第592回/魔法の文字を捕まえろ - 檻のビブリオ(夜月水華) - ファンタジー
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第592回/魔法の文字を捕まえろ - 檻のビブリオ(夜月水華)

ファンタジー
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檻のビブリオ

檻のビブリオ■制作者/夜月水華(ダウンロード
■ジャンル/不思議な図書館で魔力解放ノベル
■プレイ時間/1時間

不思議な図書館「檻のビブリオ」。そこで司書を務めるベルジオスの前に、ある日不思議な青年が現れた。オトという名前のその青年は、しばらくそこに留まる事にしたが、彼は実は魔法使い。魔法力を消耗して、呪いを受ける寸前の状態だった。オトには、忘れられない女性がいるようなのだが。独特な世界観と大量の絵が目をひくファンタジー。

ここが○

  • 独特の設定と世界観が面白い。
  • 1枚絵が多く、立ち絵も表情豊か。
  • 起伏があって読み応え十分の物語。

ここが×

  • 要素の因果関係が描かれていないので、ところどころ訳が分からない。
  • 盛り込んだ要素が多くて焦点が定まってない。
  • 文章読み返しが出来ないのはちょっと。

■魔法の文字を捕まえろ

直前にご紹介した「ひとでなく、ひとでなし」も、かなり設定が独特なファンタジーでしたが、これも面白い設定の物語です。舞台となるのは、ちょっと変わった図書館「檻のビブリオ」。本から文字が逃げ出して、司書を務めるベルジオスと館長が、文字と追いかけっこをするのも日常茶飯事です。私も図書館は好きですので、冒頭だけですぐに引き込まれました。

すると、玄関から大きな衝撃音が。いつも本を届けに来る「道具屋」ですが、その日は運搬機器の調子が悪いのか、玄関を破壊して本をぶちまけてしまったのです。そこで本に埋まっていた青年を発見。彼の名前はオト。何やら曰くありげなオトは、しばらくこの図書館に滞在する事になり、図書館の愉快なメンバー達との物語が幕を開けるのでした。

檻のビブリオまずは、美しく表情豊かな立ち絵、それにカットインを使った演出が印象的です。立ち絵は、ベタ塗りのアニメ絵ですが、背景画像とのマッチングも良く、まさにアニメ風の雰囲気を感じさせてくれます。演出も非常に凝っており、美しい絵と共に、物語を盛り上げてくれます。

登場キャラクターがまた多彩です。主人公のベルジオスを始め、館長、道具屋、ザクロ、カオリン、クワトロなどの、なんだか良く分からないキャラクターとのどたばた劇に、クールなオトを巻き込む様子が面白く、中盤まではキャラクターのやり取りを見ているだけでも楽しめるでしょう。キャラクターの数は、この尺にしてはかなり多いのですが、個性付けもしっかりしています。

そして物語は、オトの過去に秘められた秘密、そしてオトの大切な女性を軸に進んでいきます。中盤から物語は急展開するのですが、各イベントでの描写が過不足なく、実にすらすらと読め、それでいて読み手の感情に訴えかけるところもあるため、テンポがいいのに重厚さも感じさせてくれます。オトとイリシアの過去エピソードの織り交ぜ方、そして中盤からの展開など、構成も上手いですね。

が、構成は上手いのですが、要素と要素の繋がりというか、イベントにおける因果関係の描写が非常に希薄で、冷静に考えると「これ一体どういう事?」となってしまう箇所も多々ありました。鏡がベルジオスの過去を映しだそうとしたら突然消滅してしまった理由もなんら語られませんし、そもそもオトが何故「檻のビブリオ」に来たのかも、最後まで読んでもいまいち良く分かりません。その他、細かい事の理由付けがほとんどされていないため、どうにも釈然としないものを感じます。

一番気になったのは、イリシアとタージャの関係です(関係というか、あのような結果に至った流れですね)。そこがすっぱり抜けてしまっているんですよね(色々想像する事はできるのですが)。そこだけでも何とかならなかったものでしょうか。全てにおいて、物語内で起こった事件の因果関係を書くべきとも思いませんが、やはり基本は「こうしたからこうなった」「こういう事が起こったのはこういう事があったからだ」という、繋がりの描写だと思うのです。そこも含め、全体に色々な要素を盛り込めるだけ盛り込んだはいいですが、消化しきれていないという感じです。キャラクターや演出、構成は素晴らしいのに、少々惜しまれます。

立ち絵や一枚絵はアニメ塗りが多いのですが、特に後半になるに従って一枚絵が増えていき、ラスト間近の絵画風の一枚絵は非常に効果をあげていたと思います。上に書いたように、物語としては若干腑に落ちないところもあるのですが、エンターテインメントとしては非常にレベルの高い作品だと思いました。

ただ、システム周りには難ありです。何と文章読み返しができません。また、右クリックしてもテキストウィンドウが消えるだけで、文章スキップやセーブは右下のアイコンをクリックする必要があるのも、少し不親切です。それに、これは私だけかも知れませんが、途中でセーブした後に再開しようとしたら、直後のシーンで何と画面が真っ白になって止まってしまいました。仕方ないので最初からやり直す羽目に。ティラノは不具合が出ても驚かないツールですが(笑)、もう少し何とかならないものでしょうか……。

ツールはティラノビルダー。選択肢は途中に1つだけありますが、直後のやり取りが少し変わるだけで一本道です。プレイ時間は1時間くらいでしょう。少し消化不良気味ではあるのですが、続編を読んでみたくなるような、この作品でしか味わえない世界観、雰囲気は、是非ともプレイして実感していただきたいと思います。
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