第595回/罪深き者にも五分の魂 - サイコパンプス(マーブル・フェアリー) - アクション・ドラマ
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第595回/罪深き者にも五分の魂 - サイコパンプス(マーブル・フェアリー)

アクション・ドラマ
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サイコパンプス

サイコパンプス■制作者/マーブル・フェアリー(ダウンロード
■ジャンル/中二風オカルトバトルノベル
■プレイ時間/50分

霊能力者の和久井和馬は、ある日霊媒の力を持つ住職の友人、六音時音羽の依頼で、とある廃校に出没するという幽霊を成仏させる為に訪れていた。そこで出会った教師斎藤は、かつてこの学校に勤務しており、教え子が自殺した事をずっと気に病んでいるという。和馬は斎藤と行動を共にして幽霊を探すのだが。後半の意外な展開が驚きのオカルトバトル物語。

ここが○

  • 展開バランスとテンポの良さ。
  • しっかり起伏のついた一話完結形式で読みやすい。
  • 第2話から話が動き始め、後半の意外な展開に驚き。

ここが×

  • ちょっと色々な要素を盛り込みすぎて語り切れていない。
  • あまりにも破滅的な終わり方。
  • ちょっと文章が捻り過ぎのような気も。

■罪深き者にも五分の魂

アリスのいないワンダーランド」の作者さんの最新作です。前作は、ちょっと捻った、凝った言い回しが独特で、更にラストで不意打ちのように食らわされる意外な落とし方が印象的な小品でしたが、その作風は今回も健在です。前回はファンタジー風でしたが、今回はオカルトバトルノベル。作者さん自ら「中二バトル」と銘打っていますが、本当にそういう感じです。悪い意味ではなく、中二風の格好の付け方が、上手くはまっている感じで、とても楽しく読むことができました。

この作品は、1話完結型で全3話からなります。第1話は、除霊を生業とする主人公の和久井和馬が、友人の女性住職六音時音羽から依頼され、幽霊が出るという廃校に潜入するところからお話が始まります。つかみから事件が起きるまでは非常に早く、さりとて決して飛ばしすぎという印象もなく、実にちょうどいいタイミングで話が進み、ちょうどいいタイミングで意外な事実なども明かされるため、読み心地がとても快適です。

サイコパンプスこの第1話は、ラストでの読者の盲点をついた意外な事実が、実によく出来ていました。第1話は15分かからずに読めるくらいの長さですが、この長さでテンポ良く読ませ、更に読者をちょっと驚かせる仕掛けを盛り込んでいる作りの良さが見事です。この第1話だけでもこの作品を読む価値があると思いました。作者さんの非凡なるセンスを感じさせてくれます。

第2話は、一見第1話とは全く関係のない事件です。とある屋敷のメイドからの依頼で、彼女が死んだ(?)原因を探って欲しいというもの。この第2話から、徐々に作品の核心に迫る謎が分かり始めます。そして第3話で一気に物語は急展開。この第3話の急展開ぶりの凄さは、なかなかありません。中編以上の作品ならまだしも、この作品は全部読んで1時間かからないくらいの長さ。この長さで、これほど色々な要素を詰め込み、ラストでこうも凄い展開を見せてくれる作品はなかなかないと思います。

ただ、ちょっと色々詰め込みすぎの感があり、説明し切れていない箇所もあります。「全く説明しておらず、何が何だか分からない」部分はないのですが、「読者に十分納得させるほど説明し切れていない」箇所が、少し見受けられました。例えば主人公の妹である美代についてだとか、和馬とカズについてだとか、説明はされるのですが、かなり駆け足でどんどん大量の事実が説明されるので、納得するより前に少し置いていかれ気味に(後は、ラスト近くの和馬とカズの件は、仕方ないにせよ分かりにくくて少々混乱)。

1話完結式のオカルトバトルノベルとしては、かなり完成度が高いと思いましたので、もう少し話を増やして、1つの1つの要素を1話ずつ時間をかけて説明すれば、かなり凄い作品になったような気がしました。もちろん、今のままでも十分面白いですし、これだけの内容を、全3話にぎゅっと濃縮しているので、逆に非常に濃い物語になっているのは、これはこれでこの作品の長所とも言えるでしょう。1時間未満の作品とは思えぬ満腹感を味わえます。

文章力はかなり高い方だと思います。ただ、一部少し捻り過ぎかなと思える箇所もありました。途中哲学云々の雑談になったところが特に顕著なのですが、こういうのはやり過ぎると読者が置いてけぼりを食らう危険性もあるように思います。作品自体がエンターテインメント性が高いのですし、あまり本筋に絡まない複雑な知識については、語らないが花というような気もしました。まあ、ノベルゲームというよりは小説寄りの文章と言えます。文章力自体は文句なく高いので、読み応えは十分です。

立ち絵は全て素材で、絵柄の違いから来る違和感があったりもしますが、下部テキストウィンドウと全画面テキストウィンドウを上手く使い分けたり、特殊効果を効果的に挿入したり、演出もかなり物語を盛り上げてくれています。全3話に分けた構成と言い、全体の作りはとてもよく考えて作られているなあと感心しました。

ツールはティラノスクリプトです。システム面もしっかり作り込まれていて、割合快適に読む事が出来ます。選択肢のない一本道で、全3話を読んでプレイ時間は1時間弱でしょう。終わり方があまりにも破滅的で(にも関わらず意外にも明るい雰囲気で、意外と読後感は悪くない)、少々好みが分かれるような気もしますが、短時間でとにかく盛り沢山な物語。オカルトバトルですが、そこまでどぎつい描写はありませんので、苦手な人でも多分問題ありません。オカルトが苦手な私でも楽しめましたので、気軽に読んてみてください。
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