第586回/命そのままイミテーション - イミテーション・フラワー(Unreality) - ミステリー・サスペンス
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第586回/命そのままイミテーション - イミテーション・フラワー(Unreality)

ミステリー・サスペンス
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イミテーション・フラワー

イミテーション・フラワー準推薦
■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/アンドロイドの殺人ミステリーノベル
■プレイ時間/1時間半

高校生の蒼音は、双子の妹の紅音と、密かに思いを寄せる久遠と共に、楽しい毎日を送っていた。しかしそんなある日、久遠が突然通り魔に襲われ、命を落としてしまう。ショックで記憶が1週間でリセットするようになり、復讐を誓う蒼音は、アンドロイドの相手役の仕事の報酬として、犯人の情報を手に入れようとするが。ラストの事実に驚かされるサスペンス。

ここが○

  • 謎が謎を呼ぶストーリー。
  • キャラクターのやり取りの面白さ。
  • 巧妙な伏線とそれが解けていく様子が見事。

ここが×

  • 文章表示が読みにくい。
  • 主人公にちょっと感情移入しにくい。
  • 下ネタが若干寒い。

■命そのままイミテーション

永遠の紡ぎ」「とある吸血鬼ちゃんの人生」の作者さんの作品です。この作者さんは、巧妙な仕掛けと読者の意表をつく謎が売りの作風ですが、その作風が遺憾無く発揮された物語です。処女作の「Remembers-果てなき記憶の輪舞-」もそうでしたが、今作もかなり下ネタ連発です。特に主人公の妹である紅音の壊れっぷりは凄いです(笑)。

この作品は、舞台設定も独特です。出だしこそよくある学園もの風なのですが、すぐにヒロインの久遠が通り魔に襲われて死んでしまい、そのショックで蒼音は記憶が1週間しか持たなくなってしまいます。犯人の情報を得るため、蒼音はアンドロイドの恋人役を務める「ロール」という仕事を始めます。アンドロイドは心を持たないのですが、何かの拍子に心を持ってしまったアンドロイドは短期間で死を迎えてしまうため、その最期を安らかに過ごさせるため「ロール」という仕事が生まれたのです。

イミテーション・フラワーこの「ロール」をこなすに、蒼音は打って付けでした。何故なら彼の記憶は常に1週間でリセットされますから、アンドロイドの最期を看取って悲しい別れを経験しても、すぐにそれを忘れてしまいます。かくて、蒼音はロールの仕事をしながら復讐の機会を虎視眈々と狙うのでした。そしてある日彼が担当したアンドロイド、エリス。彼女は最初まるで蒼音に心を開こうとしないのですが……。

この設定だけで凄いです。そして、作者さんの他の作品同様に、キャラクターのやり取りは軽妙で楽しいです。上に書いたように、下ネタが多く、人によっては少々鼻につくかも知れませんが、日常のやり取りはとてもいいと思います。話自体は、サスペンスに分類されるような物語で、決して明るく楽しいストーリーではないのですが、主人公と妹の紅音のやり取りで、重苦しい雰囲気がかなり軽減されています。

この物語は二章に分かれています。それぞれの章ではヒロインが変わるのですが、徐々に謎を深めて、後半に一気にそれが解ける様は壮観です。第二章で登場するエルスのヤンデレっぷりもなかなか強烈で、そういうのが好きな人にはたまらないかも知れません。そして謎も、読者の認識の盲点をつく叙述風トリックあり、物理トリックありで、ラストには必ず驚かされると思います。犯人の意外さと、周到に仕込まれた伏線には感心する事しきりでした。

そして、紅音に関する衝撃の事実には、しばし固まるほどの衝撃を受けました。このラストは凄いです。いやそう来るのか、と。このラスト、二重三重に明かされる意外な事実と、前半からちゃんと繋がっている伏線の巧みさに、驚かされる事間違いなしです。この作者さんの得意技炸裂というところ(今回は、超展開というほどではないのですが)。

ただ、蒼音が心変わりし過ぎというか、いくら相手がアンドロイドとは言え、女性に対して気が多過ぎないだろうか、と(笑)。なのでラストも「大事な女性が何人いるんだ」と思ってしまったり。「永遠の紡ぎ」のジンや「桜ノ叙事詩」の咲もそんな感じでしたが。他にも、最初は心を開こうとしないエリスが、すぐに心を開いたり、後半に登場するエルスが結構あっさり改心したのも、少し気になりました。あと、「ギャルゲー共感覚って何やねん!」と、そこは少し突っ込みたくなりましたが(笑)。

作中では色々と悲劇的な事も起こるのですが、ラストは綺麗にまとまっており、悲しい中でもハッピーエンドと言える終わり方でしょう。ただ、お相手がアンドロイドですので、これを純粋なハッピーエンドと言っていいかどうかは、ちょっと首を捻るのですが……。まあ、後味は悪くありませんので、後は読者の想像次第でしょうね。

この作品、かなり色々な要素を盛り込んでいます。ラストでそれらは全て説明されるのですが、不思議な事に、盛り込み過ぎて煮込み不足、という感じにはなっていません(一部、もう少し説明が欲しい要素もありましたが)。長さもキャラクターの数も、絶妙にちょうどいいバランスを保っていました(キャラに関しては、1人くらい男性がいてもいい気はしたのですが)。優れたバランス感覚だと思いました。

ツールはLive Makerなので安心してプレイできます。このツールはもう開発が停止してしまったのが惜しいですね。プレイ時間は1時間半くらい。選択肢はありません。立ち絵の色の彩度が強すぎるのと、白めのウィンドウに、白い縁取りがある黒い文字なので、ちょっと目が痛くなってしまったのが難点なのですが、それを除けば読みやすい物語だと思います。仕掛けに驚かされる事は保証します。サスペンスながら重苦しくない、独特の物語。是非読んでみてください。
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