第575回/扉が開く逢魔が時 - あやかしよりまし逢魔(冒険野郎のトムソーヤ) - 伝奇
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第575回/扉が開く逢魔が時 - あやかしよりまし逢魔(冒険野郎のトムソーヤ)

伝奇
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あやかしよりまし逢魔

あやかしよりまし逢魔準推薦
■制作者/冒険野郎のトムソーヤ(ダウンロード
■ジャンル/学園伝奇バトルノベル
■プレイ時間/6時間

稲生修一郎は、妖(あやかし)を見る力を持っている高校生。ある時から、過去に起こった出来事の夢を見始める。少年時代の夢に現れる友人イサミとの事を、修一郎は何故か思い出せない。同じ頃、修一郎の周りに現れた同級生木場勇や、謎の青年鏡。そしてやがて起こる事件に、修一郎は否応無く巻き込まれる。現在と過去が入り混じる長編伝奇ノベル。

ここが○

  • 美麗なグラフィックスと凝った演出。
  • 現在と過去が入り乱れる重厚な物語。
  • 多数のキャラクターがしっかり物語に生かされている。

ここが×

  • 続編ありきで制作されたのか、紗都梨との関係が薄味で中途半端。
  • ラストの敵の描写が途中で十分とは言えない。
  • 凝っているが少々演出過多にも思える。

■扉が開く逢魔が時

またもや古めの作品。2008年ですから10年前です。「あやかしよりまし」の続編で、前作を取り上げたのは2010年。前作をレビュー後ずっと取り上げようと思っていたのですが、結構長い作品の上、私は伝奇があまり得意ではないので、延び延びになってしまい、ようやくのご紹介です。

主なキャラクターは前作と共通です。友人の猫柳、美生との軽妙なやり取りも健在(でも、美生が勝手に修一郎の留守番電話を聞くのはちょっと酷い気が)。「生八橋」というニックネームはセンスがあると思いますが、本名より長いあだ名というのも如何なものかと思っていたので、今回後半からちゃんと修一郎が「八橋」と呼んでくれるようになり、ちょっと安心しました(笑)。

あやかしよりまし逢魔前回は比較的ストレートな作りの物語でしたが、今回はかなり複雑な物語です。と言っても決して難解ではないのですが、現在と過去が入り乱れ、様々な人の様々な事情が交錯するので、少し分かりにくいところはあるかも知れません。逆に、色々な要素が有機的に絡み合って、非常に重厚な物語となっていますので、読み応えは満点です。

物語の結構序盤から、修一郎の過去の夢が頻繁に挿入され、この修一郎の過去が、シナリオ上でもかなり重要となります。また、謎の同級生木場、これまた謎の青年鏡、更にはヒロインの御堂紗都梨の秘密や、修一郎の両親の秘密などなど、とにかく謎や秘密、伏線があれやこれやと盛り込まれていて、ボリュームもたっぷりですので、読んでいてもお腹いっぱいになる事間違いなしです。

ただ、少々盛り込みすぎで消化不良なところもあります。例えば、ヒロインの紗都梨が妙に印象が薄いのですね。ラストは凄くいいシーンなのに、続編ありきで制作したのか、紗都梨と修一郎には特に恋愛関係の描写がある訳ではないので、せっかくのラストシーンでいまいち感動が伝わってきません。もっと2人の関係を踏み込んで描写すれば、ラストシーンが何倍にも強力になったような気がするのですが……。

そしてラストバトルの相手についても、ほとんど終盤まで言及がありませんので、ラストでいまいち感情移入ができませんでした。多くの要素が盛り込まれた物語ですが、あまりに盛り込みすぎて、柱がどれなのか不明になってしまった感は否定できません。盛り込むなら盛り込むで、修一郎と紗都梨の関係か、紗都梨と鏡の関係か、修一郎とイサミの関係か、どれかを柱に据えていれば、結果的に収まりがいい物語になったように思いました。

この物語、決して後半まではただの日常が続くという事はなく、それなりに印象的なイベントも定期的に起こり、退屈するという訳ではありません。ただ、中盤までは「この物語は一体どこに向かって進むのか?」が分かりにくいため、そういう印象を抱く結果になったのかも知れません。もう少し早い段階で、全体としてのこの物語のおぼろげな目標を示していれば、かなり読んだ時の印象は違ったかも知れません。

グラフィックスは、相変わらず非常に美しく、10年前の作品ですが、今の作品と比べても何ら遜色はありません。立ち絵、1枚絵はもちろんの事、各種の動きを使った演出も凝っています。特に、上の画面写真にもある、上下2分割のシーンは格好いいです。ただ、戦闘シーンではやたらと演出が入る上、その戦闘シーンが多いので、少し演出過多のように感じる事もありました。特に演出の必要が感じられないシーンでも、画面が震動したりする事も多いですし。

現在と過去が頻繁に入れ替わる構成ですが、この点において分かりにくさを感じさせる事はなく、現在と過去が相乗効果で物語を盛り上げるところは、流石だと思いました。また、かなり大量のキャラクターが出てくるのですが、それぞれのキャラクターがしっかり描けていて、どのキャラクターにも見せ場があるところもいいですね。修一郎と猫柳の対決シーンなど、何気ない日常シーンも面白く見せる工夫が多数です。ですから長い物語ですが、だれる事はありませんでした。傘化けや又三郎など、個性的な妖とのやり取りも、いいアクセントになっていましたね。

ツールは吉里吉里です。プレイ時間は、私の速度で6時間。選択肢のない一本道です。長い物語なので、全画面テキストウィンドウの透過率が低くて読みにくく感じる事もありましたが、全体的にはテンポ良く読める物語です。伝奇と言えど、それほどごてごての伝奇という訳ではありませんので、どなたでも楽しく読めると思います。
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