第614回/この美しい世界の果てまで - きみの夢をみている(しおん) - 不思議系
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第614回/この美しい世界の果てまで - きみの夢をみている(しおん)

不思議系
  • comment0
  • trackback-

きみの夢をみている

きみの夢をみている準推薦
■制作者/しおん(ダウンロード
■ジャンル/夢と現の青春ノベル
■プレイ時間/2時間

高校生の主人公市川優人は、昔から眠りにつくたびに夢の中でアイリという少女と出会っていた。いつしか、夢でしか出会えないアイリの存在は優人の中で誰よりも大事な存在になっていた。そんな彼をいつも支える園田理子、そしてひょんな事から理子と仲良くなった孤独なクラスメイト立花秋穂。優人とアイリの忘れられない青春の物語。

ここが○

  • 登場人物の心情描写がよく描けている。
  • キャラクターの役割がはっきりしていて無駄なキャラがいない。
  • 程よくいろんなイベントが起こり、退屈させない。

ここが×

  • もう少し前半で伏線を活用しても良かったのでは。
  • 読み返しができず、強制スキップしかない。
  • 一人称の文章が、台詞なのか独白なのか分かりにくい。

■この美しい世界の果てまで

最近、少しずつスマートフォン用の縦長の画面のノベルゲームが出てきました。私自身はスマートフォンでノベルゲームはプレイせず、この作品もパソコンでプレイしましたので、縦長画面はあまりありがたくありませんが(縦長過ぎて、Parallels Desktopを全画面にしないと下が切れてしまうため)、スマートフォンで主にプレイする人には、スマートフォンで読みやすい縦長画面はいいかも知れませんね。

この作品は、少し不思議な要素のある学園青春物語です。スマートフォンをメインターゲットにした縦長画面の作品って、大抵短編が多いので、この作品もあまり長くないだろうと思っていたら、思いのほか長い作品でした。それだけでなく、結構本格的なマルチエンドです。作者さんの処女作のようですが、ノベル制作初挑戦でこれだけのものを作り上げるとはたいしたものだと思いました。

きみの夢をみている市川優人は高校生。いわゆる、人嫌いタイプの優等生です。そして子供の頃から、夢を見るたびにアイリという少女と出会い、今ではアイリの事が一番大事な存在になりました。そんな彼の周りには、いつも元気な園田理子がいて、彼を支えたり逆に迷惑をかけたりしています。この作品、実は男性の友人キャラクターが出てこないのですが、理子が幼馴染的ポジションと、友人キャラの役割を兼務していると言えましょう(理子は幼馴染という訳ではないのですが)。

この、理子のポジションがとても良かったと思います。通常、男性友人キャラがいないと、展開の中でどこか「ここは男性キャラが欲しいな」と感じる事があるのですが、この作品はそれがありませんでした。ひとえに理子のキャラクターメイキングと、優人との関わり方の上手さあればこそだと思います。

理子だけでなく、秋穂もいい立ち位置のキャラクターでした。初登場時はあまりイメージが良くなく、しかもイメージが良くない部分が主人公の優人と重なる部分もあったので、なおのこと「こんなキャラクターをどう動かすんだ?」と思ったほどなのですが、進むにつれてその印象は軽減し、意外な魅力を示してくれました。特に、理子と仲良くなって以降は、物語の中でも重要なポイントを占めているキャラクターでしたね。

反面、物語展開に目をやると、少し伏線不足なところが目につきました。伏線が物を言わないタイプのシナリオならばそれでもいいのですが、この作品は、実は様々な謎、秘密が隠されており、それが後半(ラスト近く)で一気に明かされる作りです。そもそも、アイリの存在が前半から大きな謎です。にも関わらず、伏線らしい伏線がほとんどなく、後半で秘密が明かされた時に、少々展開が出し抜けに感じてしまいました。全部の謎について伏線を張らずとも、せめてシナリオの核である、アイリの事については少し丁寧に描いてみても良かったのではないでしょうか(かつての優人とアイリの邂逅を回想で描くだけでも、かなり印象が変わったはずです)。

とは言え、主な登場人物が4人しかいない上に、イベントもそれほど突飛な物はないにも関わらず、決して短くはないプレイ時間を退屈させず、一気に読ませる手腕は大したものだと思います。キャラクター同士の掛け合いと、ほぼ学校内のイベントだけで(学園祭と、試験前の勉強会くらい? 理子の家でカレーを作るイベントも前半にはありましたが)、巧みな心情描写により、非常に「読ませる」物語となっています。文章力も上々です。

なお、ウィンドウの名前表示欄に、常に一人称の語り手であるキャラ名が表示されているため、口に出した言葉なのか、はたまた独白(所謂「地の文」)なのかが判別しにくい箇所も結構ありました。それと、文章読み返しができません。これだけでも結構痛いのですが(ティラノって、どうして他ツールでは当然のように実装されている読み返しができない作品がこうも多いのか)、既読文章スキップがなく、スキップは未読文章をも強制的にスキップします。マルチエンドの作品でこれはちょっとストレスの元です。

エンディングはアイリ、理子、秋穂の3種類で、選択肢は色々ありますが、恐らくラストの選択肢で分岐が決定すると思われます。どのラストも、得られるものの対価として何かを失う事になるのですが、失ったものの分まで幸せになって欲しいと思わずにはおれない終わり方でした。個人的には、理子エンドが一番綺麗だと思うのですが、これは好き好きでしょう。

ツールはティラノスクリプト。プレイ時間は全部のエンディングを見て2時間内外だと思います。2時間の作品としては、読み返しや既読スキップがないのはちょっと、と思ってしまいますが、少しの非日常要素を味付けにした学園ものとして、とてもよく出来ていると思います。立ち絵も上手くて可愛いですよ(画面が縦長なので、足元が切れてしまっているのはご愛嬌)。
関連記事

Comments 0

Leave a reply