第558回/光が見える、あれは天国への扉 - 光の国のフェルメーレ(幻創映画館) - ファンタジー
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第558回/光が見える、あれは天国への扉 - 光の国のフェルメーレ(幻創映画館)

ファンタジー
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光の国のフェルメーレ

光の国のフェルメーレ■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■ジャンル/暗黒の森に光を求めるファンタジーノベル
■プレイ時間/4時間

ずっと夜の闇に覆われた小国ノイエンフェルト。森の奥の屋敷に住む貴族の次期当主であるノエル。しかしノエルは次期当主とは名ばかりで、屋敷どころか部屋からも出られない毎日。そんなノエルの元に、迷い混んできた一体の「人形」セフィア。ノエルはやがて、この世界に光を取り戻したいと思い始め……。重苦しい雰囲気が味わいある長編ファンタジーノベル。(注・この作品は成人向けです)

ここが○

  • ほの暗いファンタジーの世界観。
  • 背景画像やBGMが非常に良くできている。
  • 章立てで読みやすくプレイしやすい。

ここが×

  • 性描写が苦手な人は注意。
  • 後半はかなりグロテスクな描写もあるので注意。
  • どうも後半の展開バランスが良くない。

■光が見える、あれは天国への扉

お馴染み、「幻創映画館」の作品です。このサークルの作品をプレイするなら、「ななこい」「明けない夜が来る前に」辺りがお薦めなのですが、今作はそれらの作品とはちょっと毛色が違います。一見するとほのぼの風味なのですが、どちらかと言えば、味わいは「EDELWEISS」に近いです。特に後半の重さは「EDELWEISS」を彷彿させます。

開始すると、すぐにいつもの「この作品は幻創映画館の提供でお送りします」の音声。この音声、スキップできません。長い作品ですから、こういうのはできれば飛ばせるとありがたいのですが、こういう作りもお馴染みではあります。両側が映画フィルム風の模様で遮られた、妙に圧迫感のあるレイアウトもいつもの通りです。

光の国のフェルメーレこの作品の舞台は、ノイエンフェルト(名前からしてドイツ語系ですね)という小国。この国にはずっと朝が訪れる事がなく、凍りつくような夜の冷たい風がいつも吹き付けていました。そして、「魔女の森」と言われる森の奥に大きな屋敷を構える、名家シュトラッセ家の次期当主、ノエル。彼がこの物語の主人公です。彼の元に、セフィアと呼ばれる「人形」が迷い込んでくるところから話が始まります。

始めに書いておきますが、この作品は、性的な描写に嫌悪感を示すような方はプレイしない方が無難です。かなり本格的な(?)18禁描写が序盤から多発する上、そもそもの設定が、人によっては受け入れ難いほどのものであるからです。私は最初、「人形」というのを、言葉通りに捉えていたのですが(「解体する」なんて言ってましたし)、中盤まで読んで実はそれが誤解だったと知り、絶句しました。「女性を快楽の対象としてしか見ないなんて許せない」なんて方は、プレイしない事をお薦めします。

特に、台詞もとても人に聞かせられないようなものが多く(私も、妻が寝静まった夜か、妻がまだ寝ている早朝に隠れてプレイしました)、効果音まで結構たくさん挿入されているため、じっくり聞くのも憚られる始末。こういうのが好きな人にはいいかも知れませんが、もうちょっとマイルドでも良かったのではないでしょうか。実は序盤の展開を見て「これはちょっと……」と、1月くらい放置してしまったのは内緒です。

さて、この物語は大きく分けて前後半の二部に分かれます。シュトラッセ家の屋敷内が舞台の前半と、魔女の森に踏み出す後半です。まず特筆すべきは、背景素材などの美しさ。屋敷の中も森の中も非常に丁寧に作られており、一切の手抜きが見られません。この手のファンタジーにおいては、背景1枚も世界観を形作るにおいて大変重要な要素です。このこだわりには脱帽しました。

前半部分は、多少冗長なところはあるものの、閉鎖空間の中でありながら、適度にイベントや謎を盛り込み、上手に読者を引き込んでくれます。前半を読んだ時点で、「これはきっと後半部分は、ノイエンフェルトに光を取り戻す為に冒険するという流れになるのだろうな」と思いました。事実その通りになります。そして、後半へ導く部分もとても良くできていました(次期当主なのに、あんな扱いをされるのはちょっと現実的でないような気もしますが……)。

が、後半がちょっと……。最初から絶望的な状況で、ほんのわずかの希望の光も見える事なく、ただただ過酷な試練が連続するという内容で、少々読んでいて疲れてしまいました。さらに、「これはホラーなのか!?」と思えるほどのどぎつい描写は、かなり読む人を選ぶと思います(特に、魔女の家のイベントでは、ちょっと気分が悪くなってしまいました……)。

シナリオの流れって、「下がったら上げる、上がったら下げる。それを繰り返しつつ、ラストへ向けてだんだん上げながら引っ張り、ラストで最大の盛り上がりを作る」が基本だと思うのです。が、この作品の後半は下がりっぱなしで、ほとんど一度も上がる事がありません。ではラストで上がるのかというと、これがまた(以下略)。せめて、最後でノイエンフェルトに明確に希望が訪れた描写でもあれば良かったんですが、それはエンディングクレジットで消極的に語られるだけです。

別にハッピーエンドじゃないと絶対駄目という気もないのですが、やはりバランスだと思うのです。感動できるか感動できないかと言われると、確かに感動できる部類の話だと思います。ですが、知れば知るほど絶望するような世界観が明らかになり、その世界観で登場人物がひたすら叩きのめされるという展開は、私はちょっと素直に受け入れられませんでした。多数の登場人物が不幸になったのですから、それを帳消しにするくらいのカタルシスを描いてくれないと、やはり読む側としてはすっきりしないのですね。

とは言え、相変わらず全体の完成度は大変高いです。ツールはYU-RIS。このツールはWeb公開版の更新は停止しているはずですが、動作も軽くてプレイしやすい、大変優秀なツールです。プレイ時間は4時間から5時間で、選択肢はありません。タイトルから、ほのぼのとした冒険ファンタジーだと思ってプレイすると、とんでもない世界観と展開に驚愕すると思いますし、正直プレイする人をかなり選ぶ作品だと思いますが、このサークルの作風が好きであれば、随所に楽しめる要素も盛り込まれています。細かい章立てになっていてプレイもしやすいですから、少しずつ読むのもいいですよ。
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