第604回/地下から桜へ大冒険 - 春の日に道が続く(SEAWEST) - 学園・青春
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第604回/地下から桜へ大冒険 - 春の日に道が続く(SEAWEST)

学園・青春
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春の日に道が続く

春の日に道が続く■制作者/SEAWEST(ダウンロード
■ジャンル/幼馴染と再会冒険ノベル
■プレイ時間/40分

中1の春休み。段々大人になっていく周りに置いていかれている昇の前に、数年前引っ越した親友の馬太郎が現れた。馬太郎は、昇を「冒険」に誘う。何でも、郊外のお嬢様大学に通じる秘密の抜け道を見つけたらしい。2人は、いつも一緒に遊んでいた数年前を思い出して、抜け道に足を踏み入れるのだが。少年の成長を描いた短編物語。

ここが○

  • 少年の冒険心を描いたシナリオ。
  • 上手く読者を物語に引き込む前半。
  • 後半描かれる主人公の成長の様子。

ここが×

  • 前半の主人公には「お前ちょっと落ち着け」と言いたくなってしまう。
  • 2人の以前の描写があれば良かったかも。
  • 後半の事実は、少しいきなりな感。

■地下から桜へ大冒険

前回が、非常にダークなお話でしたが、暗い話を読んだ後は、前向きで明るい物語を読みたくなります。この作品は、少年同士の友情物語。前向きでストレートなお話です。主人公は中学校1年生です。中一らしい幼さ、直情径行なところも見られますが、そんな主人公が後半には成長していく様子を見せてくれるところが、この作品の見どころです。

主人公の昇は、中一の春休みを過ごしていましたが、段々大人へと変わっていく周囲を受け入れられずにいました。昔はいつも遊んでくれた兄も変わってしまったし、友人たちも然り。そんな彼は、変わってしまった周りに苛立ち、一人で反発を続けます。こういう経験、誰でもこの時期にはあるんじゃないでしょうか。

春の日に道が続くそんな昇のところへ、突然かつての親友、馬太郎が訪ねてきました。馬太郎は、いつも昇と一緒に遊んでいた仲なのですが、数年前に突然転校していなくなってしまいました。数年振りに再会した2人は、お互い相変わらずの歯に衣着せぬ物言いで旧交を温めつつ、昔と同じように走り回ります。そして馬太郎は昇に「冒険」を提案するのでした。

この「冒険」が、何とも子供らしい他愛のないもので笑ってしまうのですが、序盤の引きはなかなかのものだと思いました。この手の日常系作品の場合、最初から「これはどんな物語であるのか」が示される事はあまりないため、読者を引っ張るのが思いのほか難しいものです。この作品の場合は、後半の展開を読者に悟らせないように静かに進めつつ、上手く先への期待を抱かせる構成がよくできていると思いました。

そして、その冒険の途中に思いも寄らぬ事実が明らかになります。前半でも昇は落ち着きがなく、「男ならもうちょっとどっしり構えろ」と言いたくなってしまいますが、この事実が明らかになった時の昇には、大丈夫なのかこいつは、と思ってしまいました(笑)。まあ、中一の少年がああいう事実を知らされたらあんなものなのかも知れませんが……。

しかしその後、昇が自分を見つめ直して一段大人への階段を上る箇所は、とてもいい場面だったと思います。子供の頃の思い出を思い出しつつ、少し少年が大人になる、そんな成長物語として、この後半はよく出来ていました。この作品には恋愛描写が全く入ってこないのですが、この作品に限ってはそれは正解だったと思います。恋愛は、昇が更にもう少し成長した先でしょうし、2人のその先を期待させるような彼の成長ぶりを描いただけでも十分でしょう。

ただ、「子供の頃の親友と再会して成長する」物語なのですから、できれば少しでいいですから、昇と馬太郎の過去の交流の様子が入っていれば、後半の展開がより説得力を増したような気もしました。あくまでそれは2人の会話で示されるだけなのですが、今作においてそれは重要な要素ですから、少しそこに筆を割いても良かったのではないかと。また、後半明かされる秘密や過去のエピソードが、少しいきなりな気もしました。少し前半で伏線を張っておいても良かったかも知れません。

落ちの付き方も、少し突然でありがちな展開とも言えるのですが、昇の成長はこの短時間で立派に描けていますから、あのラストはありだと思います。この後数年経って、果たして昇はきちんと約束を果たすのかどうか気になりますね。後日談が読みたくなる終わり方で、その意味では読み手を最後まで上手く引っ張ってくれるシナリオ展開だったと思いました。

ちなみにこの作品、フルボイスなのですが、読了後のおまけで、何と全部の声を聞くことができます。バックログで声を聞き返せる作品ならば時々ありますが、これはなかなか思いつかないおまけですね。ツールは吉里吉里で、プレイに当たって不都合はありません。選択肢はなく、プレイ時間は40分程度(声を全部聴けば1時間くらいでしょうか)。桜が咲く季節のお話ですから、この時期に読むのにぴったりの青春物語です。
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