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第542回/ハッピーエンドは終わらない - ハッピーエンドに花を添えて(Milk cat)

恋愛
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ハッピーエンドに花を添えて

ハッピーエンドに花を添えて準推薦
■制作者/Milk cat(ダウンロード
■ジャンル/春夏秋冬純愛ノベル
■プレイ時間/1時間半

晩春のある日、仕事を終えた高沢は、禁煙のためにいつも通るコンビニの前を避けて、たまたまとある生花店の前を通りがかった。そこで出会った1人の少女と、視線が交錯する。そして始まる2人の物語。春に出会い、夏に色づき、秋に実り、そして冬に育む。1年で4つの小さな恋の物語を綴る、純愛ノベル。

ここが○

  • ストレートで心地よい恋愛描写と春夏秋冬で移り変わる様々な舞台や服装。
  • 非常に快適でプレイしやすいシステム。
  • 破壊力抜群の各種イベント。

ここが×

  • ストレート過ぎて恥ずかしい人もいるかも。
  • 恋人同士になってからが長いので、だれる人もいるかも。
  • 水野さんがいい味を出してるけど、ちょっと可愛そう。

■ハッピーエンドは終わらない

ほたるゆき」「ありすとーく」の作者さんの新作です。この作品、実は今年の6月には最初のエピソードが公開されていました。その時はすぐプレイしたのですが、その後2ヶ月おきに1エピソードずつ追加される事を知り、あえて続きはプレイせずに、全話公開されるまで待っていました。この手の続き物は、絶対にまとめて読みたくなるたちなのです。完成を楽しみに待っていたのですが、やっと公開されましたので、一気にプレイしました。

最近、妙に哲学的な話とか、難しい話がフリーノベルでも流行している感がありまして、直球の恋愛ものは凄く減った印象があります。が、この作品は非常にストレートな恋愛ものです。凝った伏線や難解な展開ではなく、王道の展開でありながら、状況とつぼを抑えた台詞回しによって読者を引き込むタイプの作品。この作者さんの作風通りの作品で、このような作品が減った現在では、大変楽しんで読むことができました。

ハッピーエンドに花を添えて主人公は、SE(だと思われる)の高沢正人。先輩社員の水野さんと、いつも忙しく働いていますが、ある日帰宅時に通った生花店の前で、アルバイト店員の女の子からじょうろで水をかけられて、彼女と目が合います。そこから始まる恋愛物語です。出会いからしてお約束感が満点ですが、花言葉を上手く絡め、高沢が悶々とする様子が面白いです。先輩社員の水野さんの存在も、実によく効いています。この第1話だけでも、恋愛短編としてとてもよくできていました。

第1話で高沢と小夜は無事付き合う事になるのですが(社会人と高校生。なんて羨ましい)、第2話以降では、小夜のちょっとした過去の秘密や、水野さんのことまでも絡んできて、単純な恋愛ものではなく、意外と(と言うと失礼ですが)重層的な構造を見せてくれます。特に、水野さんのエピソードが明らかになる第3話(秋編)が私はお気に入りです。小夜より、私は水野さんの方が好きかも(笑)。

この水野さんのエピソード、お気に入りなのですが、水野さんのエピソードを際立たせるため、もう少し前半からそれっぽい描写をしておいても良かったのかな、と感じました。そうすればもっと切なさを前面に出すことができたかも、と。決して唐突ではないですし、言われてみれば、なるほどそうだよねと納得できるのですが、水野さんファン(いつからだよ)としては、そんな風に感じてしまいました。まあ、この作品のクライマックスはそこではありませんので、このままでもいいのでしょうね。でも、水野さんが少々可哀想には感じてしまいましたね。彼女のさっぱりとした性格もあって、尾を引いたりはしませんので、そこはキャラクター設定の上手さだな、と思いましたが。

この作品は、春夏秋冬を通じての物語です。なので、服装も各話で変化しますし、舞台も色々です。バラエティに富んでいて、プレイ時間以上に楽しむことができました。夏の海はとか、クリスマスはとか、他にも色々見てみたい気持ちになりました。冬編での小夜の制服姿を見た時は、現在北海道在住の私は「これでは凍えてしまう!」と一瞬思ってしまいましたが(笑)。

非常に真っ直ぐな恋愛ものですので、恥ずかしくなってしまう人がいるかも知れません。しかし、冒頭でも書いたように、小難しい話、鬱になりそうな話、難解で考え込むような話が多い今の時代は、「だからこそいい」と思います。まあ、序盤で早々に恋人同士になってしまうので、だれる人もいるかも知れませんが、この作品の場合は全4話の構成が上手く作られているので、小夜と恋人同士になってからでも、私は飽きずに読むことができました。

それは、全4話それぞれ単体でもきちんと完結しており、かつ各話で少しずつ新しい事実などを出していき、それが後の話で上手く解決されて、エンディングに徐々に導かれている構成によるところが大きいと思います。上述の通り、私は全話完結まで待って一気に読んだのですが、これならば各話が公開された時に読んでいたとしても、もしかしたら一気に読む以上に楽しめたような気がします。単に全体のストーリーの一部分を切り取って公開したのではなく、分割公開を考えた作りになっている辺り、流石に熟練の技を感じさせられました。

音楽や背景などは、よくある素材ではなく、非常に手をかけて作られています。また、ツールはNScripterなのですが、システム面が非常に使いやすいですね(Macのマウスだと文章読み返しが非常に困難になりますが、それはMacのマウス側の問題ですし)。軽くて起動が早く、動作が安定しているのはもちろんの事、エフェクト類も、途中でクリックすればカットできますし、もちろんじっと全部見てもよしです。これほどプレイヤーの事を考えて作られた作品は、最近は少ない気がします。

プレイ時間は、1話辺り20分か、台詞をじっくり聞けば30分くらいでしょうか。全部読めば1時間半から2時間くらいだと思います。選択肢はなしの一本道です。純粋な恋愛ものとしては、久々に非常に質の高い物語に出会えたと思いました。適度に捻りも効いており、キャラクターもとてもよく出来ています。ほのぼのするもよし、現実との落差に打ちのめされるもよし(笑)。正統派恋愛ものがお好きな方に、自信を持ってお薦めします。
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