第544回/太陽系では9番目 - Planet nine(あ行。) - 不思議系
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第544回/太陽系では9番目 - Planet nine(あ行。)

不思議系
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Planet nine

Planet nine■制作者/あ行。(ダウンロード
■ジャンル/星の夢が紡ぐ絆ノベル
■プレイ時間/30分

光岡天音は、ある夏の未明に不思議な夢を見た。一面の暗黒の世界の中、遠くに見える星。彼女はそれを「Akeboshi」と呼ぶ。目を冷ました天音は、妹の音羽と星を見に行く約束をするが、両親からの許可が下りずに、結局プラネタリウムに出かける事に。4人の主人公の物語がだんだん繋がっていく、不思議な雰囲気の短編物語。

ここが○

  • 4人の登場人物の物語が少しずつ繋がる様子が面白い。
  • 演出が綺麗で物語を盛り上げている。
  • エンディングのアニメが美しい。

ここが×

  • 短すぎて語り足りないところが。
  • なのでキャラクターの魅力が伝わる前に終わってしまう。
  • パソコン画面では読み辛い。

■太陽系では9番目

ここのところ、スマートフォン用の画面サイズに特化された作品が、ちらほら見受けられます。「むこうがわの礼節」「ありすとーく」「人間標本」など。この作品もそうですね。画面の縦横比がパソコンとは当然違いますので、パソコンでプレイする場合は、注意しないと少々読みにくい作品になる事が多いです(媒体が違うから当然なのですが)。

この作品の場合どうかというと、ちょっと文字サイズが小さく、またウィンドウサイズの変更ができないのが気になりました。私は、iMac+Parallels desktop+Windows 10という環境でプレイしていまして、Windowsはウィンドウ1枚なのですが、この作品は縦サイズが大きすぎてウィンドウからはみ出してしまい、フルスクリーンにせざるを得ませんでした。だからプレイしにくいというほどではないのですが、文字サイズくらいはもう少し大きくても良かった気はします。まあ、ウィンドウの問題は、ブラウザーでプレイすれば済む事ですが(でも私は、気に入った作品はなるべくダウンロードして手元に残したいのです)。

Planet nineさて、この物語はちょっと変わった構成で作られています。最初は、女子高生の光岡(普通「みつおか」と読むが、なんと「ひかおか」と読む)天音が夢を見て、目覚めた後に妹の音羽とプラネタリウムに出かけるシーンから始まります。が、そのシーンはあっと言う間に終わってしまい、次の登場人物である英青葉の物語に移って行きます。

英のシーンでは、1番目の主人公である天音と偶然出会い、ややあって英の場面も終わり、今度は3番目の登場人物、遊佐千鳥の場面に移ります。ここでも、千鳥が天音、英と出会い……と言う具合に、順番に登場人物が出てくるオムニバス形式のような体裁を取っているのですが、前の登場人物の話の時には、後の登場人物は出て来ず、後の登場人物の話になってから、前の登場人物と知り合っていく、と言う作りです。

これがなかなか面白くて効果をあげています。最初から全員出すのに比べて、キャラクターや展開に対する理解もスムーズですし、徐々に話が1つの収束点に向かっていく様子を、構成でも描写できていると思います。この独特の構成が、この作品の魅力の1つになっているのは、間違いありません。4人の登場人物も、年齢や性別、立場が異なっており、バラエティに富んだ展開を楽しめました。

天音、英、千鳥が見る夢を、天音は「灯り星(あけぼし)」、英は「Planet nine」と呼び、千鳥は夢としてしか扱いません。同じ現象に対する、このような各キャラクターの反応の違いが、物語が進行するにつれて、だんだん1つに重なって行きます。この物語進行と、上でも書いたような独特のオムニバス構成がよくマッチしています。構成が物語を生かして盛り立てている好例です。

ただ、この構成を活かすには少々物語が短すぎたような気がしなくもなりません。前半3人(天音、英、千鳥)の章は、読み手が把握できる前に、あまりにもあっという間に終わってしまいます。その割に、後半で明かされる事実が意外で驚かされるのですが、それならばもう少し前半で何かしらの伏線を張っておいても良かったような気がしました。この辺り、意外性と整合性と言うのは、相反する要素でもあるので、難しいところとは思いますが。そうすればもっとキャラクターの魅力が伝わってきやすい物語になったのでは。

この作品、全体に演出が凝っていて見応えがあります。ノベルゲームであまりに画面の演出に凝ってしまうと、今度は「演出を伴って文字を読む」という大前提がずれてしまう感があり、そのさじ加減が難しいのですが、この作品は、文章をしっかり読ませてくれつつ、演出もそれを邪魔しない程度に効果的に挿入されており、ここらには作者さんの優れたバランス感覚を感じました。また、エンディングがとても綺麗で、アニメのエンディングでも見ているようでしたね。

ツールはティラノスクリプト(ティラノビルダー。以前からですが、ビルダーもスクリプトも、一貫して「ティラノスクリプト」と表記しています)。プレイ時間は20〜30分くらいで、選択肢のない一本道です。一見SF風に見えますが、SFっぽくはない少し不思議な物語。意欲的な作りと、効果的な演出が独特の存在感を放っています。この作者さんの作品には、今後も注目してみたいですね。
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