第564回/不可能を超える絆の力 - おるばり! 幼なじみバトル(Enharmonic☆Lied) - 恋愛
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第564回/不可能を超える絆の力 - おるばり! 幼なじみバトル(Enharmonic☆Lied)

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おるばり! 幼なじみバトル

おるばり! 幼なじみバトル準推薦
■制作者/Enharmonic☆Lied(ダウンロード
■ジャンル/友情と絆の恋愛ノベル
■プレイ時間/4時間

私立七重坂学園大学2年生の山本庵。友人のカズナリ、コウセイや幼馴染のゆかりと、楽しい毎日を送っていた。学園祭の日、庵は先輩から無理やりビジュアル系バンドのボーカル役に抜擢され、ステージに出演する事に。無事にステージをこなした庵は、学園祭を誰と回るかで庵は選択を迫られるのだが。個性的なキャラと会話が楽しい恋愛ノベル。

ここが○

  • キャラクターが個性的でよく立っている。
  • そして台詞のやり取りが面白い。
  • メリハリがはっきりしたストーリー。

ここが×

  • 主人公の庵の行動がちょっと(特にゆかりルートで)。
  • 凛ルートでは、2人が惹かれあう理由がもうちょっと描写されていれば。
  • なんだかあまり大学っぽくない気がする。

■不可能を超える絆の力

おるばり! ある極端な双子の場合」の続編的な作品のご紹介です。登場キャラクターも共通ですので、あの作品を楽しんだ方ならば間違いなく楽しめるでしょう。何より、今作は幼馴染であるゆかりの攻略ができるのが最大の売りです。なにせ、前作のゆかりの扱いがちょっと可哀想でしたからね。私もゆかりルートを楽しみに、この作品を読み始めました。

序盤は前作と同様です。主人公である庵が、ビジュアル系バンドのボーカルとして学園祭でステージに立たされるという展開も共通。そこから、学園祭を誰と回るか選択して、ストーリーが分岐します。今回は、タイトル通り攻略ヒロインは主に幼馴染。主人公庵の幼馴染ゆかりと、庵の親友であるコウセイの幼馴染凛、それに隠しキャラが1人(あまり隠れてない気もするけど)、加えておまけっぽい友情エンドで、合計4種類のルートです。

おるばり! 幼なじみバトル登場キャラクターの中には、「ゼロから作るヘンテコ七不思議」の登場人物もいまして、色々と楽しめます。黒川先輩に、まさか再び会えるとは思っていませんでした(笑)。全体に登場キャラクターはかなり多いのですが、それぞれに個性と役割がはっきりしていて、埋もれているキャラクターがいない辺りに、作者さんの描写の巧さを感じさせられます。

メインのルートは2種類です。煉ルートは、煉とコウセイが所属する剣道部に庵も入って、毎日煉とコウセイが庵を鍛えまくり、青春まっしぐらのスポ根ものに……と思いきや、途中から急に方向転換。バトル恋愛ものになります。このルートでも、庵の幼馴染ゆかりは不憫な扱い。ですが、前作では完全な脇役だったコウセイがとてもいい位置付け。少々簡単に煉を諦めすぎな感はありますし、庵があっさりコウセイに勝っていたり、全体に試合のシーンが淡白なのは気になりますが、ちょっとひねった部活恋愛ものとして、よくできたストーリーでした。

ただこのルートでは、庵と煉が惹かれあう過程がほとんど描かれていないので、恋愛ものとしてはそこが若干弱く感じました。庵も煉も、幼馴染であるゆかりやコウセイをあえて振り切ってお互いを選んでいる訳で、通常の恋愛ものよりも恋愛過程をしっかり描かないと説得力に欠けるところが出やすいシナリオの作りだとは思うのですが、もう1つ2つ、庵と煉が恋愛関係に至る過程を描いて欲しかった気がしました。

ゆかりルートは「お待たせしました!」という感じです。これまで散々不遇な扱いだったゆかりと、ようやく結ばれる日がやってきました(笑)。このルートでは(煉ルートでもですが、このルートは特に)、コウセイやカズナリ、前作ではヒロインだった莢香といった、庵を支える友人キャラがとてもいいです。特にコウセイはいい奴すぎますね。

反面、主人公である庵は、色々とアレです(汗)。幼馴染ものの宿命とも言えますが、「こいつとはただの幼馴染」を強調しすぎて、しかもそれでゆかりを傷つけてしまうという……。定番の手法でもあって色々な作品で同じ描かれ方はしているのですが、もうちょっとここは上手い、というか説得力のある方法がなかったものでしょうか。庵が完全に悪役になってしまっていて、うーんと感じました。

が、そこからのカズナリ、コウセイ、莢香、それにゆかりの父親である晴幸や、ゆかりの母親のめぐみの使い方はとても見事でした。またテーマである「絆」がとてもよく描かれていたと思います。最近流行の、変に難解で暗い展開の物語とはある意味対極で、「こんな都合のいい人間関係、ねーよ」という人もあるでしょうが、私はフィクションであるからこそ、こういう物語を読んでみたいのです。フィクションでまでどろどろした人間関係を味わいたいほど、私はMではありません(笑)。

この作品は、正統派で捻ったところがほとんどない作りですが、作品としての完成度はとても高いと思います。物語作りって、変に捻る必要は全くないんですよね。真っ直ぐな作りでも、キャラクターをしっかり作り込んで、場面場面をしっかり描き、因果関係をちゃんと描写しさえすれば、それだけで「凝った、新しい」作品より、よほど楽しめる作品になるという事を、この物語は如実に示していると思います。

ツールはNScripterですから、軽くて安定しています。メインキャラ2ルートに加え、おまけの攻略キャラ1ルートに、コウセイ&カズナリとの友情を深める(?)ルートで合計4ルート。前作同様、オルゴールの存在意義が薄い気もするのと、なんだか大学生っぽくない気もするのですが(背景素材の影響もあるかも。大学に靴箱なんてないですからね)、マルチヒロイン恋愛ものとしては、かなり完成度が高く楽しめる作品だと思います。何より、ダークで難解な作品が多い昨今では、こういう作品の存在は貴重です。肩の力を抜いて、それでいてしっかり楽しめる作品ですよ。
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