第610回/君の笑顔にオートフォーカス - 写真部の幽霊部員(BBBB) - 不思議系
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第610回/君の笑顔にオートフォーカス - 写真部の幽霊部員(BBBB)

不思議系
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写真部の幽霊部員

写真部の幽霊部員■制作者/BBBB(ダウンロード
■ジャンル/写真部で幽霊と青春ノベル
■プレイ時間/20分

春崎正吾は、自然豊かな志波町にある志波高校へ今年から通う新入生。入学式の日、学校で見かけた女生徒に、正吾は心を奪われた。入学式後のホームルーム。再び彼女を見つけ、追いかけた先は写真部の部室。どうしてもその女生徒が気になる正吾は、写真部の扉を叩くが、部室の中に彼女の姿はなかった。タイトルが全てを語る短編青春物語。

ここが○

  • 立ち位置のはっきりした登場人物。
  • 幽霊ものだけに写真を上手く絡めている。
  • 写真、恋愛、過去話と3つの柱の絡ませ方が上々。

ここが×

  • 短編で少し語り切れてない面。
  • なんだか謎めいたままの出臼さん。
  • 恋愛ものとしてはちょっと急足過ぎな展開。

■君の笑顔にオートフォーカス

正統派青春もののご紹介ですが、タイトルが全てを語っているという珍しい(?)作品。「Movie_club」の作者さんの作品です。あちらは大学の映画研究部でしたが、今作の舞台となるのは高校の写真部。私自身は写真部ではなかったのですが、親しい友人が写真部の部長をしており、写真部の部室にもよく出入りしていたので、自分の高校時代を少し思い出し、懐かしい気持ちで読めました。

フィルムカメラって、今では普通の人はまず使わないものですが、私の知り合いのカメラ愛好家は「いつもはデジタルカメラを使うけど、ここ一番という写真を撮りたい時は、フィルムカメラを使う」んだそうです。気合いの入り方が違うんだとか。アナログな道具って、今となっては不便なところもありますが、それがいいところでもあるんでしょうね。現像という作業は作中でも出てきますが、像が浮かび上がる瞬間が何とも言えないと、上に書いた写真部の友人も話してくれました。

写真部の幽霊部員主人公の春崎正吾は高校の新入生。学校で見かけた女生徒が気になり、彼女を追いかけて写真部の部室へ行くものの、部室の中には担任であり、写真部顧問の有明奈津美先生がいるだけです。やがて写真部に入部した後に彼女と再会した正吾は、彼女、東雲令子が幽霊である事を知らされます。これが本当の「幽霊部員」という、出オチみたいな展開です(笑)。

この作品、全部読んでも20分くらいの短編ですが、その短い物語の中に大きく分けて2本の柱があります。1つは正吾の令子に対する気持ち。もう1つは令子と奈津美先生の関係です。この2本の柱に、写真部での活動が絡んで物語が進んでいきます。この絡ませ方が上々で、大変読み心地のいい物語に仕上がっています。

幽霊ときたら「目には見えないけど、写真には写る」というのは定番のネタですから、写真部とは相性抜群です。思った通り、後半はそれを絡めたイベントがやって来ます。奈津美先生は、過去のある出来事に縛られているのですが、奈津美先生と令子が物語を上手く引っ張っていってくれています。単なる脇役かと思いきや、最初から最後まで主人公である正吾をしっかり支えて導く、いいキャラクターでしたね。

反面、正吾と令子の恋愛要素に目を移せば、ちょっと語り切れていないところがあるのが気になります。冒頭で、いきなり正吾が令子に恋してしまうという描写があって、それはそれで一目惚れでいいんですが、令子の側からの描写がほとんど何もないんですよね。2人のイベントも、せいぜい中庭でお弁当を一緒に食べるくらい(令子は食べられませんが)。もう少し2人の心が共鳴するようなイベントを挟み、できればそれを写真部の活動に絡ませれば、面白かったのではないでしょうか。

そしてこの作品一番の謎は、クラスメイトの出臼槙奈。もう名前からして怪しげな雰囲気が漂いますが(意味を知りたい方は「デウス マキナ」と片仮名で検索してみてください)、名前通りとまでは行かないまでも、かなり重要な役のキャラクター。しかも、彼女は要所要所で意味深な発言をするものの、最後まで何者だったのか結局よく分からないんですよね。どう見てもただのクラスメイトとは思えないのですが、せっかくいい役割を持ったキャラクターなのですし、彼女に関しても何らかのフォローがあれば良かった気がしました。

ラストは、ある意味幽霊もののお決まりとも言える終わり方で、上に書いたような正吾と令子の恋愛要素の薄さは気になったのですが、終わり方はとても綺麗です。そして私はむしろ、エンディングの後のエピローグの方が気に入りました。奈津美先生は正吾より結構年上ですが、案外あの後奈津美先生と一緒になる、なんて結末でもありかも、なんて想像してしまいました(笑)。

ツールはティラノビルダー。ブラウザー版でもプレイしてみましたが、途中で止まったり、更には令子が4人に分身するという前代未聞の珍現象が起き、これには驚愕しました(私の環境だけ? その後止まりました)。ダウンロード版の方が安定しているかも知れません。選択肢なしの短編です。ちょっと語り足りないところはありますが、青春と恋愛とちょっとの不思議が上手くブレンドされた、読んでいて気持ちいい物語でした。正統派青春ものがお好きな方にお勧めします。
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