過去作プレイバック/第4回 - こんな物語 - 過去作プレイバック
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過去作プレイバック/第4回 - こんな物語

過去作プレイバック
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こんな物語なかなか書く機会がない「過去作プレイバック」、久々の登場です。今回は「こんな物語」(初出時レビュー)。123本目のレビューで17本目の「推薦」作。2008年1月13日のご紹介は11年前の事です。ふりーむでの公開が1月8日ですから、公開後わずか5日での事でした。

この作者さんの存在は知っていまして、この作品の前に「君が好き」という作品があったのですが、そちらはレビューしませんでした。そしてこの作品も、地味なタイトルと前作の印象からさほど期待せずにプレイし始めたんですが、素晴らしいキャラクターと構成に、心底感服したのをよく覚えています。600本近い作品のレビューを書きましたが、一番気に入っている一作を挙げろと言われたら、この作品を選びます。それほど気に入っている一本です。

何が良いって、主人公の河内宏和とヒロインの理奈の描き方が抜群に素晴らしいです。宏和は素朴で一途な好青年。ヒロインの理奈はあまり表情を表に出さないクールなタイプ。こういう組み合わせは、下手をするとお互いの短所が増幅されあって、非常に読み手にストレスをかける結果にもなりかねません。ほとんど2人しか出てこない物語でそんな事をやってしまったら、これは致命傷です。

こんな物語ところがこの作品の場合、逆に2人の長所がお互いの短所を相殺して、魅力を倍増させているのです。一生懸命な宏和と、そんな宏和を軽くいなす理奈の取り合わせが素敵です。2人の出会いから、レストラン「プレゼント」での様子、2人でテーマパークに行き、一緒にワインを飲む様子など、どこをとっても生き生きとしています。2人のどこかぎごちないながらも、初々しく、そして大人の関係がとても上手く描写されています。

また、展開バランスがとても良いのです。2人の出会い、宏和に秘められた謎、そして2人での日常、だんだん自分の気持ちに気付く宏和、そして後半に入っての一大イベント。このイベントは、プレイしていて流石にしばらく「えっ!」と固まってしまいました。この作品の後更に450本をレビューしたのですが、こんな展開をさせたフリーノベルは、後にも先にも類例がありません。

ラストは、ちょっと都合良すぎるように感じるところもありますが(頭から落ちたら、いくら下があれでも無傷では済まないのでは……)、伏線の使い方が非常に見事ですし、エンディング後の最後の1枚でも中盤の伏線を見事に回収しており、構成の見事さに最後まで唸らされました。

この作品、ラスト近くのシーンで挿入歌(「会いたい」)が流れ、またエンディングでも曲(「Good-bye forever」)が流れます。どちらもオリジナルというのが凄い。このエンディング曲、批判する方もありますが、私はとても気に入っています。確かに、男性ヴォーカルのキーがちょっと苦しそうで、もうちょっと声に合った編曲をしてあげれば良かったんじゃないの、と思わなくもありませんが(笑)、曲自体は大変よく出来ています。

また挿入歌もエンディングテーマも、挿入のタイミングがとても良いんですよね。ラストシーンからイントロが……という一連の流れが非常に効果的で感動を倍増しています。フリーのノベルゲームの歌で今でも覚えている曲ってそんなにないのですが、この作品の挿入歌とエンディングは、今でもよく覚えています。

私がこの作品で他に何が気に入っているって、「良い感じにフリーっぽい」ところです。もちろん、手間がかかっている作品ですが、立ち絵や1枚絵が、いかにもフリーっぽいところがあるんですよね。私はこの作品の絵柄を気に入っているのですが、少なくとも、画面写真を見ただけで、グラフィックスに物凄く手がかかった最新作を蹴散らせるような見た目ではありません。

なのに、シナリオ内容は最新の作品にも全く引けをとらないどころか、独自の境地を築いていて、他に似た作品のない、この作品だけの世界を作っています。プレイ時間はじっくり読んでも2時間ほどなのですが、長すぎもせず短すぎもせず、途中一度もだれる事も展開の急ぎすぎを感じる事もなく、一本の良質な映画を見た気持ちになれます。久々にプレイして、やはりよく出来た作品だなという思いを新たにしました。

この作品は、プレイした回数も全ての作品の中でダントツに多いです。夜中、お酒を飲みながら後半だけを読んだ事も数知れず。悲劇的な結末の物語であるにも関わらず、何度読んでも強い感銘を受け、いつも気持ちよくお酒を飲めます(笑)。未プレイの方は、是非プレイしてみてください。物語を書く人にも、きっと参考になるところが多い作品だと思います。
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