第589回/ある日ある国ある絵本 - ある国のある屋敷のお話(Mole Waltz) - シリアス・感動系
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第589回/ある日ある国ある絵本 - ある国のある屋敷のお話(Mole Waltz)

シリアス・感動系
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ある国のある屋敷のお話

ある国のある屋敷のお話準推薦
■制作者/Mole Waltz(ダウンロード
■ジャンル/絵本風異国への旅立ちノベル
■プレイ時間/15分

ある国で、エゼビオという貴族に見初められた農家の少女セナは、エゼビオの屋敷にやって来た。セナの身の回りは、ナットという青年が毎日世話をしてくれるのだが、肝心のエゼビオは1年経っても姿を見せない。外にも出られないセナの楽しみは、エル・ペッカーという作家の絵本だけだった。そんなある日……。絵本風のイラストが幻想的な短編物語。

ここが○

  • 絵本のようなイラストがとても素敵。
  • 絵本仕立てのような構成。
  • 適度に緊迫感、起伏もあり、落ちも良い。

ここが×

  • セナとナットの関係の変化を、もう少し描いても良かったのでは。
  • 曲が1曲しかない。
  • 中盤までが少し急いでいる印象。

■ある日ある国ある絵本

今回はかなり短い作品。15分ですから、掌編レビューの枠に入れても良かったのですが、短いながらかなりよく出来ていた作品ですので、通常枠でのご紹介です。タイトルは若干垢抜けない感じもあるのですが、全体を一貫する柔らかな雰囲気が非常に素敵な短編作品です。

なんでもこの作品は、複数人のチームで作ったようではあるのですが、制作に要した時間が、なんとわずか「一晩」なんだそうです。既に出来ていた文章、絵、音楽などを一晩でまとめたのか(これでも十分凄いですが)、一晩で文章、絵、音楽を全部作って作品に仕上げたのか(こちらだとしたらとんでもなさすぎる)、それは分かりませんが、何れにせよ一晩でこれだけのものを作ったとは恐れ入ります。

ある国のある屋敷のお話物語は、中世なのか近代なのか分かりませんが、どこかの外国です。リゾットが出て来ますので、イタリア近辺かも知れませんが、具体的な国や時代は、作中では語られません。そして、セナという農家出身の少女が主人公です。彼女は、エゼビオという貴族に、妻にと見初められて1年前、12歳の時にエゼビオの屋敷に連れて来られました。それ以来、外にも出られず、部屋の中で退屈に過ごす日々です。

そんな彼女の世話をしてくれるのがナット。そしてセナは、ペッカーという絵本作家が描いた絵本だけが、退屈な毎日の楽しみでした。こんな感じで始まります。実際は、始まったと思ったらすぐ事件が起こってしまうのですが(笑)。ナットも大切な役どころですし、実はペッカーの絵本がこの作品において、かなり重要な要素となっています。掌編ではありますが、全ての要素をきちんと物語に盛り込んで、展開に生かしている作りが見事です。かなり物語を作り慣れた様子が窺えます。

そして、この作品は立ち絵ではなく、一枚絵で物語が進行します。その一枚絵は、画面写真のように、シンプルな単色の線画風。これが、絵本のような雰囲気を醸し出していて、実にいいのです。シンプルと言えば、音楽もシンプル。少し長めのピアノ曲が、ずっと流れているだけで、曲は1曲しかありません。

上では「ここが×」に書きましたし、実際1曲しかないのは少し寂しくも感じるのですが、この作品の場合は、この1曲が時々ふっと止まったと思ったらまた再生される、そんな音楽の演出はむしろぴったり合っていたような気もします。線画のイラストと、1曲だけのBGMが、全体を通して柔らかな雰囲気を形作っているように、私は感じました。物語上でも「絵本」が一つのキーアイテムとなっており、実際ペッカーも重要人物の一人なのですが、そんな事もあって、この作品自体にも、何だか絵本を読んでいるかのような気分になれました。

掌編だけに、展開は早いです。序盤から中盤は、セナとナットの関係が変化するイベントでもあれば、という気もしました(後半、いきなり結婚ですし(笑))。そこだけ少々駆け足に感じてしまったのですが、それ以外は、掌編なのに飛ばした感じや、語り足りないところは見られず、全ての要素をきちんと作品内で消化し、きちんとハッピーエンドに流れていきます。

途中、結構緊迫した場面になるところもあるのですが、そこからの落とし方がまたいいですね。落とし方がいいだけでなく、ペッカーも絡んでのエンディング、更に、途中までは悪人にしか見えなかったダスカーに対してのフォローもあり、全員にちゃんと光が当たる見事な幕引きだったと思います。短い作品ですが、読後感は中編の作品にも劣るものではありませんでした。

ツールはNScripterです。この作品ではさほど必要ではありませんが、NScrの既読スキップは、やはり高速で快適ですね。選択肢はラスト近くに1つだけあります。ハッピーエンドとノーマルエンドという感じでしょうか。でも、ハッピーじゃない方のエンディングでも決して読後感は悪くありませんので、両方見てみてください。短いながらも上質で幻想的な物語。優しい登場人物たちに、是非癒されてください。
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