第593回/その輝きは飾りじゃない - ガラス姫(夜月水華) - ファンタジー
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第593回/その輝きは飾りじゃない - ガラス姫(夜月水華)

ファンタジー
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ガラス姫

ガラス姫準推薦
■制作者/夜月水華(ダウンロード
■ジャンル/ガラス姫の小冒険ノベル
■プレイ時間/15分

図書館の司書ベルジオスが見つけた、「ガラス姫」という本の物語。ある城の中にいる、体がガラスで出来ているお姫様「ガラス姫」は、外にも出られず部屋の中だけで過ごす毎日。そこへやって来たコマドリに外の様子を聞いたガラス姫は、自分も外に行ってみたいと思い始めるが。多数の一枚絵が豪華な、絵本風の物語。

ここが○

  • 優しいタッチの大量の一枚絵がとても良い。
  • 童話のようなほのぼのとした物語。
  • ハッピーエンドで読後感もとても良い。

ここが×

  • 正攻法で捻ったところはほとんどない。
  • いい人ばかりのキャラは好みが分かれるか。
  • マウスホイールを使っての読み進め、読み返しが出来ない。

■その輝きは飾りじゃない

前回ご紹介の「檻のビブリオ」の外伝的な作品ですが、作られたのはこちらが先です。外伝とは言え、ストーリー上の繋がりは特にありません。ベルジオスが見つけた本の物語という設定で、最初と最後にベルジオスと館長がちょっと登場する以外、あの作品と関連がある訳でもないですので、こちらから読んでも全く問題はありません。

舞台はどこかの国のどこかのお城。そのお城に、体がガラスで出来ている「ガラス姫」という少女がいました。彼女は、割れたら大変だという理由で(ガラスですからね)、外に出してもらえない生活。そんなガラス姫の部屋に、ある日コマドリが飛び込んで来ました。コマドリを介抱し、彼から色々と話を聞いたガラス姫は、外の世界を見てみたいと思い始めるのですが……。という展開。いかにも童話というような物語です。

ガラス姫いかにも童話と書きましたが、一枚絵もそんな感じです。「檻のビブリオ」ではアニメ風の絵で、実際ベルジオスの立ち絵などはやはりアニメ風ですが、ガラス姫の物語に入ると、アニメ風ではない、淡いパステル風の色調を主体とした、素朴な塗りの絵が大量に出てきます。この一枚絵が、どれもこれもとても素晴らしい。量はもちろん、質も高く、読み手とファンタジーの世界に誘ってくれるでしょう。

物語自体は、そこまで奇を衒った展開はせず、実にストレートです。謎や伏線がある訳でもありません。曰くありげな描写や、真意を計りかねる独白もありません。しかし、全体の作りがとても丁寧で、短いストーリーながらイベントもバランスよく配置されています。各キャラクターの立ち位置もしっかりしており、読んでいてとても心地よい物語に仕上がっています。こういう作品を読むと、物語の完成度というのは、凝った仕掛けや複雑な心理描写ばかりではないというのが、よく分かります。

後半は、その気になれば少々後味が悪い終わり方にする事も出来たでしょう。こういう、出来すぎたハッピーエンドには興ざめする人があるかも知れません。しかし、この作品においては、この出来すぎたハッピーエンドが実に相応しく感じます。それは、絵やキャラクターなど、全体から醸し出される雰囲気によるのでしょう。登場時は一見悪役っぽいキャラでも、みんないい奴なんですよね。

そういう意味で、物語においては単に展開がどうこうだけで読み手の印象が左右されるのではなく、演出やキャラクターなどによる雰囲気作りが大切なんですね。それによって、同じ展開が嘘っぽくなったり、逆に説得力あるものになったりもするのです。この作品は、後者の好例だと思います。

こういう童話風の物語は、過去にも何作かありました。古くは「ぴあす」から、「黄色いレンガの道の果て」「メモリーロスト・ネバーランド」「騎士の恩返し」など、優れた作品が色々ありますが、この作品は、絵とキャラクター、演出など全体としての雰囲気作りの上手さと、心和む読後感という意味で、童話風作品の中でも非常に優れた一作と言えるでしょう。

ただ、この作品も「檻のビブリオ」同様、システムには少々難があります。右クリックでシステム画面が開くのはいいのですが、マウスホイールでの文章読み返しや文章送りが出来ません。短編なのでまだいいのですが、このご時世に読み返しが出来ないのは、やはり少々辛いものがありますね。

ツールはティラノビルダーです。選択肢は一箇所だけあり、その選択肢で2つのエンディングに分岐します。全部読んで15分くらいでしょう。こういう、善意のオーラが放射している物語が苦手な人もあるかも知れませんが、鬱作品やダークな作品がお好きな方も、たまにはこういう、暖かくほのぼのした物語を読んでみてはいかがでしょうか。心が前向きになる事は私が保証します。
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