第570回/言葉にしないと伝わらない想い - 精神科医 香月悠のカルテ(大月遊馬) - 病院・闘病
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第570回/言葉にしないと伝わらない想い - 精神科医 香月悠のカルテ(大月遊馬)

病院・闘病
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精神科医 香月悠のカルテ

精神科医 香月悠のカルテ■制作者/大月遊馬(ダウンロード
■ジャンル/精神科医のカウンセリングノベル
■プレイ時間/45分

精神科医の香月悠は、ある日友人であり、勤務する病院の外科医である秋山から、息子である帝の診察を依頼された。帝には何やら特殊な能力があるようで、親子仲も上手くいっていないらしい。香月の目の前に現れた帝は、言葉遣いも丁寧でどこか子供らしくなく、寂しさを隠しているように見えたのだが。香月が心の問題を解いていく短編ノベル。

ここが○

  • 香月と悠の交流がよく描けている。
  • カウンセリングの様子も、押し付けがましくなく好印象。
  • 2人の距離感の変化が、短い中でしっかり描写できている。

ここが×

  • 精神科医ではなくカウンセラーの仕事のような気も。
  • ツールに由来するプレイのしにくさ。
  • 帝の特殊能力の必然性があまりないような。

■言葉にしないと伝わらない想い

古めの作品が続きます。この作品も初出は2005年。医療系ドラマです。医療系の作品って、最近あまり見なくなった気がします。以前は、不治の病ものとか闘病もの、結構多かった気がするのですが。まあ、フリーノベルゲームの世界にも結構流行のようなものがありますので、そのうちまた病院ものが流行るかも知れません。

この作品の主人公は精神科医の香月悠。過去に精神疾患をテーマにした作品は、統合失調症の「シンクロニシティ」、パニック障害の「二年目の天子さん」がありましたし、医師が主人公の作品は「奇跡の外科医に」や「さよなら C.C Summer Days」がありましたが、精神科医が主人公の物語は初めてプレイしました。

精神科医 香月悠のカルテ香月は、高校からの親友であり、勤務する病院の外科医、かつその病院の院長の息子である秋山から、息子の帝(物凄い名前だ)の診察を依頼されます。帝には、何やら不思議な能力があるようで、それが精神的なものに由来するかどうかを診て欲しい、という内容。その頼みを引き受けた香月の診察室に帝がやってくるところから、物語が始まります。

診察のシーンを見ていると、精神科医っぽさがなく、なんだかカウンセラーの仕事のようで、そこはちょっと気になるのですが、香月と帝のやり取りはいいですね。帝は、子供らしくないところを前面に出しつつ、態度の端々から見える子供らしさが魅力ですし、香月は大人としての対応で、帝の心を徐々に開いていきます。短時間で、2人の関係性が徐々に変化していく様子を、上手く描いています。

また、香月と帝との対話の中で、上手に香月の過去や秋山との関係も盛り込んでおり、これがとても効いていました。短い物語なのですが、香月と帝のやり取りだけでなく、秋山や、その妻である冴月(彼女との関係は、主におまけで語られますが)も絡んできて、短編とは思えない重厚で立体的な物語を構築できていると思います。テーマも、くどくならない範囲で上手く語られていました。

ただ、帝の「特殊能力」があまり意味がないような気がしました。あの特殊能力がなくても、物語が成立するような……。最後まで、あの能力が何かの伏線になっているのかと思って読んでいたのですが、別にそんなことはなく、そのまま終わってしまいましたし。もしかしたら、続編を出す計画があって、そちらで帝の特殊能力を生かす予定だったのかも知れませんが、少しすっきりしないものが残りました。

それを除くと、短編としてよくできた物語だったと思います。大きな事件が起こるわけでもなく、ほとんど終始診察室の中で、香月と帝のやり取りだけで話が進むのですが、過去回想なども上手く織り込んで、単調にならない工夫がされていました。読了後は各種おまけも読めて、これがなかなか面白いです。

ただ、システム面が……。Yuuki! Novelなので非常に読みにくいです。読み返しができなかったり、各種設定ができないのも大変ですが、Yuuki!の一番の難点は、このようにおまけシナリオをつけたりする場合には、全く不向きという事です。その箇所でセーブしておかないと行けませんし、全部読み終えてセーブしたら、また最初からやり直す羽目になるので、別のしおりにセーブしないと駄目ですし。

とは言え、久々にYuuki!の起動画面を見て、何とも言えない懐かしさも感じましたよ(笑)。プレイ時間は、本編だけなら30分ですが、おまけまで全部読めば45分〜50分くらいでしょう。選択肢はおまけにしか登場しません。最後は結構あっさり終わるのですが、30分くらいのドラマを見たような感覚で、読後感も良好です。最近は、不思議系の作品が増えて、こういうリアリティのある日常系ドラマは減った気がしますので、そういうのがお好きな方はプレイしてみてください。
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