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第559回/優しさは時に罪になる - さよなら、また明日(hiyokko)

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さよなら、また明日

さよなら、また明日■制作者/hiyokko(ダウンロード
■ジャンル/青春のすれ違い恋愛ノベル
■プレイ時間/15分

高校3年生の津川智基には、朝倉由美という彼女がいたのだが、ちょっとした事で仲違いしてしまった。智基に言い寄ってくる矢野凛子と、毅然とした態度を取れない智基自身が話を一層ややこしくする。智基は夏休みを前に、何とか由美と仲直りしようと、友人たちに話を聴きながら、校舎の中を探し回るのだが。青春のほろ苦い恋愛を綴る、短編ノベル。

ここが○

  • リアリティのある人間関係の描写。
  • 読者を油断させておいてから落とし方。
  • 後味は良くないものの、心に棘が刺さるかのような終わり方。

ここが×

  • この長さにしては登場人物が多すぎるような。
  • 音楽が一切なくかなり寂しい。
  • 終わり方が余りに素っ気ない。

■優しさは時に罪になる

長い作品の後は、軽い気持ちで読める短編作品をご紹介です。とは言え、超短編でありながらかなり強い印象を残してくれる作品でした。分類すれば恋愛ものなのですが、短い作品でありながら、恋愛のやるせなさ、ほろ苦さを強く前面に押し出している作品で、フリーのノベルゲームとしてはあまり類例のない作風であると思います。

主人公は高校3年生の津川智基。朝倉由美という彼女がいるのですが、ある日彼に言い寄ってくる矢野凛子が、屋上で彼に不意打ちのようなキスをしたところを由美に目撃されて以来、由美とは疎遠になってしまっています。そんな修羅場から物語がスタート。校内を歩き回って由美を探すのですが、特に女生徒たちの反応が辛辣です。この尺の短さの物語としては、かなり登場人物が多いのですが、友人たちの反応がなかなか現実感がありますね。

さよなら、また明日それにしても、主人公である智基の優柔不断さは、見ていて「お前しっかりしろよ」と言いたくなるレベルです。彼は優しいと言えば優しいんでしょうが、こうなると彼の優しさが不幸を呼び込んでしまっている状態。女生徒達や、鼻持ちならない同級生の高藤久也の言葉は結構きつかったり嫌味だったりしますが、「優しさ」を傘に逃げてしまっている智基を、彼らなりのやり方で叱咤してくれているように見えました。

そして、智基は何とか由美と話し合うことができました。2人のわだかまりは無事に解け、これで楽しい夏休みが訪れる……と思わせてからのあのオチ。この落差は強烈です。読者を油断させてからのこの落とし方は、非常に効果的でした。この結果は結局智基の優柔不断さが招いたものなのですが、飾り気のない終わり方ながら、非常に強い余韻を残してくれるラストです。青春時代の恋愛というものは、こういうものかもしれません。こういう経験を通して、男は(女も?)恋愛経験値を積み上げていくものでしょう。

そういう意味では、智基は今回は大変苦い経験となってしまいましたが、この経験で彼はきっと、単に決断をしないだけの偽りの優しさは、誰も幸せにしない事を学んだ事でしょう。案外凛子と幸せになるかも知れません。そう思えば、ただの寂しい終わり方でもなく、ある意味では今後への希望を感じさせるラストと言えなくもないでしょうね。

上に書いたように、超短編なのに主人公を含めて合計7人ものキャラクターが登場します。それぞれの友人達とのやり取りは、会話を単体で見ればリアリティもあっていいのですが、やはり流石にこの短さでこの人数は多いような気がしました。友人の宇佐美玲央など、せっかくいい位置付けのキャラクターなのに、ほとんど活躍できていませんし、篠崎楓と雪野雫の2人も、どちらがどちらなのか混乱します。

また、この作品で由美と並んで一番のキーパーソンであるはずの、智基に言い寄ってくる凛子も、もっと掘り下げて描写すれば内容が深まったと思うのですが、彼女も十分に描き切れておらず、どうにも登場人物が物語に十分に絡み切れているとは言い難い気がします。登場人物の数は、もう少し絞り込んでも良かったではないでしょうか。そうすればこの尺でも、もっと分厚い物語にできた気がします。

それと、この作品には音楽が全くありません。超短編とは言え、素材でそれっぽい曲を流すだけでも、全然印象が変わったはずです。ラストも「おわり」と出るだけで、エンドクレジットも何も出ずそのままタイトルに戻ってしまい、全く愛想がありません。せっかく余韻のある作品なのですし、短編だからこそ、もう少し演出に凝っても良かったような気もしました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ感覚はいつものティラノで、文章表示速度が変えられないのも相変わらずですが、その他は特にプレイに支障はありません。画面がスマートフォン仕様の縦長サイズで、私の環境ですとウィンドウをフルサイズにする必要があるのですが、ワイド画面で文章が非常に横長に表示される作品よりは、ある意味では読みやすいかも知れません? 選択肢はあるのですが、一本道です。読んで楽しくなるタイプの作品ではありませんが、ちょっと苦いラストには、もしかしたら共感できる人も多いかも知れません。
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