第549回/月夜に心をひとつつき - 鷽替真と月夜の×××(酔狂倶楽部00) - ミステリー・サスペンス
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第549回/月夜に心をひとつつき - 鷽替真と月夜の×××(酔狂倶楽部00)

ミステリー・サスペンス
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鷽替真と月夜の×××

鷽替真と月夜の×××■制作者/酔狂倶楽部00(ダウンロード
■ジャンル/なんちゃって恋愛サスペンスノベル
■プレイ時間/3時間

幼い頃、ある誘拐犯に数ヶ月監禁されるという体験をした主人公と鷽替真。高校生になった主人公のクラスに、ある日その真が転校してきた。主人公の元彼女である違や友人の剣十郎も交え、賑やかで楽しい生活が幕を開けるのだが、それはやって来る恐るべき悲劇への幕開けに過ぎなかった。中盤以降のどんでん返しの連続に驚かされるサスペンスノベル。

ここが○

  • 個性的なキャラクター達。1枚絵も豊富で豪華。
  • 独特の賑やかな会話が楽しい。
  • 中盤以降のどんでん返し連続の展開にはとにかく驚かされる。

ここが×

  • 会話文はぶっ飛びすぎで付いていけない人がいるかも。
  • 中盤以降の展開にも付いていけない人がいるかも。
  • 何となくすっきりしないエンディング。

■月夜に心をひとつつき

またとんでもない作品を読んでしまいました。Vectorその他の作者さんの作品紹介を読むと、何の変哲も無い恋愛ものに思えるのですが、中盤からの展開がとんでもないです。ラストまで読めば、これは立派なサスペンスである事が分かるでしょう。タイトルの「鷽替真」はヒロインの名前で、「うそがいまこと」と読みます。振り仮名が無いと読めませんね。

主人公(名前任意)は、幼い頃に誘拐犯「忌野朋近」にさらわれ、数ヶ月の間監禁された上、地獄のような生活を送っていました。同じく誘拐されていた女の子、鷽替真とは「一緒にここを出よう」と指切りした中。そんな主人公の高校生になり、一見普通の生徒と変わらない生活を送っていましたが、そんなある日、真が突然主人公と同じクラスに転校してきました。しかも真は転校時の自己紹介で、好きなものは主人公といきなり告白する始末。

鷽替真と月夜の×××ここからしばらくの展開は、典型的などたばたラブコメです。いわゆる葉鍵系ともまた違う感じ。登場キャラクターはみんな個性的で、ある意味非常に極端。ヒロインの真は会話で顔文字を多用して、楽しい事は楽しいのですが、付いていけない人がいるかも知れません。そして主人公は一度は拒絶した真の告白を受け入れ、無事に恋愛ストーリーが展開するかと思いきや、中盤であまりにも唐突に、フリーノベルゲーム史上かつてなかったような展開が待ち受けています。

ここの展開は本当に予想外で、画面の前でしばし固まりました。ここを書いてしまうと、このゲーム最大の衝撃がなくなってしまうのでこれはちょっと書けません。皆さんで是非その衝撃を体験してみてください。そしてそこからのどんでん返しにつぐどんでん返し。二転三転などという生易しいものではありません。四転五転と言ってもいいくらいです。

中盤からは、主人公の元彼女である違が俄然輝きを増してきます。主人公と過去に付き合った時のエピソードも、非常に効果的でした。そしていきなり豹変する剣十郎。豹変し過ぎて、ここも付いてこれない人がいる恐れがありますが(笑)、前半のラブコメからがらり一変、後半はサスペンス風の物語となります。サスペンス風ではあるのですが、どこか緊迫感の無い「緩い」感じは前半と共通です。なので、ある意味肩の力を抜いて読めるのは、この作品の美点だと思います。

ただ、緩すぎる上に、キャラクターが妙に冷静で淡々とやり取りを交わすため、後半のシーンではちょっと違和感を感じたのも事実です。画面上でとんでもない事件が起こっているのに、気楽に読ませてくれるという意味では長所でもあると思うんですが、一部の場面では奇妙な疎外感を感じてしまいました。せめて後半の重要イベントくらいは、おちゃらけ風味を封印して、もう少し緊張感を前面に押し出しても良かったような気はします。

中盤まででも十分予想外の展開をするのですが、ラストでまた読者の予想の斜め後ろから襲いかかってくる、とんでもない落ちが待ち受けています。いやこのラストの凄まじさと来たら……。インパクトという点では、この作品のラストは歴代でも随一なのでは無いでしょうか。ここまで来ると、「サスペンスっぽい」ではなくて完全にサスペンスです。それも、並みのサスペンスではありません。

ただ、ラストもある意味で淡々としていて、「いいのかそんな終わり方で!?」と思ってしまいました。罪を犯した人間が、何ら罰せられる事も無いですし、これほどの事件の幕引きが、こんな爽やかでいいんだろうかと、エンディングの後考え込んでしまったほどです(笑)。まあ、物凄い事件が起こっている割に、どろどろした描写は一切なく、最初から最後まで独特の飄々とした雰囲気で一貫しており、これだけの事件の物語をさらりと読ませてくれるのは、間違いなくこの作品ならではだと思います。

プレイはしやすく、吉里吉里だけにスキップの速さは快適なのですが、一つだけ困ったバグがあります。最初にプレイヤーの名前を入力するのですが、一度セーブして中断して再開すると、名前が消えてしまっているのです。その場合は、また最初から初めて名前を入力し、その後再びロードすれば名前が戻りますので、「名前が消えた!」という方は、この方法をお試しください。

選択肢はありますが、基本的に一本道です。中盤の選択肢で終わってしまう時の、脱力イラストが何とも言えない味わいがあって好きです(笑)。プレイ時間は3時間くらいだと思います。とにかく、ある意味でフリーならではと言える、強烈な物語の作品です。色々な意味で後味の良い物語ではありませんが、それを独特の台詞回し、キャラクターの扱いで軽く読めるような作品に仕上げている辺り、作者さんはとんでもないセンスの持ち主なのでは無いでしょうか。サスペンス好きは必見の一作です。1枚絵も豊富で、ビジュアルも楽しいですよ。
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