第546回/巡る季節にあと1ピース - ひとひら、ひとかけ。(りっと) - オムニバス・その他
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第546回/巡る季節にあと1ピース - ひとひら、ひとかけ。(りっと)

オムニバス・その他
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ひとひら、ひとかけ。

ひとひら、ひとかけ。準推薦
■制作者/りっと(ダウンロード
■ジャンル/パズルと四季のオムニバスノベル
■プレイ時間/30分

幼い頃、児童会館で一緒にパズルを作ったお兄さんとの思い出を懐かしむ女子高生。犬と猫が、なくなったパズルの1ピースを推理する物語。書店で片思いの相手に思いを馳せる女の子。そしてひたすら真っ白なパズルを組み立てる少女。四季折々の風景と、パズルという共通項で5人の作者さんが送る、4つ+1つの小さな物語。

ここが○

  • レイアウトがお洒落。
  • 四季それぞれの雰囲気が楽しめる。
  • どの物語も、ちょっと一捻りあって短編ならではの面白さ。

ここが×

  • 文字サイズが小さくて少々読みにくい。
  • 派手な物語がお好きな方には向かない。
  • 誤用がちょっと気になった。

■巡る季節にあと1ピース

3段目のきみ、5段目のぼく。」の作者さんによる作品ですが、この作品はその他にも4人の作者さんが参加し、合計5人の作者さんによる短編オムニガス形式の作品集です。4人の作者さんが、春夏秋冬それぞれの季節の短編を担当し、4本全部を読むと、最後にまとめのような話が読めるという構成です。

春夏秋冬それぞれの短編は、1本辺り5分もあれば読めるでしょう。それぞれ短編としてなかなかレベルが高い作品が揃っていますが、制作経験豊富な実力者の方々が名前を連ねており、それを見ればレベルの高さにも納得です。またこの作品、画面写真を見ていただければ分かりますが、レイアウトが大変洗練されていてお洒落です。短編オムニバス形式だと、こういうところに凝っていると全体の雰囲気が高まりますね。ただその分フォントサイズは小さく、少し読みにくいです。レイアウトと読みやすさは、なかなか両立しにくいところではありますが。

ひとひら、ひとかけ。春の物語の作者は、「ようこそ、猫柳堂書店へ。」を書いた方です。高校の入学式当日に、子供の頃の思い出を振り返る女子高生が主人公。密かに憧れていたお兄さんとの描写が初々しいですね。最後まで描かない終わり方も、余韻を残してくれて良かったです。あのまま実は新任の先生が……な終わり方だと、ちょっと安直過ぎる気がするのですが、その前で切ったのは正解のように思いました。4本の中では、私はこの物語が一番気に入っています。

夏。舞台も登場人物も一転しまして、言葉を喋る犬や猫が出てきます。しかも名前は、ワトソンとハドソン。ワトソンが犬でハドソンは猫。もちろんシャーロック・ホームズからですね。ホームズ譚では「ハドソン夫人」ですが、このお話でのハドソンは口の悪い雄猫です。少しだけミステリー風味の物語ですが、この「少しだけ」というところが、犬や猫の日常というところにマッチしていて面白い一作でした。

秋は、ほのかな恋愛ものです。書店にやってきた女子高生が、片思いの相手に対する思いを店員に話すという物語。「雨宿りの理由」の作者さんです。ヒロインの女子高生より、書店店員の描写がよく、彼が非常に物語を引き締めていたのが印象的です。ラストも、春同様恋が成就する描写はなされませんが、超短編はこれくらいあえて余韻を残す終わり方の方がいいと思いました。

冬もやはり恋愛ものですが、主人公の性格が変わっています。他人と交流したがらず、ひたすらパズルを作る女子高生。真っ白いパズルを延々と組み立て続けます。中盤の真っ白い部屋の描写、そしてそこから続くラストへの繋がりが、とても効果的で、オチのつけ方も大変綺麗でした。春と並んで、私がこの中で気に入ったシナリオです。

その4本を読むと、「one」と題する最後の1本が読めます。この物語では、先生が渋くて格好いいですね。全ての物語には「パズル」(ジグソーパズルです)という共通点があります。そして、5本目を読むと、実は5本目の主人公が春夏秋冬の物語の……というような事がほのめかされます。もちろん、そういう解釈もできるとは思いますし、作者さんはそのつもりで書いたのかも知れませんし、それはそれで構成としては見事な物だと思いますが、私はあえてその解釈を取りません。

というのも、その解釈をとってしまうと、各季節のヒロイン達のうち、誰か1人しか幸せにはなれない訳です。それに、もしそうだとすると、春や秋、冬の物語で感じた、「恋愛の結果を描かないからこその余韻の味わい深さ」がなくなってしまいます。「ラストを想像させる奥ゆかしさ」がこの作品集の美点だと感じた私は、5本はそれぞれ、独立した別の物語だと解釈したいです。まあ、どちらの解釈もありだとは思いますが。

ところで、どの作品も文章力が高く、あえて心情描写を抑え目にして余韻を高めるところなど、技術的にも優れているなと感心したのですが、「延々と」を「永遠と」と誤用していたのが、非常に気になりました。誤用したら意味も全然変わってしまいますし、そもそも日常でも使う言葉で、誤用するような単語ではない気がするのですが……。「雰囲気」を「ふいんき」と読んでしまうようなものでしょうか?(ちなみに、Macでは「ふいんき」を変換すると「雰囲気」になる。こういう事はしない方がいいのでは(笑))

ツールはLive makerです。5本のシナリオそれぞれが5分程度で、全部読んで30分弱くらいだと思います。全5本満遍なくよく出来ており、短編集としてはレベルの高い一作に仕上がっています。もちろん、派手な展開をする訳ではないので、そういうのがお好みの方には向きませんが、紅茶でも飲みながらのんびり楽しむ分には最適です。短いですが、じっくり読んでみてください。
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