第556回/絆が育てる、心の物語 - 詩歌を嗜むRe(VIPRPG) - SF
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第556回/絆が育てる、心の物語 - 詩歌を嗜むRe(VIPRPG)

SF
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詩歌を嗜むRe

詩歌を嗜むRe推薦
■制作者/VIPRPG(ダウンロード
■ジャンル/人と人を模したものの戦いと繋がりノベル
■プレイ時間/4時間

荒廃した世界で残った人類を殲滅する為に活動する、デバイス体と呼ばれる存在。そして世界を彷徨った末、ある建物にたどり着いた主人公。なんとその建物は、そのものが知性を持つ動く城塞だった。主人公とその城塞「シロ子」の奇妙な生活が始まるが、デバイス体達はその間も人類を滅ぼすべく活動を続けていた。RPG風の演出が凝っている大スペクタクル。

ここが○

  • 主人公とシロ子をはじめ、キャラ同士の交流の様子。
  • 動きを使った演出が効果的。
  • 伏線がラストで全て繋がる。

ここが×

  • 一部の下ネタがかなり寒い。
  • 色々とプレイしにくい。
  • ラストは流石にくどすぎる気がする。

■絆が育てる、心の物語

久々に、2ちゃんねる系と言いますか、VIP系の作品をご紹介です。かつての作品だと「僕と君の夏休み」などがありますし、一番最近ご紹介した作品では、「げっと☆おん」がちょっとそういう系統でしたが、あちらはそれっぽいネタがそこかしこに盛り込まれてはいるものの、そこまで文章が2ちゃんねるっぽくはありませんでした。

が、こちらは序盤からVIPノリ全開で(元の掲示板をほとんど見た事ないから想像ですが)、付いていけなくなる人もいるでしょう。特に下ネタは寒すぎて、開始10分で黙ってウィンドウを閉じようとしたくらいです。序盤は特に、主人公の性格がぶっ壊れているように見えるので(見えるというか、本当にぶっ壊れていますが(笑))、合わない人には全然合わないかも知れません。

詩歌を嗜むReですが、そこを我慢して1時間くらい読み進めてみてください。1時間経った頃から、俄然話が面白くなってきます。主人公がアレな性格なのはあまり変わらないのですが、主人公とシロ子のやり取りが非常に微笑ましく、主人公の性格もあまり気にならなくなってきますから(笑)。

この世界は、「大破壊」と呼ばれる出来事で地表が荒廃し、人もほとんど死に絶えたという設定です。そこで、「統合機関」の命を受け、人間を滅ぼす為に活動する「デバイス体」が、人間の集落を見つけては殲滅していきます。このデバイス体(アグナファイア、ブリザルト、ライスパーク)にも独特のドラマがあって、主人公側とはまた違う興味を持って読ませてくれます。実際中盤くらいまでは、主人公側とデバイス体側、交互に物語が進行していくのですが、この構成は大変効果的です。

実はこの作品、まともな(普通の)人間はほとんど登場しません。主人公の妹や父親が回想で登場しますが、メインの登場人物はほぼ人間ではない存在です(主人公とて、普通の人間ではないですからね)。が、その人間以外の存在が葛藤し、人と関わり、時には涙を流して成長する様子が、全編を通じて描かれる、この作品のテーマです。主人公とシロ子はもちろんですが、途中で出てくる言葉の喋れないデバイス体とのエピソードは、特に胸を打ちます。

また、シロ子の過去と、シロ子に力を与えた主人公の一言というエピソードは、特に気に入っています。「絆」は、本作を一貫しているテーマで、主人公とシロ子、主人公と妹、ライスパークとシロ子などなど、様々な形で様々な絆が描かれます。その絆を武器に、主人公達が強大な敵に立ち向かう後半は、大変盛り上がります。ただの戦いではなく、「絆の総決算」という意味もあるからではないかと思いました。

ただ、ラストは流石にちょっとくどすぎるように感じます。私はRPGでも、なんどもなんどもラスボスが変形するような展開は好まないのですが(もうRPGはやりませんけど)、そういうRPGのラストバトル的なしつこさを感じました。そのお陰で各種伏線がきちんと回収されたのは、凄いと言えば凄いのですが、もう少しすっきりできないものかと感じました。

ツールはRPGツクールVX Aceです。なので、RPG風の動きを伴った演出が大変凝っています。その分立ち絵は一切出てこず、またいわゆる「地の文」もほとんど全く存在しません。ですから、普通のノベルゲームとはかなり読んだ時の印象が異なります。動きを使った演出は正にRPG的で、戦闘シーンは変な文章よりよっぽど説得力があるんですが、反面「文章を読んで想像する」面白さがほぼないのは、仕方ないかも知れません。これらはトレードオフの関係にありますからね。

それとツールの関係上、ノベルゲームとしてはちょっとプレイしにくいです。キーボード操作が前提なのに、readmeが存在せず、操作方法が分からないのもちょっと困りものです(調べれば済むことですが、ちょっと不親切ですよね)。一番困ったのは、自由にセーブできない事。しかも、イベントシーンに入るとノンストップで話が進行したりします。そんな時に大事な電話でもかかってきたら、下手をすればはるか手前からやり直す羽目になってしまい、目も当てられません。この辺りはもうちょっと何とかして欲しかった気がします。

プレイ時間は4時間から5時間。選択肢のない一本道です。くどい終盤の後のラストは、少々語りすぎな気がしなくもないのですが、エンディングへの流れは大変見事でした。各種の詩も効果的に演出として効いており、ハッピーエンドとは言えない終わり方ではあるものの、非常に強い余韻を残してくれる物語です。ノリに付いていけない場合は仕方ありませんが、少しだけ我慢してみる価値は十分にあると思いますよ。
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