第607回/一年越しのサクラサク - 入試直前対策ゲーム(rebeist) - 日常
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第607回/一年越しのサクラサク - 入試直前対策ゲーム(rebeist)

日常
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入試直前対策ゲーム

入試直前対策ゲーム■制作者/rebeist(ダウンロード
■ジャンル/入試の二日間体験ノベル
■プレイ時間/15分

主人公は一浪し、日本最高難易度を誇る西大を受験すべく、入試会場へとやって来ていた。彼が西大を受験するのは、かつての友人とのちょっとした約束がきっかけだった。そして入試会場。変な老人や、癖のある試験監督の教授・准教授、トイレを仕切る謎の男などにペースを乱される事なく、無事に合格を勝ち取る事ができるのか?

ここが○

  • 思わず脱力してしまうようなギャグ。
  • 文章の表示形式が分かりやすくて面白い。
  • ただのギャグではなく、意外としっかりした物語。

ここが×

  • 読み返しができないなど、少しプレイしにくい。
  • 取り立てて起伏のある物語ではないので、退屈する人もあるかも。
  • プレイしても入試の対策にはならない(笑)。

■一年越しのサクラサク

この季節にぴったりの(?)作品のご紹介です。いつの時代も入試に苦労させられない人はいないと思いますが、そんな入試をテーマにした作品。入試は、イベントの一環としても使い辛いですが、その入試がテーマというのは珍しいですね。それこそ、私の「弥生桜の空に笑え!」くらいでしょうか(と軽く宣伝(笑))。

主人公(名前は特になし)が挑むのは、日本最高難易度の大学、西大(まあ、東大のパロディですね)。1年前にも同じ西大を受験して不合格になり、雌伏1年の浪人生活を経て、再び同じ西大に挑むべく、入試に臨むという設定です。背景写真は作者さんがご自分で撮影したのでしょうか。ちょっと加工しすぎの感もありますが、リアルでなかなかいい感じ。

入試直前対策ゲームタイトルも無愛想ですし、テーマも派手ではありませんから、淡々と入試風景を綴った地味な物語かと思いきや、登場人物が意外に個性的で、ともすれば単調になりがちな入試の2日間を彩ってくれています。同じ受験生の謎の爺さんや、漫才のボケ・ツッコミのような試験監督の2人、それにトイレを仕切る受験生など、とぼけた味わいのテキストが、少しシュールな笑いを生み出します。凄く笑えるというほどではないのですが、にやりとするような会話、描写が面白いですね。

主人公が西大を受験するに至った経緯は、作中で語られます。高校時代の友人との、ちょっとした思い出話と言いますか。この、高校時代のエピソードがまた色々と突っ込みどころがありますが(笑)、こういう些細なエピソードを入れる事で、短編ではあるものの作品が奥行きを増していると思います。この友人との話があるからこそ、レビューで取り上げる気になった程です。

入試が終わると、当然のように合格発表の場面がやって来ます。このシーンは、必要以上に主人公の心情を語らず、事実だけを静かに描写するのですが、その描写がとてもいいと思いました。不合格になり肩を落として去っていく受験生に、前年の自分を重ねて緊張感を高める主人公の様子には、自分の受験の合格発表の時を思いだし、読みながら少し背筋が伸びる思いをしました。

また、ラストの締め方も良かったと思います。手法としては定番ではありますが、これによりただの季節イベントを描写しただけの日常シナリオではなく、一本筋が通った物語になっていました。どうやらこの作品、バージョンアップ前にはこの後日談はなかった模様です。だとしたら、バージョンアップでこのラストが追加されたのは、大正解だったように思います。穏やかに、かつ綺麗に物語をクローズする、いいラストシーンでした。

全体に、独特のウィットが盛り込まれていたり、少しシュールなイベントがあったり、人を食ったようなジョークが入っていたりする他は、起伏に乏しい点は否定できません。しかしにも関わらず、読者をひきこむ独特の魅力を持った作品です。ただ、「入試直前対策ゲーム」というタイトルですが、対策は特に語られませんし、これをプレイしたからと言って入試に有利にもなりません(笑)。少しタイトルを捻ってみれば、もっと人目を引くのではないでしょうか?

ところでこの作品、文章表示が独特です。上部と下部にテキストウィンドウが出て来て、時には上下でやり取りしたりするのです。これが面白い効果を上げていました。面白いだけでなく、分かりやすさも増しています。文章だけの作品だと、画面が文字で埋め尽くされたり、どうしても「読みやすさ」が二の次になる印象なのですが、これは複数人数のやり取りを表すのに、分かりやすい方法だったと思います。

ツールは不明です(調べたのですが分かりませんでした)。プレイ時間は15分の一本道です。文章の読み返しや既読スキップが実装されておらず、セーブとロード以外には何の機能もないというシンプルなシステムですが、短いですからさほど苦にはなりませんでした(読み返しくらいはあってもいい気がしましたが)。心に余韻を残すとか、感動させるというタイプの物語ではありませんが、入試という一場面をユニークな取り組みで描いた短編として、一見の価値はあると思いますよ。
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