第596回/信じる君に勇気をあげる - 追憶の向こう側(CyberFan) - 学園・青春
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第596回/信じる君に勇気をあげる - 追憶の向こう側(CyberFan)

学園・青春
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追憶の向こう側

追憶の向こう側準推薦
■制作者/CyberFan(ダウンロード
■ジャンル/幼馴染すれ違いノベル
■プレイ時間/2時間半

嵯峨野和美は、バスケットボール部に所属する、潮崎高校の1年生。同い年なのにやたらお姉さん風を吹かせる鹿野深月と、楽しく過ごす日々だった。ところがある日、友人の坂巻行人が、深月に告白したいから、間を取り持ってくれと頼んできた。和美は深く考えずにその役を引き受けるのだが。フルボイスで効果音も豪華な、ドラマCDのような学園物語。

ここが○

  • フルボイスで効果音も多彩。
  • 多数の個性的なキャラクターが物語を盛り上げる。特に鷹宮。
  • 綺麗なラストシーン。

ここが×

  • 途中まで物語がどの方向へ進むか分からず、目立った起伏もない。
  • ヒロインの一人、美冬があまり目立たない。
  • 深月エンドも欲しかった……。

■信じる君に勇気をあげる

最近ではフルボイスの作品も珍しくなくなりましたが、全キャラフルボイスというのはなかなか大変な仕事です。この作品は、主人公にも声があり、それどころか、台詞だけではなく独白なども含めて、全てを喋ります。独白も喋るのは少し好みが分かれるかも知れませんが、これだけ声にこだわるというのも大変な作業打たでしょう。

声だけならまだしも、この作品は、加えて効果音にも手がかかっています。なので、ノベルゲームをプレイしているというより、ドラマCDでも聴いている気がしてきます。と言って、声や効果音がある為に文章が等閑になっているという事もなく、文章描写もしっかりとしています。音や動きの演出に全てを委ね、文章が非常に薄い作品もありますが、ノベルゲームはやはり文章を読ませる事が主眼ですから、しっかり文章も楽しみたいもの。この作品の方針は、そういう意味で好感が持てます。

追憶の向こう側主人公は、身長150cm台と小柄ながらバスケットボール部に所属する、高校1年生の嵯峨野和美。冒頭は女子バスケットボール部の試合シーンから。試合で活躍している幼馴染の鹿野深月を、ベンチにすら入れなかった和美が応援半分、羨ましさ半分で見ているというオープニングです。いわゆる「幼馴染すれ違いもの」ですね。最近の作品で言えば、「select」がこのタイプでしたね。

が、この作品は割と序盤で、幼馴染の深月と友人の坂巻が付き合ってしまいます。しかもこの作品、終盤までどういう方向に進むのかがいまいち見えず、ごく普通の学園生活の描写がずっと続きます。だから読んでいて退屈してしまうのかと思いきや、意外なほど退屈せずに読めるんですね。

要因の1つは、多数の個性豊かな登場人物ですが、中でも生徒会長の鷹宮京一郎がとてもいいキャラクターです。大金持ちで成績も良い、非の打ち所のない男ですが、不思議と嫌味がなく、和美との掛け合いが楽しく、京一郎と和美のやり取りだけで中盤を見事に引っ張っていっているのはさすがです。京一郎に関しては、声のパワーもあるかも知れません。飄々とした爽やかな声で、京一郎の魅力を十二分に引き出していた好演です。副会長の榊も好きなキャラです。和美、鷹宮、そして榊の3人の組み合わせの妙。

反面、女性キャラには少し弱さを感じました。美冬をもっと和美と絡ませたり、深月の内面をもっと描いてみても良かったのではないでしょうか。特に、深月が坂巻とあまりにあっさり付き合う事になってしまい、葛藤がまるで描かれなかったので、終盤の展開で「え、そんなそぶり全然見せなかったのに」と、若干の違和感を感じてしまいました。また、美冬の秘めた想いのようなものもほとんど描かれないので、こちらも終盤で少し唐突感。

女性キャラクターも、登場人物としては性格付けもしっかりしており、良く出来ていたので、もう少しキャラクター同士の関係や、心情描写に力を入れても良かったような気はしました。学園ものとしては、文化祭を始めとして展開や描写も良く楽しめますので、恋愛ものとしての一面を前面に出してみれば、この辺りの印象が変わったかも知れません。

終盤の展開は、上に書いたような理由で少し取って付けた感はありますが、青春の少し苦い出来事を上手く描いており、クライマックスの和美と美冬の待ち合わせのシーンも、非常に決まっていました。文化祭というイベントに合わせ、鷹宮を始めとする個性的な面々を絡ませた上で、上手く終盤に向かって流れを作っており、この流れの作り方は非常に上手かったと感じました。謎や伏線主体の物語ではありませんから、これはキャラの組み合わせ方、そして構成が上手いという事だと思います。

クリアすると、おまけコーナーで声優さんのメッセージが、なんと「動画」で見られます。面白い趣向で、興味深く見ることが出来ました。主人公の和美役は女性の方ですが、どことなく山口勝平さんっぽさを感じ、違和感はほとんどありませんでした。あまり目立った起伏のない物語を引っ張っていっているのは、鷹宮などのサブキャラはもちろんですが、実は主人公である和美である事が、最後まで読めば分かります。嫌味もなく、主人公らしさも見せてくれる良い男でした。

ツールは吉里吉里です。選択肢はなく、プレイ時間はどれだけ声を聴くか次第ですが、2時間半くらいではないかと思います。幼馴染である深月とのエンディングはないので、そこはちょっと残念ですが、学園ものとして良く出来た作品です。こういう、正統派の学園ものって最近少ない気がしますし、学園ものがお好きな方なら、きっと楽しめると思います。
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