第594回/雪の街から届いた奇跡 - スノードームは夢を見るか?(りっと) - 不思議系
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第594回/雪の街から届いた奇跡 - スノードームは夢を見るか?(りっと)

不思議系
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スノードームは夢を見るか?

スノードームは夢を見るか?■制作者/りっと(ダウンロード
■ジャンル/素直になれない少年少女ノベル
■プレイ時間/1時間半

クリスマスが近いある雪の日、少女は少年と出会った。皮肉屋で友達がいない少女と、意地っ張りでひねくれ者の少年。2人は何となく毎日会い、そしてクリスマスイブに会う約束をするのだが、翌日少年は約束の場所に現れなかった。少女は悪態をつきつつも、少年を探しに行くのだが。見た目は地味だが、味わい深いクリスマスの物語。

ここが○

  • 生き生きと描かれた少年と少女の交流。
  • 不思議で柔らかな世界観。
  • 後半から急に動き始める立体的な構造の物語。

ここが×

  • 少年と少女がもう少し心を開く様子を描いても良かったのでは。
  • 後半は何が何だか分からなくなる箇所も。
  • 文字サイズが小さ過ぎ。

■雪の街から届いた奇跡

3段目のきみ、5段目のぼく。」の作者さんの作品です。この作者さんは、短編、掌編が得意な方という印象ですが、この作品は中編と言ってもいいくらいの、それなりの長さです。物語の形式で言えばいわゆるボーイミーツガール型なのですが、少々変わった雰囲気の作品です。

舞台はどこかの街。国や時代は明記されていませんが、多分現代ではないような感じがします(その割に、登場人物の言葉遣いが完全に現代っぽく、そこは少し違和感を感じたのですが)。少年も少女も、登場人物が全て名無しです。ある日少女が少年に会い、お互いいがみ合いながらも、何故か毎日同じ場所で会い続け……という出だし。学園ものならば良くある展開ですが、舞台が異なる事で、違ったテイストの作品になっています。

スノードームは夢を見るか?中盤まではひたすら少女と少年のやり取りで進みます。この2人のやり取りが、子供だと思えば微笑ましいのですし、描写自体は生き生きしているのですが、少しやり過ぎの感もあります。少女は皮肉屋で、口を開けば憎まれ口ばかり。少年は意地っ張りのひねくれ者で、素直な想いを口に出来ません。この2人のやり取りは、微笑ましいというより終始衝突ばかりです。なので、この2人のやり取りを見ていると若干疲れます。スタート地点はそれでもいいですが、もう少しお互いがだんだん心を開く様子でも描けば、後半の展開も説得力が増したのではないでしょうか。

その後半。あまり詳細は書けませんが、何とも言えない展開です。ひたすらバッドエンドを繰り返し、それでも少年を救おうとする少女の様子は健気です(上に書いたような点から、「どうしてそこまで?」と思ったのも事実ですが)。更に進むと、今度は別の方面から物語が語られ始めます。出だしの印象からすると、かなり重層的、立体的な展開をする物語で、驚かされました(「繰り返す度に記憶を」の件がもっと効果的に使われれば、終盤が盛り上がったような気もしますが)。

なのですが、この作品は細かいところがあまり語られておらず、想像するしかありません。最後まで読んでも、良く分からない謎もありましたし、何より登場キャラが全員名無しなので、特に登場人物がそれなりに増える後半は、「これは誰が誰に言っている台詞なんだ?」と訳が分からなくなる箇所もありました。

更に悪い事に、後半では結構視点変更があるのです。なので、一層物語の流れが把握し辛くなってしまっており、せっかくの立体的な構造の物語が、大変分かりにくくなってしまっているのが惜しまれます。せめて、主要な登場人物に名前をつけて、台詞に発言者の名前をつければ、大分印象が変わったような気がするのですが……。

まあ、謎云々については好みもあるでしょう。いちいち謎や秘密を全部描かず、読者に考察の余地を残してくれる物語が好きであれば、この物語はかなり色々考える要素があり、面白いと思います。全体の雰囲気は、いかにも冬の街という感じで柔らかく、この雰囲気をじっくり感じながら読むのは、結構気持ちがいいです。物語を解読しながら味わうのではなく、「世界観に身を浸しながら読む」のがいいかも知れません。

冒頭とラストで出てくる絵は、一見拙いように見えますが、かなりいい雰囲気です。特に、ラストの2人の絵は素敵ですね。ラストまで読んでも、結局良く分からないところも残るのですが、上で書いたように、あまりそこを追求しすぎるのも無粋だと思います。立ち絵はまるでないのですが、背景や音楽にいい素材を選んでおり、とてもいいムードです。

ツールはLive Makerですので、プレイはしやすいのですが、文字サイズが物凄く小さいのには参りました(右クリックで出てくるメニュー画面の字すら小さい)。もう少し大きくても良かったのでは。選択肢はなく一本道。クリア後はおまけが読めます。おまけまで読んでも、なお謎が残るのですが、そういうものだと思いましょう。全部読んで1時間半。クリスマスは終わりましたが、寒い今の時期のうちに読むと楽しめるでしょう。
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