第580回/やがて交わる3本の線 - Collage(Homegorosi PROJECT) - 日常
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第580回/やがて交わる3本の線 - Collage(Homegorosi PROJECT)

日常
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Collage

Collage準推薦
■制作者/Homegorosi PROJECT(ダウンロード
■ジャンル/三者三様人生模様ノベル
■プレイ時間/1時間20分

ある日、同じような毎日を繰り返す事に飽き飽きし、会社の上司の不正を告発した挙句、会社を辞めてしまった佐々木由子。ある日、友人の前島ジュンと久々に再会し、彼女が引き取っている6歳の少女、まりあと知り合う。そこから繋がっていく不思議な人間模様。3人の登場人物が織りなす、何気ない日常を描いた物語。

ここが○

  • レイアウトその他が非常にハイセンス。
  • 大きな事件は起こらないが、しっかり整えられた構成で読後感も良い。
  • 曲もお洒落で雰囲気たっぷり。

ここが×

  • まりあの台詞はどう見ても6歳の子供のそれではない。
  • 選択肢でセーブしても、はるか手前まで戻される。
  • 文字が小さくて少々読みにくい。

■やがて交わる3本の線

今回も古めの作品。初出は2004年。有名作ですからもちろん存在は知っていましたが、有名作はわざと避けるところがあるのが、私のひねくれたところです(笑)。そうこうしているうちに、ダウンロードできなくなってしまっており、この作品を取り上げる事は二度とないだろうと思っていたのですが……。

今回、質問箱の情報で、Webアーカイブでダウンロードできるので、レビューを希望する書き込みがありました。まさか再びこの作品をダウンロードできるとは思っていませんでしたし、この機会にこの有名作をようやく取り上げる事になった次第です。Collageは「コラージュ」と読み、ばらばらの素材を組み合わせて作品を作る技法です。この作品の特徴を端的に言い表したタイトルと言えましょう。

Collageこの作品は、あるところまで物語が進むと、少し前の場面から別の人物の視点に変わります。主人公は3人。同じような毎日に飽き飽きしている、ちょっと気が強いOLの佐々木由子、小説家になる夢を諦めた平凡なサラリーマンの吉村祐市、それに吉村の部下で、彼に密かに思いを寄せている西野ミキの3人。最初は佐々木由子の視点で物語が始まり、物語が進む中で色々な人と知り合い、この3人の物語が繋がっていく事になります。

こういう、視点ザッピングタイプの物語は、今となっては珍しいものではありませんが、当時は大変斬新でした。そしてこの物語は今見てもなお新鮮です。自然に3人の物語が絡む様子が実によくできているのです。主人公達の3人以外にも、前島ジュンや坂巻まりあと言った脇役が出てくるのですが、彼らも要所で実にしっかりと物語を支えてくれます。立ち絵は一切ありませんが、キャラクターが非常にしっかり作られた物語です。

そして、レイアウトやユーザーインターフェイスが実にクールです。画面サイズこそ小さい(640x480)ですが、そこさえ除けば「これ、昨日ふりーむで公開されたばかりだよ」と言われても信じてしまうでしょう。それほど当時としては先進的で、かつ今見ても古びた感じがまるでありません。この作品に影響を受けたクリエイターさんも、結構多いのではないでしょうか。

気になった点ですが、登場人物の1人である坂巻まりあです。6歳という設定なのですが、幾ら何でもこれは6歳の言葉ではありません。言葉の選び方や会話の文章が、小学生高学年でもどうかというくらいに大人びており、ここだけは非常に不自然に感じました(6歳の子供が、亡くなった母親の年を言うのに「享年」なんて言葉は、まず使わないかと)。物語に直接影響する点ではないのですが、全体にキャラクターはとてもよく出来ているだけに、目につきました。

また、吉里吉里の古い作品にまま見受けられる点ですが(設定したセーブポイントでしかセーブできなかったはず)、選択肢でセーブして、再びロードすると、場合によってははるか手前から(その日の頭から)やり直す羽目になります。まあ、吉里吉里らしくスキップは大変高速ですから、それほど苦にはなりませんが、セーブに関しては少々不親切かも知れません。

この物語、特に大きな事件が起こったり、驚くようなどんでん返しがあったり、巧妙な伏線が張り巡らされている訳ではありません。ですが、会社を辞めた由子が、次第に新しい生き甲斐を見出していく様子に、ミキの恋愛模様も上手く絡ませて、そこに視点ザッピングが効果的に働き、中だるみする事もなく、1本の物語として実によくまとまっています。ラストも綺麗で読後感も良好。

こう言う、視点ザッピングというのは、下手に入れてしまうと、同じ描写を違う表現で繰り返す、ただしつこいだけの物語になってしまったりもするのですが、この作品の場合は、ザッピングが大変効いています。視点変更を伴った物語を作ってみたい方には、参考になる点も多いのではないでしょうか。

ツールは吉里吉里で、上記に書いたセーブの問題以外は、プレイしにくいところはありません。選択肢はたくさんありますが、間違えたら即ゲームオーバーです。若干納得の行かないゲームオーバーもありますが、常識で考えれば正しい選択肢はすぐに分かると思いますので、攻略は難しくありません。プレイ時間は1時間20分くらいです。古い作品ながら、色々な意味で最新のノベルゲームにも何ら劣らず、今読んでも新鮮な気持ちで楽しめる1本。最近ノベルゲームを始めた方も、是非プレイしてみてください。
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