第535回/僕は公園でこの人と出会った - SECRET GARDEN(エポック・ワン) - 学園・青春
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第535回/僕は公園でこの人と出会った - SECRET GARDEN(エポック・ワン)

学園・青春
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SECRET GARDEN

SECRET GARDEN準推薦
■制作者/エポック・ワン(ダウンロード
■ジャンル/公園の東屋で出会いノベル
■プレイ時間/30分

高校生の主人公円城寺アラタは、高校に行く気力も湧かず、公園へ行ってはスケッチをする毎日だった。そんなアラタの前にある日、物静かなお姉さんが現れる。無表情でただ一転を見つめるお姉さんに、アラタはどこか惹かれるものを感じ、お姉さんに会える事を期待して公園へ足を運ぶようになるのだが。青春の香りを感じさせる短編物語。

ここが○

  • きちんと起承転結整った流れ。
  • 綺麗な立ち絵と1枚絵。
  • ヒロインのお姉さんが素敵。

ここが×

  • 主人公がちと無気力過ぎのような。
  • 1枚絵鑑賞モードがあればなお良かった。
  • 舞台が公園から動かないので地味。

■僕は公園でこの人と出会った

いわゆる「無気力系主人公」が登場する作品は多いですが、この作品の主人公は極め付きに無気力です。何せ、高校生なのに全く学校に行きません。主人公が高校生で、作中でそれなりの期間が過ぎるのに、一切高校生活の描写がない作品というのも、珍しいと思います。毎日毎日サボっては公園に行くという描写を見ていると、「こいつ将来社会に出られるのか?」と、どうでもいい心配をしてしまいます。

もちろんこの作品においては、高校の学園生活描写などは全く必要のないものですが、もう少し前向きなところも描いてくれればと思わされるところではあります。最初読んだ時は、そういう訳でちょっと主人公に感情移入が難しく感じました。大学生でも良かったのでは、と(大学生だって、学校には行かないと駄目ですが)。更に序盤の描写が妙に捻った感じなので、高校生が哲学的な思想をこねくり回す作品なのかと、第一印象ではそう思ったのですが……。

SECRET GARDENこの主人公円城寺アラタは、事故によって両親を喪ったという設定です。学校にも行かず、公園にやって来てはひねもす絵を描きふけっています。そこである日、無表情のまま佇んでいるお姉さんと出会うという物語です。舞台は終始公園の東屋だけで、他に一切動く事がありません。学校生活どころか、家庭生活も一切描かれません。

なので単調になるかと思いきや、そんな事は全くありませんでした。また、アラタとお姉さんの出会いから、少しずつ仲良くなる様子、そして後半と、非常に流れがよく出来ているのですね。舞台は公園だけなのに、また登場人物はたった2人しかいないのに、しっかりと起承転結が作られていて、退屈する事がありませんでした。適度にイベントも挿入されて、アクセントにもなっています。

ラストに至って、お姉さんがどういう人で、何故公園にいたのかが明らかになります。この作品は、ラストの意外さで驚かせるとか、伏線が物を言うと言うタイプの物語ではありませんが、それでもラストでは心地よい収束感を味わえました。非常に綺麗なハッピーエンドです。学校に全く行っていなかったアラタも、あのラストではきっとやる気を出して頑張ってくれているのでしょう。最近、綺麗なハッピーエンドの作品をあまり読んでいなかった気がするので、この作品のラストには非常に和みました。

また、絵柄は少し独特で、流行のアニメ絵ではないのですが、特に1枚絵は非常に上手く描けています。アナログっぽいタッチではありますが、水彩画風と言うのともちょっと違う気がしますし、この塗り方はなんと表現すればいいのでしょうか。どの絵もとても魅力的です。これだけ絵が綺麗なのですから、クリア後に1枚絵の鑑賞モードでもあれば嬉しかったのですが。

作中では、数ヶ月が過ぎる設定になっています。そのため、後半では立ち絵の服装が変わったり、芸が細かいです。舞台が全く動かないだけに、こういう小技が逆に非常に効いていました。ただ途中のイベント後から、アラタとお姉さんが仲良くなっていったという描写があるのですが、1行で「どんどん仲良くなった」みたいな描写があるだけなので、ここはもう少し詳しく描いて欲しかった気もします。

この作品、上にも書いたように、巧妙な伏線や驚くようなラストのどんでん返しがあるタイプの作品ではありません。どちらかというとキャラクタードラマでしょう。そのキャラクターも、決して派手ではなく、目を見張るようなやり取りがある訳でもありません。それでもこれだけの物語を作れるというのは、ひとえに丁寧かつ行き過ぎない、つぼを押さえた描写、独特の文章リズムに寄るところが大きいと思います。作者さんの筆力は大したものだと思いました。

システムはティラノスクリプトです。選択肢のない一本道で、プレイ時間は30分内外というところだと思います。一見とても地味ですが、非常に味わい深い短編青春物語です。一見捻っているように見えて、最近では珍しいストレートな作品でした。また、作中のお姉さんの台詞は、創作活動をした事のある方なら共感できるところもあるのではないでしょうか。無論、創作活動など何もした事がなくても問題なく楽しめます。是非読んでみてください。
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