第554回/向こうの彼女とこちらの彼 - 向こうの彼女(そよ風組み) - 不思議系
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第554回/向こうの彼女とこちらの彼 - 向こうの彼女(そよ風組み)

不思議系
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向こうの彼女

向こうの彼女■制作者/そよ風組み(ダウンロード
■ジャンル/パラレルワールドでの出会いノベル
■プレイ時間/20分

主人公は、クラスメイトの櫻井かすがが気になっていた。かすがは無愛想で他人と関わり合いになろうともせず、友人もほとんどいなかったが、ある日主人公は勇気を出してかすがに声をかけるも、素っ気ない対応に終わってしまう。その後ゲームセンターへ行った主人公は、学校とは全く違う様子のかすがに出会うのだが。ラストがちょっと怖い学園短編。

ここが○

  • 短いが、適度に読み手を引っ張る力のあるシナリオ。
  • ちょっと驚いてしまうラストシーン。
  • 学校とゲームセンターでのかすがの落差。

ここが×

  • 一番大事な場面が全く描写されていない。
  • なのでラストシーンの訴える力が少々弱い。
  • ちょうど展開が飛ばし気味かも。

■向こうの彼女とこちらの彼

2連続で古めの作品。この作品は2003年10月の公開ですから、初代NaGISA netの開設少し前です。15年前という事になりますが、システム面ではさすが吉里吉里、今遊んでも何の不都合もありません。特に、超高速スキップの速度は吉里吉里のお家芸。この作品は一本道なのですが、選択肢があるマルチシナリオの作品では、最新のツールより、むしろ吉里吉里の方がはるかに適しているのでは、と思えるほどです。

この作品の主人公は高校生のようですが、明確な描写がありません。そして名前も出てきません。彼は、クラスメイトの櫻井かすがにある日声をかけますが、にべもなくあしらわれてしまい、失意の中下校しますが、下校途中に寄ったゲームセンターでかすがに遭遇。ところが、いつも学校で見る無愛想なかすがとはまるで別人。会話も弾んで、主人公は楽しいひと時を過ごしました。

向こうの彼女ところが、翌日学校で会ったかすがは、また元の無愛想娘に逆戻り。これは一体……という感じで物語が展開します。学校とゲームセンターのかすがの対比で物語を引っ張るのは、上手い手法です。短編ですが、しっかりした引っ張りの力で、読み手を引きつけてくれます。展開自体は、短いだけあってかなり飛ばし気味なのですが、あまりそれを感じさせない構成もよくできていると思います。

後半、かすがによって事実が語られます。本当なら、主人公とかすがの「向こう」での様子なども、少し織り交ぜながら物語を展開すれば、よりまとまったシナリオになったような気もするのですが、それをやると短編の枠でまとめる事が難しくなったような気もしますし。これはこのままでもいいのかも知れません。ただ、中盤以降からラストにかけては、少し唐突な感はあります。

そしてラスト。一番大事なシーンを「ここは空白とする」で終わってしまったのが驚きなのですが、それ以上にオチの付け方が衝撃です。読者の想像に委ねます、という事なのかも知れませんが、色々想像するまでもなく、(細部はともかく)大雑把には何が起こったかは結構明白な訳でして……。「いいのかこんな終わり方で!?」と思ってしまいました。なのでラストシーンでのかすがの笑顔が、何だか怖く感じました。

これなら、ラスト前の事実はしっかり描写した方が、まだもやもやが残らなくて良かったのではないでしょうか。書いたら書いたで、物凄く賛否両論を巻き起こす作品になったような気もしますし、後味の悪さはもしかしたら今よりさらに増幅したような気もするのですが、少なくとも作品としてのまとまりは、今よりはすっきりしたと思います。

通常私は、一本道の作品に対して「分岐をつけた方がいい」と感想を書くことはないのですが、そういう訳ですので、この作品については、分岐をつけて色々な可能性を見せて欲しかったような気がしました。悲劇を起こさないハッピーエンドにしようとすると、短編の尺を完全に超えてしまうでしょうが、逆に読み手がその可能性を色々と考えてみるのも、楽しいかも知れません。

それにしても、15年経ってノベルゲーム用のツールもかなり進化しましたが、「文章を分かりやすく、ストレスなく読ませてくれる」という意味においては、実はこの頃からほとんど変わっていないような気すら覚えました(むしろ、場合によってはこの頃の作品の方が読みやすい場合も……)。「ノベルゲームとは、絵や音の演出を伴って、文章によって物語を楽しませる作品である」というのは、私が昔から感じているノベルゲームの定義ですが、「快適に文章を読ませてくれる」って大事だなと改めて感じました。

ツールは上で書いたように吉里吉里です。プレイ時間は20分程度だと思います。クリアすると、3種類の1枚絵や、作中で使われた立ち絵を見られるおまけモードが追加されます。荒削りな短編作ですが、最近ノベルゲームの世界に触れ始めた方が、15年前ならではの味を、味わってみても面白いと思いますよ。
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