第613回/瞳に映る赤、心を染める青 - 夕焼け病(こたつワークス) - 恋愛
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第613回/瞳に映る赤、心を染める青 - 夕焼け病(こたつワークス)

恋愛
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夕焼け病

夕焼け病推薦
■制作者/こたつワークス(ダウンロード
■ジャンル/夕焼け空の下の恋愛ノベル
■プレイ時間/1時間

荒廃した世界を、当てもなく彷徨う旅人は、寝泊まりさせてくれる施設があると聞き、とある病院の門を叩いた。その病院には夕焼け病という奇病を患う、あさひという少女が入院していた。夕焼け空の下であさひと出会い、やがて毎日夕焼けの時間にだけ外で散歩するようになった2人は、徐々に惹かれあっていくのだが。夕焼けの赤が心に沁みる恋愛物語。

ここが○

  • 夕焼けの色が特に美しい背景写真。
  • 奇病の少女と旅人の暖かな交流の様子。
  • 余韻が長く残る終わり方。

ここが×

  • エンディング分岐条件が分かりにくい。
  • エピローグしか変わらなかったり、似たようなエンドが結構ある。
  • 割と先読みがしやすい展開。

■瞳に映る赤、心を染める青

ときかけさんちの朝ごはん」の作者さんの作品ですが、公開はこちらが先です。そしてこの作品には架空の病気が登場します。その名も「夕焼け病」です。ロマンティックな名前ですが、かなり大変な病気なのです(ちなみに「夕暮れ症候群」というのが実在します。この作品とは何の関係もないですが)。

夕焼け病は、夕焼けのわずかな時間を除いて、太陽や月の光を浴びる事が出来なくなってしまう奇病です。浴びてしまうと、短時間で皮膚が激しく焼けただれるという恐ろしい症状。そしてこの作品の舞台設定は、近未来なのか、荒廃した世界。そんな荒れた世界を、主人公である旅人はあてどもなく彷徨い、ある病院にたどり着きました。その「夕日が浜病院」では、旅先での話をするだけで、安値で寝泊まりさせてくれるんだとか。

夕焼け病まずは、実写の背景写真が目を惹きます。夕焼け空のシーンが多いのですが、夕焼け空の醸し出す「美しいがあっという間に消え去る」という切ない雰囲気が、作品の世界観にぴったり合っています。また、この作品ではあまり人物はシルエットにより描写されますが、これが非常に効果的です。

シルエットの立ち絵って、使い方を上手くやらないと逆効果にもなりがちなのですが(背景画像と合わずに雰囲気を壊したりとか)、今作は逆光の夕焼け空のシーンが多いため、シルエットが不自然ではないんですよね。真っ赤な夕焼け空に浮かぶシルエットは、美しくすらあります。特に、旅人とあさひが手を繋いでいるシーンは目を奪われます。そして夕焼け空が多いため、途中少しだけ出てくる青のなんと効果的な事か。「背景画像の色使い」も、立派に演出の一つなんだなと思わされました。

そんな夕焼け空の下で、旅人とヒロインのあさひが出会います。あさひは生まれつきの夕焼け病患者。夕焼け時にしか外に出られず、それ以外は厳重に遮光した部屋の中で過ごしています。2人はやがて毎日夕焼け時に浜辺で共に過ごすようになりました。最初のあさひは「何だこの子は?」という印象でしたが、徐々に可愛く描かれるようになっていきます。生まれつき外に出られなかった彼女が、旅人と出会う事で、初めて恋を知ったからかも知れませんね。そんな些細なあさひの変わっていく様子が、短い物語の中でよく描かれています。

そして後半。もうイベント前に「これ絶対あかんパターンや」と思っていたら、その通りの展開になってしまい(汗)、旅人の悔恨の想いが痛いほど伝わってくるラスト前。この作品、エンディングが全部で10種類あるのですが、1つを除いてどのエンディングも余韻たっぷりで、どれがベストとは決められないでしょう。旅人とあさひの辛い別れのシーンが胸に迫ります。脇役ですが、夕日が浜病院の院長もラストではいい役どころでした。どのエンドも、長く余韻が続く印象深い終わり方でした。

が、エンディングは10種類あるのですが、一部はエピローグが少し変わるだけのものもありルート分岐は地味です。それでいてエンディング分岐条件が分かりにくいものが多く、エンディング回収には少し苦労させられました(せめてルート分岐がもう少し派手なら、回収意欲が高まったのですが)。作者さんのサイトに攻略もあるので、そちらを参考にするものいいでしょう。

全10種類のエンディングのうち、エンド1がベストエンド、あるいはトゥルーエンドという位置付けと思われます。最初、ヒロインの名前があさひ(朝日)というのは、何とも皮肉なネーミングだなと思ったのですが、エンド1を見る事で、ヒロインの名前もが綺麗に展開に繋がり、その構成の見事さに感心しました。このエンド1は全部が綺麗に説明されている訳ではないのですが、終わり方に納得できない方は、全エンドを見終わった後、エンドリストを見てみてください。ささやかなおまけが見られ、エンド1の終わり方を補完してくれます。

恋愛ものとしては、2人が惹かれ合う過程の描写に少し弱さを感じますが、その分あさひが変化していく様子の描き方がよくできています。また、とにかく全体を一貫する空気感が素敵なんですよね。ピアノで統一されたBGM、抑えた文体など、その空気感を高める一因になっていると思います。

ツールはLive Makerです。上に書いたように、結構選択肢が多く攻略難易度は少し高め。作者さんの攻略を最初からあてにしてももちろんいいのですが、ある程度自分で色々試し、どうしても難しいものだけ攻略を見た方がいいと思います。スムーズに行けば1時間以内に全てのエンディングを見られるでしょう。立ち絵や一枚絵のない地味な作品でも、作り方によってはこれほど強い余韻を残してくれるんだなという、いい見本になる作品。是非プレイしてみてください。
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