第567回/頁をめくれば流れる想い - 古本屋「こほにゃ」(VALLEL) - 日常
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第567回/頁をめくれば流れる想い - 古本屋「こほにゃ」(VALLEL)

日常
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古本屋「こほにゃ」

古本屋「こほにゃ」準推薦
■制作者/VALLEL(ダウンロード
■ジャンル/古本屋での出会いノベル
■プレイ時間/1時間

「こほにゃ」は、町の古本屋さん。店長代理である猫耳少女の真琴が店番をする、古くて小さな店だが、誰でもたどり着けるとは限らない。そしてこの店にやってこれた人には、本の声を聞くことのできる真琴が、その人にぴったりの一冊を見繕ってくれる。そんな「こほにゃ」で繰り広げられる、不思議で心温まる物語。

ここが○

  • 舞台設定がいい。
  • 本を通じて描かれるささやかな交流。
  • 音楽や絵がオリジナルで良くできている。

ここが×

  • 古書店での出会いという要素が薄くなる後半。
  • 後半は魔法がどうの戦争がどうのと、世界観までもが前半との齟齬を感じる。
  • 結局店長とは何者だったのか。

■頁をめくれば流れる想い

今回はちょっと古めの作品をご紹介。ふりーむやVectorなどの大手ソフトウェア配布サイトで公開されている訳ではなく、更に作者さんの元々のサイトも既に閉鎖され、キャッシュしか残っていませんが、今でも辛うじてダウンロードできます。ブラウザー方の作品だと、作者さんが公開を停止するとそれっきりですが、探せばプレイできる事があるのが、ダウンロードタイプのいいところですね。

今作の舞台は、古書店です。見える人にしか見えない、不思議な古本屋「こほにゃ」に、何かしらの問題を抱えてやってきた客に対し、本と会話ができる店長代理、真琴がその客に最適な本を紹介して、という感じの内容。本屋を舞台にした作品と言うと、「ようこそ、猫柳堂書店へ。」がありまして、少し近い雰囲気もあるのですが、こちらはよりファンタジー風の味付けをされています。

古本屋「こほにゃ」最初は、幼馴染との些細な行き違いに心を悩ませる大学生の青年が、雨の道で「こほにゃ」の店長代理の真琴と出会い、「こほにゃ」に案内される、という出だしです。設定も展開も、特に捻っている訳ではなく、むしろよくある材料を組み合わせているのですが、古書店という舞台、真琴が青年に差し出す1冊の本が彼の指針となるという展開、爽やかな落ちの付け方などの組み合わせがとても上手く、非常に心が温まる短編です。この出だしの一編だけでも、よむ価値があると思います。

この作品は、このように訳あって「こほにゃ」を訪ねる客に、真琴がその客に合った本を差し出し、それをきっかけに客が悩みを解決していく、という短編を連ねた、一話完結式の連作スタイル。このスタイルと、昔ながらの町の古本屋という舞台がとてもよくマッチして、読み心地のいい作品となっています。文字サイズの大きさや太さ、改行ピッチが適正で、大変読みやすいのも好印象です。

そのような短編が3つ続いた後、後半の2エピソードは、店長代理の真琴や、謎の店長に関するエピソードとなっています。雰囲気は前半同様なのですが、ちょっとすっきりしない点も見られます。まず、店長が誰なのか、最後まで結局よく明らかにならないんですよね。それとなく示唆はされるものの、明確には語られずじまいです。なので、少々もやもやしたものが残りました。

この作品は「Web公開版」のようで、販売版の作品もあったようですから、そちらではもっときちんと全ての謎が語られていたのかも知れません。とにかく、後半は肝心なところが切られている感じなのですね。この作品は多くの場面で、とある「本」の一人称で語られるのですが、全ての謎が明らかにならない関係上、本による一人称も、なんだか釈然としないものを感じさせられました。

また、後半になると、店長(魔法使いっぽい事がそれとなく示される)が、王国の戦争の為に駆り出される、というような描写がなされますが、前半は、携帯電話も自販機も予備校も登場する現代日本なのに、後半でいきなり王国だの魔法使いだのという世界観が来ますので、「何のこっちゃ?」となってしまいました。これも、販売版では読み手が納得できるような説明がなされているのかも知れませんが、

しかし、あくまで本体は販売版なのでしょうから、仕方のない事かも知れません。前半の3つのエピソードだけでも心温まる時間を過ごせますから、この手の日常系のほのぼのストーリーが好きならば、十分楽しめると思います。理屈ではなく、情感に訴えかけてくる作品で、心を激しく突き動かすような感動をさせるタイプの物語でもないのですが、共感した人にはじんわりと、長く響くような感動を与えてくれるタイプの物語です。

ツールなNScripterです。選択肢のない一本道で、1時間くらいでしょう。グラフィックスは立ち絵やタイトル、アイキャッチ画像なども含めとても綺麗ですし、オリジナルの音楽もとてもよくできており、町の古書店での不思議な物語の雰囲気を大変盛り上げてくれます。すっきりしないところがあるのも事実なのですが、そこはそれ、理屈ではなく、この物語が生み出す雰囲気を、感じてみてください。(追記/現在でも有料版はメロンブックスで購入可能との情報をいただきました)。
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Comments 2

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2019/01/03 (Thu) 22:39 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>内緒コメントの方

そして情報ありがとうございます。早速修正いたしました。

また、今でも製品版が販売されているという情報もありがとうございました。本文に追記いたしました。ストーリーが4話以降はだいぶ違うんですね。ちょっとプレイしてみたくなります。

いつも読んでくださっているとの事、大変嬉しいです。今後も、NaGISA netを宜しくお願い致します。

2019/01/04 (Fri) 22:56 | EDIT | REPLY |   

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