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第584回/紅と蒼は最後に出会う - 紅蒼の鎮魂歌(Banana Kingdom)

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紅蒼の鎮魂歌

紅蒼の鎮魂歌■制作者/Banana Kingdom(ダウンロード
■ジャンル/紅と蒼の出会いと別れノベル
■プレイ時間/30分

少女ルビーは生まれつき体が弱く、片目は既に光を失い、もう一方の目も色が分からなくなっている状態だった。そんな彼女がある日、聞こえてきたフルートの音色に惹かれて、音がする方向へ歩いていくと、そこにいたのは蒼い目の青年、サファイア。彼は、フルートの音色を「優しい」と表現したルビーに驚く。2人の、悲しくも暖かい心の交流の物語。

ここが○

  • ルビーは可愛く、サファイアは格好いい。
  • 過剰に心情を語り過ぎないところがいい。
  • 余韻を残す終わり方。

ここが×

  • 2人が惹かれる過程くらいはもうちょっと描いても良かったのでは。
  • テキスト表示がところどころ不安定。
  • ちょっとぶつ切りの感があるラスト。

■紅と蒼は最後に出会う

タイトルの読み方に困り、名前順インデックスでどこに入れるべきか悩んだ作品です。ゲーム開始直後の音声で「ルビーサファイアレクイエム」と発音しているのですが、この漢字でラ行に分類したのでは、探す人も困ってしまいます。なので一応、「あかあおのちんこんか」と読むものとして分類しました。ご了承ください(分類変更をご希望の際はご一報を)。

この物語の舞台は、ファンタジー世界なのか近代なのか、場合によっては現代にも見えます。作中でフルートが登場し、この形式のフルート(ベーム式)が発明されたのは割と新しい(19世紀に入ってから)なので、現実世界だとしたらそれほど古い物語ではないと思うのですが、何れにしても不思議な世界観で、時代や国が具体的に描写されているわけではないのですが、なかなか魅力的です。

紅蒼の鎮魂歌主人公のルビーは、生まれつき体が弱く、片目はもう見えません。更にもう片目も、色が判別できなくなってしまっています。そんな彼女が、フルートを吹いていた青年のサファイアと知り合い、ほんのわずかの間の交流、そしてその後の別れを描いた物語です。定番と言えば定番の作りですね。

ただこの作品は、小技が結構効いています。ルビーやサファイアの設定に関してはそう新しいものではありませんが、サファイアの吹いているフルートの意味、そしてその音色を聴いたルビーが「優しい」と表現してからの、サファイアの葛藤。そういうものが、行間やシーンから滲み出てくるのです。ここがこの作品の一番の見所ではないかと、私は思いました。

この作品、ルビーやサファイアの、そう言ったところ(ルビーに於いては余命がどうとか、サファイアに於いては自分の使命がどうとか)については、ほとんど心情描写で語られる事がありません。ですから、上に書いたように、そこらは行間から読み取るしかないのですが、シーンや行間に、そこがほのかに現れています。過剰に文章で語らず、態度や口調、ちょっとした仕草で語っているのですね。節度が効いていて実にいいと思いました。

逆に、2人が親しくなる過程についても、それらの心情描写が一切ありません。それはそれで問題ないのですが、過程の描写が一切ないにも関わらず、ルビーに至っては「大好き」なんて言ってしまっています。それに「大切な人」として扱うなら、やはりそれなりに説得力のある描写が欲しかった気がします。ちょっとここには違和感を覚えましたし、恋愛面(と言うほどの関係でもないですが)に限って言えば、展開が性急に感じてしまいました。せっかく、メインのテーマでは、描写を抑える事で非常にいい雰囲気を出していたのですから、2人が惹かれる過程にもそう言う要素を取り入れてみてはどうだったでしょうか。

それと、この物語は0章+全7章の8章構成で、1章読む度に章の選択画面に戻ります。これ自体はよくある作りなのですが、0章に入っているエピソードは、任意の章の後にいきなり読めるようになります。なので最初は「ん? 次はどこ読めばいいの?」と混乱しました(ちゃんと「NEW!」のマークがついているので、よく見れば分かりますが)。しかも0章のエピソードはどれも非常に短いので、わざわざ章に分けなくても良かったのでは……とちょっと思ってしまいました(作者さんは、0章の実況はご遠慮くださいと書いていますから、特別なこだわりがあるのでしょうが)。それと、一部文章が点滅するような現象が起こり、読みにくい箇所があったのが気になりました(環境にもよるのかも知れませんが)。

この作品はフルボイスです(鳥のイヴに到るまで!)。ルビーの声はちょっとこなれていない感じもしましたが、変にアニメっぽい声にするより、どちらかと言うと演劇風の声で、読んでいるうちにこれはこれでマッチしているなと感じました。絵はファンタジー風でとても綺麗です。1枚絵は少ないですが、構図もよく、ここぞと言う場面で物語をびしっと引き締めています。

ラスト近くも、この作品らしさがよく出ています。ルビーの最期とサファイアの使命を絡ませるなど、煽り立てようと思えばいくらでも煽って感動的に仕立てる事もできたでしょう。しかし、作者さんはあえてそれをしなかったようにも見えます。最後の最後まで、抑えた描写に終始し、逆に読み手に強い余韻を残してくれています。よくある材料ですが、こう言う料理の方法もあるんだなと思わされました。それでも、ラストはもう少し盛り上げても良かったような気もしますが。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢はありません。プレイ時間は30分くらいか、声をじっくり聞けば1時間近くかかるかも知れません。ラストでは続編を匂わせるような描写もありましたので、その折にはまた是非プレイしようと思っています。終始柔らかい雰囲気で繰り広げられる2人の物語。悲しい終わり方ですが、不思議と悲壮さはありません。綺麗な絵を目当てにプレイしても楽しめると思います。
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