第582回/色とりどりの百物語 - hundred(HRT) - アクション・ドラマ
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第582回/色とりどりの百物語 - hundred(HRT)

アクション・ドラマ
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hundred

hundred■制作者/HRT(ダウンロード
■ジャンル/赤い世界の荒廃バトルノベル
■プレイ時間/2時間

荒廃した世界の中、真っ赤な空の下で、世界を滅ぼした張本人である白瀬英輔は、罪を抱えて地表を彷徨っていた。行く先々で出会う人々、そして僅かな生き残りの人類を狙う黒い影と、その黒幕である黒部羊。やがて、能力を持つ「理解者」たちと、黒部達の壮大な戦いが幕を開ける。100本の掌編で1本の物語を作るという趣向が面白い物語。

ここが○

  • 100本の掌編で物語を作るという試みが面白い。
  • 戦闘シーンはかなりの迫力がある。
  • ラストへ向けての盛り上がりは圧巻。

ここが×

  • 表現や描写がくどい。
  • 一部の演出もちょっとくどい。
  • バックボーンが薄い登場人物が多く、感情移入しにくい。

■色とりどりの百物語

またも少々古めの作品。2006年です。そしてこの作品は、趣向が物凄いです。「字書きさんに100のお題」というサイトの、100のお題を使って100の掌編を書き、それを繋げて1本の物語にしてしまったという、とんでもない作りの物語です。むしろ「1本の物語を、100のお題に従って100本に分割した」という方が、適切な表現のような気もしますが。

作品の舞台は、世界が滅亡しかけた、荒廃した地球。主人公の白瀬英輔は、世界を滅ぼしかけた張本人なのですが(プロローグでその辺りには言及されています)、肝心な所の記憶がありません。そして地表には、世界が滅亡しかけた時に発生した多数の「影」がうようようごめいており、その影に襲われるとひとたまりもありません。英輔は、色々な人と出会い、宿敵であり親友である黒部羊との戦いに望みます。設定だけ見ると、「詩歌を嗜むRe」に、ちょっと似たところもあります(こちらの方が先ですが)。

hundredと、あらすじを語ってみたものの、このあらすじにはあまり自信がありません。結構複雑な物語なのですが、100話に分けた弊害と言いますか、色々な情報があまりに断片的に出てくるので、全体像を把握するのがかなり困難で(そもそも描写されていない謎も多い)、私もしっかり把握しきれていると思えないのです。

例えば、英輔の過去の秘密については、結局大まかに「こういう事があった」と語られるだけで、明確に何か他の事実と繋がる訳ではありません。その他こういう箇所が多く、ラストまで読んでも、どうもすっきりしないところが多いのです。また、登場人物のバックボーンがほとんど描かれていなかったり、頻繁に視点変更がされる割にはキャラの心情描写があまりされなかったり(一人称なのに妙に「他人事」みたいな語りが多いのです)、それなりに重要そうなキャラクターが後半になっていきなり登場しており、キャラクターの厚みや魅力にいまいち欠ける嫌いがあります。「100話」という事にこだわり過ぎたのか、構成には少々難がある気がしました。

しかし、100話に分けた事で、実に手軽にすいすい読めるのはいいところでもあります。中には、1話がほんの3行なんて話もあり、そこまでして無理やり100話にする必要があったのか、少々疑問も感じますが、空き時間に数話だけ手軽に読む事もできます(強引にタイトルにこじつけたとしか思えない話もあったりしますが……)。成功しているかどうかはともかく、この趣向は面白いですし、工夫は評価されるべきだと思います。

この作品の売りは、何と言っても激しい戦闘シーンです。敵が強大すぎてとても勝てる気がしない戦いで、しかも英輔は左手がなくなって義手になった挙句、右手も吹っ飛ばされるという(汗)。それ以外にもとんでもない戦いの連続なのです。こういう、強すぎる敵に対して勝てると思えない戦いを続ける作品は、読んでいて絶望感で嫌気がさしがちなのですが、不思議と絶望感を感じさせず、勢いで一気に読ませてくれるパワーがあります。

バトルシーン自体も、描写のテンポが良く、また特にラストバトルの決着のつき方の物凄さ(この辺りにも、ちょっと「詩歌を嗜むRe」風味を感じました。色が絡んでいるという些細な共通点もありますし)。中盤辺りからだんだん展開がぶっ飛んできて、ある意味支離滅裂になってくるのですが、それを後半で上手くまとめにかかってからの、ラストの盛り上がりはかなりのもので、わくわくしながら読み進める事ができました。

ただ、文章や演出はちょっとくどいところが見られます。何度も何度もノイズが入って画面がフラッシュしたり、画面が同じ語句で埋め尽くされるのが繰り返されたり、こういうのはやはりここぞという時に一発だけ盛り込まないと、繰り返せば繰り返すほど読み手にはしつこさしか残りません。文字だけの作品ですから、なおのことそこは少々気になった次第です。

キャラクターの魅力が伝わって来にくいと書きましたが、それでも印象に残ったシーンは結構あります。中でも、高橋秋の「走馬灯」のシーンはこの作品で一番好きなシーンの1つです(姉の冴が終始暴力的すぎるのは、行き過ぎていると思いましたが)。キャラクター同士の絡み自体は秀でた物を感じましたので、もっとキャラクターの心情描写がきちんとされていれば、キャラクタードラマとしても優れた作品になった気がします。

ツールはNScripterです。選択肢はなくプレイ時間は全部読んで2時間。100本のシナリオは、ラスト以外はどれからでも読めますが、途中から読んでも訳が分からないので、読むたびに新しいシナリオが出てくるという仕様の方が、読者に親切だったように思います(メモしておかないと、どこまで読んだか確実に分からなくなりますので)。そういう難点は抱えながらも、独特の魅力を持つ作品で、フリーならではのパワーを強く感じました。決して難解な物語ではありませんから、気楽に読んでもOKですよ。
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