第547回/その目に未来を、その手に世界を - 水の星、世界を手に入れる男(A.N.P.) - ファンタジー
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第547回/その目に未来を、その手に世界を - 水の星、世界を手に入れる男(A.N.P.)

ファンタジー
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水の星、世界を手に入れる男

水の星、世界を手に入れる男準推薦
■制作者/A.N.P.(ダウンロード
■ジャンル/ファンタジー海戦バトルノベル
■プレイ時間/4時間

カーライル王国の第2王子エルバートは、何事にもやる気を出さず、適当に生きていく日々。世話役のラナや側近のオリヴィアにたしなめられる毎日だった。そんなある日、隣の大国ベリチュコフがカーライルに攻め込んで来た。数の上では勝ち目はない。エルバートは嫌々ながら艦隊を率いて出撃するが。魔法が飛び交う艦隊戦が盛り上がるファンタジー大作。

ここが○

  • 艦隊戦が迫力満点。
  • 登場人物が非常に多いが、みんな個性的でしっかり描かれている。
  • だれずにしっかり盛り上がる展開。

ここが×

  • 残酷な描写やどぎつい描写が多いので、人を選ぶかも。
  • 一部設定がちょっと作品世界にそぐわない気が。
  • 終わり方がちょっとあっけない。

■その目に未来を、その手に世界を

最近は短編作品が続いていましたが、久々に読み応えのある長編作品をプレイしました。魔法も登場しますから、ジャンルはファンタジーですが、その実内容はかなり本格的な戦記物です。とは言え、魔法はこの作品においてかなり重要なウェイトを占めていますから、やはりファンタジーで間違い無いのかも知れません。

舞台は中世ヨーロッパを思わせる架空の世界。カーライル王国の第2王子エルバートが主人公です。彼は何事にもやる気を見せず、駄目王子の烙印を押され、父王からも嫌われていました。そして、父王と第一王子が遠征に出ている間に、隣国のベリチュコフ王国がカーライル王国に侵攻してきます。エルバートは、ベリチュコフを迎え撃つべく7隻の艦隊を率いて出撃しますが、敵の艦隊は合計35隻。不利は明らかでした。

水の星、世界を手に入れる男そして始まる艦隊戦。この艦隊戦の描写が、非常に迫力があって読み応えたっぷりです。何せ、相手は5倍の大軍。その上ベリチュコフの艦隊を率いるのは「軍神」と異名をとるレイラ。このレイラの能力が物凄く、到底勝てる気がしません。なので、読み手にも嫌が応にも戦いの緊迫感が伝わってきます。作者さんは、こういう海戦ものにかなり造詣が深いように見受けました。付け焼き刃では、これだけの描写ができるものではありません。

また、登場キャラクターがかなり多く、名前が出てくるだけでも20人はいると思うのですが、誰もが個性的に描かれており、埋没しているキャラクターがいないのも流石です。ただ、全員を好きになれるかと言うと、それはまた別問題ですが。主人公のエルバートからして、やる気の無い女好きですから、合わない人もいるかも知れません。それはともかく、主人公のエルバート、親友のデューク、それにエルバートの世話役であるラナの3人のやり取りも楽しく、作者さんの力量を感じさせてくれます。

ただ、エルバートの「〜じゃね?」と言ういかにも現代の若者(あるいはネットスラング)的な言葉遣いとか(一応王族のはずなのに)、どうも設定にそぐわないような描写があるのは、少し気になりました。名前に関する言及で「名前に長音(ー)を含む」「名前の文字数が云々」というのも、完全に日本語表記を前提とした表現で、せっかくの魅力的な世界観に、そこだけ違和感を感じました。

さて、物語は全3章に分かれています。それなりに長い物語ですが、各章の目標がしっかりしている上に盛り上がりどころもあるため、途中で飽きる事なく読める作りになっています。海戦シーンの面白さもさることながら、戦記物としての人間模様もとてもよく描かれており、人間ドラマとしても大変読み応えのある作品です。単なる個人とか組織の戦いではなく、国と国と戦いですから、かなり複雑な物語のはずなのですが、かなりシンプルにまとめられた上で、凝るべきところには凝っています。優れたバランス感覚だと思います。

が、テーマが国と国との戦争だけに、かなりどぎつい描写や残酷な表現もあり、苦手な人だとちょっときついかも知れません。特に第2章のラスト……。時間差で通信魔法が届くというのは、設定を上手く利用した名シーンではあるのですが、あの場面は精神的ダメージが大きく、数日そこでプレイを止めてしまいました。他にも拷問シーンなどがかなりえげつないので、注意してください。

第1章、第2章と大きな戦いを2つ経験したエルバートは、人間的にも司令官としても大きな成長を見せます。しかし第2章のラストのあの事件で、どうなるかと思っていたら、第3章でまた凄いオチがつきます。「椅子」のシーンもかなり心に来るものがありましたが、ラストにはなるほどそう来るのか、と。そこまで来て、それまでの色々な展開も腑に落ちました。ラナの言葉がこの上ない伏線となって、見事にラストに結実している様は壮観でした。

ですが、どうにも「突然終わった感」は否めません。ロス王国との絡みは、中途半端に終わってしまってますし。もちろん、エルバートの野望を最後まで描いたら、何十時間あっても終わらないでしょうが、せめてレイラとの決着くらいまでは描いて欲しかったような気が……。そこまで書いてくれていたら、間違いなく「推薦」でした。まあ、そこまで書くのも大変でしょうし、そう思えばあの終わり方は「このタイミングしかない」というのもまた事実です。それにしても、もう少しエルバートの活躍を見てみたかったように思います。そう思わされたのも、この物語が優れていたからこそですが。

ツールはNScripterです。選択肢はありません。プレイ時間は4時間くらいです。演出周りがちょっと味気なく(バトルシーンは、効果音をある程度入れるだけでもだいぶ違ったのでは)、立ち絵も数人にしかついていないのですが、濃密なキャラクタードラマが楽しめるファンタジー大作です。こういうのが好きな方ならたまらないでしょう。決してハードルの高い物語ではなく、娯楽性も高い作品です。腰を据えて読んでみてください。
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Comments 4

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2018/12/11 (Tue) 09:40 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>内緒コメントの方

ご報告ありがとうございます! 早速修正いたしました。ご迷惑をおかけしました。

2018/12/11 (Tue) 17:02 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/12 (Wed) 21:40 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>内緒コメントの方

こちらこそ、度々お手を煩わせて申し訳ありません。またリンクが間違っていましたね。先ほど修正いたしました。

おっしゃるように、細く長く続けていければと思います。ペースが落ちる時期があるかも知れませんが、今はブランクの分も色々な作品を読んでみたい欲求が強いのかも知れません。

引き続いてNaGISA netをよろしくお願いいたします。

2018/12/13 (Thu) 19:51 | EDIT | REPLY |   

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