第560回/神の国は汝らのうちにあり - 幸福の塔(稲海) - ファンタジー
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第560回/神の国は汝らのうちにあり - 幸福の塔(稲海)

ファンタジー
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幸福の塔

幸福の塔■制作者/稲海(ダウンロード
■ジャンル/救世主の為に強制労働ノベル
■プレイ時間/1時間

昔ドラゴンを倒し世の中を救った救世主は、はるか空の上、神の国にまで届く「幸福の塔」を、子供達の力だけで建てねばならないと言う。国中から子供達が集められ、今日も幸福の塔を完成すべく、終わりのない労働が続く。そこに新しくやってきた謎の子供。彼は耳が聞こえないらしい、彼の秘密は一体。意外なラストのダークファンタジー。

ここが○

  • ダークな雰囲気を醸し出す文章力。
  • 最後のルートの意外な事実。
  • センスを感じる画面構成とイラスト。

ここが×

  • 文章力は高いのに、「耳障り」の誤用が惜しい。
  • 後味がとにかく良くないので、プレイする人を選ぶ。
  • 既読スキップが、選択肢の後でも飛ばされてしまうのがちょっと。

■神の国は汝らのうちにあり

最近、ファンタジーが妙に多いような気がします。しかも「光の国のフェルメーレ」にしても「水の星、世界を手に入れる男」にしても、妙にダークでどぎつい描写があったのですが、この作品も終始ダークな雰囲気で、どうにも救いようのない終わり方が多いですから、プレイする人を選ぶかも知れません。

この世界では、かつて悪いドラゴンを倒した「救世主」が絶対の存在として崇められています。その救世主が、天にある「神の国」まで届く「幸福の塔」を、しかも穢れのない子供達の力だけで建てなければならない、と言います。なので、国中から子供達が集められ、幸福の塔を建てるために働かされます。神の国を建てる為と言えば聞こえはいいですが、要は強制労働ですね。

幸福の塔そして主人公は、新しく幸福の塔に連れて来られた強制労働者。耳が聴こえないらしく、言葉も一切喋りません。ゲームはそんな彼が、どの場所で働くかを選択。選んだ先でそれぞれ特徴的な相手と絡んで物語が進行します。システムとしては「ハイドアンドシーク」に近いところがあります。画面構成や独特のタッチのイラストに、非常にセンスを感じます。この画面レイアウトならばワイドでもありだなと思わされました。

この物語は、基本的に同じ選択肢を続ける事で、そのルートに入る事ができます。ばらばらに選んでいると、それはそれで違うエンディングになるのですが、物語としては同じ選択肢を続けた方が分かりやすいです。最初にばらばらのエンドを見ておいてから、3つのルートを見てみるのがいいかも知れません。ばらばらな選択肢を選んだ時の終わり方は、それほどダークではないですし。なお、選べる選択肢は「力仕事」「工房」「調理場」の3種類です。

この3つのルートですが、どれも非常に後味が悪く、心に重苦しいものが残ります。力仕事の選択肢では、チネと言う暴力的な監督が登場。無茶な命令をして、それを聞かないとすぐに殴る、典型的なパワハラ男。後半で彼の秘密が明らかになるのですが、この事実がかなりとんでもなく、「うわあ……」となりました。当然のように悲劇的な終わり方となります。

工房ルートは、女性の監督イキが登場。彼女はチネのように暴力を振るったりせず、3つのルートの登場人物では一番まともです。が、まとも故にやがて身の破滅を招くと言うか。このルートが一番描写がきついかも知れません。最近、こう言うきつい描写の作品ばかりプレイしている気がします(汗)。調理場ルートは、料理当番のユク。最初は普通っぽいのですが、後半にはこれまたとんでもない展開に。これまた描写がきついです。全ルート、描写がえぐい上に、どうにもオチがダークですので、苦手な人は注意してください。

と、ここまでのルートを読んだだけだと、正直に言って、「一体この物語は何を訴えたかったのだろう?」となるのですが、これで最後のルートへの鍵が開かれます。この最後のルートを読むと、全てが明らかになります。トゥルールートと言えますが、このトゥルールートで「そう言う物語だったのか!」と驚かされました。トゥルールートでは色々な事が腑に落ち、すっきりするでしょう。このルートでも読後感は良いとは言えませんが(笑)。

終始暗くて重苦しく、残酷な描写も結構出てくるのですが、その雰囲気を無理なく成立させている文章力は大したものだと思います。ただ、文章力が高いだけに「耳障りがいい」という誤用が気になりました(正しくは「耳あたりの良い」でしょうか。「耳障り」は「目障り」同様、否定的な意味の言葉です。「肌触りがいい」「手触りがいい」と語感が似ていて、誤用される事が多いですね)。それと、主人公が全く喋らないせいもあって、誰の発言なのか良く分からなくなる事も多く、決して読者に優しい文章とは言えません。

ですが、それを越えて迫ってくるパワーのある作品です。ツールはRen'pyです。エンディングは5種類で、プレイ時間は1時間程度でしょう。ただ、私の環境では、「Tower_of_happiness.exe」をダブルクリックしても起動できずに困りました。lib/windows-i686フォルダーにある「Tower_of_happiness.exe」で起動できましたので、もし起動できない方はお試しください。

プレイはしやすく、既読スキップも早くていいのですが、ただスキップを選んだ場合、選択肢を選んだ後でもそのまま飛ばされてしまうのが、ちょっと難点のように感じました。とにかく、お世辞にも読んで気分が明るくなるような物語ではないのですが、鬱系の物語がお好きな方なら、味わってみる価値があると思います。トゥルールートで明らかになる事実には、驚かされる事間違いなしです。
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