰囲気がありますよね。ノベルゲームで言えば「8月7日の雨宿り」とか、比較的最近ですと「雨宿りの理由」ですとか。冒頭は、都会から田舎町へ趣味の写真撮影にやって来た主人公が、なかなか来ないバスを待っている描写からです。

人間標本私の実家も、バス停自体は近いのですが、バスが1日10本も来ないような辺鄙な場所ですので(20分歩けば、もうちょっとバスの本数が多い通りに行けますけど)、主人公の気持ちは少し分かります(笑)。まあ、私は都会が苦手なので、そのくらいのんびりした町の方が好みなのですが。それはさておき、そしてそこへ色白で細身の青年が現れ、主人公は青年の話を聞く事になります。

この青年の話、最初からどことなく不穏なムードを漂わせています。昆虫標本作りが趣味だというのですが、特に主人公が求めもしないのに、標本の作り方を延々と説明する辺りで、既に彼の異常さが垣間見えます。この、青年の周りの見えていなさと主人公の対比が、非常にホラーとしては効いていると思います。そして嫌な予感的中とばかりに青年が語る、とんでもない事件。

この辺り、特に描写で怖さを煽ったりせず、あくまで文章だけで淡々と語っているので、余計に怖さ(異常さ)が際立っています。そしてやって来る衝撃のオチ。お化け屋敷のように画像や音で怖がらせる作品でなく、また作中では血が飛び出すとか、幽霊が現れるとか、怖い出来事は何一つ起こっておらず、あくまで文章一本で、しかも青年の語りだけで怖さを描き出しています。この手法が物語にぴたりとはまって、短編ホラーとして見事な出来栄えだと思います。

もっとも、こういう作品ですから好みは絶対分かれると思います。ホラーでもハッピーエンドな作品は存在しますが、当然ながらハッピーエンドでも何でもなく、何とも言えない後味の悪さが残りますので、そういうのが苦手な方はご注意ください。また、描写が意外と生々しく、直接的ではないもののグロテスクな要素も結構ありますので、もしかしたら気分が悪くなる人がいないとも限りません。逆にこの手の、ちょっとサイコホラー気味の短編がお好きな方なら、きっと楽しめるはずです。

画面写真を見ていただければ分かるように、画面は縦サイズです。スマートフォン仕様ですね。「むこうがわの礼節」「ありすとーく」同様です。確かにスマートフォンで読むのに適した長さの作品でしょうね。なので、言うまでもありませんが、パソコンの画面で読む分には決して快適とは言えません。改行ピッチをもう少し広くとるか、段落を替える時の一字下げがあれば、もう少し読みやすくなったのではないでしょうか。

また、背景が妙に縦長に加工されているものが多く、若干の違和感を感じました。パソコン用の横長画面ではなく、縦長のスマートフォン仕様にするならば、背景写真も最初から縦長画面に特化した加工にすれば良かったように思います。一部の場面では、背景写真が縦長過ぎて、一瞬何の写真だかよく分からない場面もありました。しかし、抑え目の文章が非常に効果的に働いて、短編ホラーとしてはとてもよく出来た作品だったと思います。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢なし、プレイ時間は10分です。ダウンロード版はなく、ブラウザー版のみの模様です。後味がいい物語ではないために、好みは分かれるでしょうが、この手の作品が好きな人にはたまらないでしょう。もう寒い季節ですが、短い作品でぞっとするような怖さを味わってみたい方は、是非プレイしてみてください。
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