第550回/この世とあの世の交差点 - タマシイ横丁(kmt) - 不思議系
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第550回/この世とあの世の交差点 - タマシイ横丁(kmt)

不思議系
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タマシイ横丁

タマシイ横丁■制作者/kmt(ダウンロード
■ジャンル/この世とあの世を繋ぐ人情ノベル
■プレイ時間/30分

この世とあの世を繋ぐ、狭間の街にある喫茶店「ノヴァ」。そこに現れた掃除屋の男は、前の客が忘れたらしい荷物を見つける。荷物の主が気になって後を追いかけた掃除屋。出会ったのは女子高生の斎藤ゆか。ゆかは記憶を失っていた。掃除屋とゆかは、ゆかが失った記憶を求めて街をあちこち彷徨い、やがて行き着いた結末は。渋くて温かみのある人情ノベル。

ここが○

  • 独特の魅力ある世界観。
  • 掃除屋が渋くて格好いい。
  • テーマは重いが、救いを感じさせるラスト。

ここが×

  • 少々あっさり過ぎのところも。
  • ゆかの秘密は、簡単に察する事ができる。
  • 探索シーンが少し煩わしいかも。

■この世とあの世の交差点

短編作品だと、世界観に凝った作品というのはあまり見ません。それも道理で、物語自体が短いのですから、世界観に凝っていては、その世界観を読み手に納得させられる前に終わってしまいます。ですから、短編作品で変わった世界観を扱うというのは、ある程度腕に覚えがないと、なかなか難しいところがあるものです。

この作品は、そんな「ちょっと変わった世界観」の作品です。この世とあの世を繋ぐ「狭間の街」が舞台。この手の変わった世界観を扱う場合、しっかり説明して理詰めで読者に納得させる方法と、しっかり説明せずに雰囲気で読者に納得した気になってもらう方法があると思いますが、この作品は後者です。世界観がしっかり説明されているとは言えず、よく考えてみると結構曖昧なところもあるのですが、その「ぼやかし方」が上手く、読み手は自然とこの世界観に引き込まれてしまいます。これは作者さんの筆力の成せる技ですね。

タマシイ横丁物語は、狭間の街にある喫茶店「ノヴァ」から始まります。このお店に、掃除屋の男が訪れてきて、女子高生斎藤ゆかの忘れ物を発見します。ゆかの事が気になった掃除屋は、彼女の事を追いかけてすぐに見つけますが、ゆかは記憶を失った状態でした。掃除屋とゆかは、この世界を歩いてゆかの記憶の鍵を見つけるという物語です。少し突飛な展開ではありますが、変わった世界観と上手くマッチしていて、読んでいる時には突拍子のなさは感じさせません。

そして、淡々と語る掃除屋とゆかのコンビネーションがいいですね。女子高生のゆかとの掛け合いは必要最小限でシンプルなのですが、渋い掃除屋が特にお気に入りです。登場キャラクターはほとんどこの2人だけなのですが、特に小技を使わないのに、この2人だけで十分に物語をしっかり引っ張っていってくれています。地味ですが、キャラクターメイキングの上手さが光っています。

物語としては、比較的以前からあるタイプです。テーマもよくあるものです。読んでいれば、ほとんどの人はゆかの秘密(記憶)についてはすぐに想像がつくでしょう。意外性を求める人、今までにないストーリーがお好きな方ですと、ちょっと拍子抜けするかも知れません。しかし、シナリオとテーマと舞台設定が上手に絡み合って、一作の作品として非常にまとまった物語に仕上がっていると思います。

書かないと詳しいレビューが書けないので、ネタバレ承知であえて書きますが、そのテーマとは「いじめ」です。普通いじめをテーマにすると、いじめた側の事はあまり語られない事もあり、読後感がいまいちすっきりしない事もあるのですが、この作品の場合は、いじめた側の後悔もさりげなく盛り込まれており、読後には押し付けがましくない範囲で、しっかり希望を感じさせてくれます。

ちなみにこの作品、文章を読むだけでなく、一部のシーンでは画面をクリックする探索シーンが導入されています。これが人によっては少し煩わしいかも知れません。特に難易度は高くないので、割と簡単にクリアできると思いますし、どうしても分からなければ、ゲームフォルダーの中に攻略が書いてありますが、この作品の雰囲気からすると、文章だけで読ませた方がしっくり来たような気もします。

エンディングは2種類です。最後の選択肢で分かりやすく分岐します。上でも書いた「生きる」エンドの方が、希望も感じさせてくれて綺麗ですが、「生きない」エンドの方も、これはこれで余韻を感じさせてくれて悪くありません。ただ、「生きる」エンドを見てしまうと、こちらはやはりバッドエンド的な扱いという感は否定できません。ただ、単なるバッドエンドではなく、これはこれで一つの形なのかなと思わせる、丁寧なまとまりを感じさせてくれました。

ツールはLive Makerです。プレイ時間は、2種類のエンディングを見て30分というところだと思います。線のはっきりした立ち絵と、単体で物語を感じさせてくれるような構図の1枚絵がとても素敵です。掃除屋が、最後まで渋く締めるのが印象的でした。短い時間でちょっと心温まる物語を読んでみたい方は、プレイしてみてください。
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