第611回/扉の向こうに白い殺意 - 白い殺意(ふぁるこむ) - ミステリー・サスペンス
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第611回/扉の向こうに白い殺意 - 白い殺意(ふぁるこむ)

ミステリー・サスペンス
  • comment0
  • trackback-

白い殺意

白い殺意■制作者/ふぁるこむ(ダウンロード
■ジャンル/雪山の殺人ミステリーADV
■プレイ時間/40分

高校のミステリー研究会に所属する鮎川守と姫野香織は、顧問の橘いずみに率いられて雪の季節に山奥のペンションへやって来ていた。そこで出会う個性的な宿泊客達。何事もなく過ぎるかと思いきや、突然ペンション内に響く悲鳴。一同が駆けつけると、そこには変わり果てた宿泊客の1人が……。お馴染み「かまいたち」タイプのミステリーアドベンチャー。

ここが○

  • 手軽に楽しめる本格ミステリー。
  • 短編なのに登場人物が多いが、全員個性豊かで魅力的。
  • よく読んでいれば誰でも答えが分かる適切な難易度。

ここが×

  • これから捜査が始まるのかと思ったら、いきなり犯人当てに入ってしまう。
  • 事件解決場面の展開が妙に唐突。
  • 立ち絵に差分が全くないのが寂しい。

■扉の向こうに白い殺意

この作品は、上のあらすじを読んでいただければ一目瞭然なのですが、いわゆる「かまいたちの夜」タイプのミステリーアドベンチャーです。つまりクローズドサークルもののミステリーですね。一時期はこのタイプの作品が流行し、「氷雨」「七年凪」「ある夏の日、山荘にて……」など、個性的な作品が色々ありました。

が、最近ではストレートなクローズドサークルものは減り(ストレートな作品が減ったのは、フリーノベルゲーム全般の傾向でもありますね)、「紅く追憶の水葬」など、斬新な作品が増えてきました。それはそれでもちろん喜ばしいのですが、昔のスタイルが悪いという事にはなりません。時には昔ながらの作品をプレイしたくなる人もいるでしょう。私もその1人です。

白い殺意この作品は、そんな方々が泣いて喜ぶ(?)「かまいたち」タイプのミステリー。高校生のカップルと顧問の先生が冬のペンションへ行くといういかにもな導入部には、懐かしさを覚える方も多数でしょう。登場人物も多数。多いのですが、キャラはしっかり立っており、短い作品ですが混乱する事もありませんでした。

事件が起こるまでは他愛のない日常が繰り広げられますが、冗長さも感じず、テンポよく話が進んでいきます。そしていよいよ事件発生。ここから捜査に入るのか……と思いきや、主人公がいきなり何かを閃いたらしく、突然犯人の指摘シーンに突入してしまいます(えええ!?)。てっきりここから証拠や証言を集めると思っていたため、かなり面食らいました。一度目のプレイでは、犯人は当然指摘できず。択一式で犯人を選ぶだけなら当てずっぽうでも何とかなりますが、今作は「犯人を選んだ理由となる証拠品」「なぜその証拠品で犯人を判別したか」も、「文章で」入力しなくてはならないのです。適当ではクリアできません。

もちろん、一度目から注意深く読んでいれば、最初から犯人を指摘する事も可能です。ヒントはかなり親切に出していてくれるので、そのつもりで読めば難しくはありません。しかし心の準備ができておらず、私は無理でした(笑)。なので、犯人指摘シーンでセーブしておいて、2回目を読み始めました。犯人指摘シーンまでは20分程度ですし、関係のない前半のシーンをスキップで飛ばせば、2度目はそこまでかからないでしょう。

そして、2度目で犯人が無事に分かって一安心でした。ミステリーとしては、非常にシンプルな構造で、「ちょっと凝った犯人当てクイズ」という感じです。本格ミステリーの一番美味しいところだけを抜き出しました、という感じの内容。謎解きは非常にフェアですし、上に書いたように手がかりは大変分かりやすく示してくれていますので、しっかり読めば誰でも答えにたどり着けると思います。

ただ、犯人を追い詰めるシーンは少々唐突に感じました。動機については前半では何ら語られないため、少しいきなり過ぎる印象は否定できませんし、証拠と言っても、いわゆる状況証拠しかありませんので、推理自体が説得力に欠けるというか、「この状況なら、消去法で行けばまあこいつかな」くらいの、消極的な選び方しか出来ません。「推理ものならではの気持ちよさ」という意味では少々弱いものもありました。

とは言え、この作品は止まらずに読めば30分かからないくらいの短編です。本格的な推理ものではなく、「本格推理のエッセンスを、誰でも気軽に味わえるように料理した」ものだと思えば、これはこれで立派に楽しめる作品です。動機まで含めて前半で伏線を張ると、たくさんの登場人物がより生かされたと思いますが、そうすると短編の枠には収まらないでしょうし。解決編は少々力技の感はありますが、推理ものの枠内は決してはみ出していませんから、最後までフェアです。作者さんがミステリー好きなのか、そういうネタが随所に出てきますが、嫌味にならない範囲だと思います。

立ち絵はレベルが高いと思いますが、表情差分が一切なく、怒る時も笑う時も表情が同じですので、そこは若干の違和感を感じました。影絵でもいいという意見もあるようですが、この作品の個性的な登場人物にはこの立ち絵が合っていると思いますし、影絵だとこの短さではキャラクターが把握できなかったかも知れません。でも、表情くらいは変われば、もっと臨場感があったでしょうね。

ツールはWolf RPGエディターで、一通りの機能は装備されているのですが、ウィンドウ内ではマウスカーソルが高速で移動するため、少々操作し辛いのが難点です(私の環境でだけかも知れませんが)。ストレートでラストまで行けば20分少々ですが、多分多くの方が読み返す羽目になるでしょうから、その倍の時間は見るといいでしょう。どうしても迷ったら、フォルダーの中に「ネタバレ」というファイルがありますが、ヒントではなく答えがずばり書いてありますのでご注意を。気軽に推理ものの醍醐味を味わえる佳作です。
関連記事

Comments 0

Leave a reply