第615回/貴方を信じてワンツーリターン - 僕らが歩む道(脳内詐欺) - 学園・青春
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第615回/貴方を信じてワンツーリターン - 僕らが歩む道(脳内詐欺)

学園・青春
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僕らが歩む道

僕らが歩む道■制作者/電脳詐欺(ダウンロード
■ジャンル/女子サッカーに賭けた青春ノベル
■プレイ時間/45分

事故により右手が使えなくなり、絵を諦めた高校生の春野守。彼の幼馴染宮野香月は、プロにスカウトされたほどの女子サッカー選手だった。最後の大会を前に、合宿が行われる事になり、守を始め香月の友人達も成り行きで合宿に参加する事に。しかし合宿での香月は何か悩みがあるようなのだが。女子サッカーをテーマにしたストレートな青春物語。

ここが○

  • 直球で王道な作りが気持ちいい。
  • 短い中でしっかり活躍している各キャラクター。
  • 特に守と香月の関係の描写が心地良い。

ここが×

  • 守の絵の要素を前半からもう少し出しても良かったのでは。
  • 誤字・脱字が多い。
  • 立ち絵が妙にぼやけている。

■貴方を信じてワンツーリターン

CHANGE!!」の作者さんの作品。この作品は、実は数年前に一度プレイしていました。が、一時期プレイしてもレビューを書く暇がなかった事があり(忙しくてプレイ後2週間もレビューを放置すると、結構忘れてしまいますからね)、この作品もその波に埋もれてしまったものと思われます。今回再読してみたところ、最近では珍しいタイプの直球勝負の青春もので、短いのですが楽しめる内容でしたので、改めてご紹介です。

主人公の春野守は、そろそろ受験が気になる高校3年生。彼はずっと絵に打ち込み続けて来たのですが、事故で右手が思うように動かなくなり、絵を断念せざるを得なくなりました。そして毎日守を起こしにくる幼馴染の宮野香月は、プロも注目する高校女子サッカーの選手。最後の大会が迫る前、プロのクラブチームからスカウトされ、プロ選手としての道へ進むかどうか悩んでいます。

僕らが歩む道この出だしからお分かりのように、典型的な幼馴染型の物語です。最近ではここまでベタな幼馴染タイプの物語はあまり見ませんが、この作品は最初から最後まで真っ向勝負の王道ストーリーで、いい意味のお約束感が気持ち良い読み心地を生んでくれています。ヒロインの香月は、お転婆なボクっ娘タイプ。主人公の守との距離感もいい感じです。

幼馴染ものでありがちなのですが、冒頭から極端に「こいつはただの幼馴染」というのを強調しすぎると、読み手がちょっと疲れてしまいます(「どうせ後半でくっつくんだろ」なんて思ってしまうのですよ(笑))。この作品は、守と香月の関係がとても見ていて微笑ましく、まずは序盤は好印象でした。

それは序盤の展開の上手さにも原因があると思います。早い段階で、香月はプロクラブチーム(なでしこリーグか?)のスカウトを受けます。この時点で守は、香月がプロ選手になれば今までのように一緒にいられなくなると気付きます。なので、「一緒にいるのが当たり前」でありながら、「一緒にいられる事の大切さ」を、早い段階で主人公が感じ取っているんですよね。これが全編を一貫して表現しているため、幼馴染ものにありがちな、奇妙な読み手の疎外感を感じる事が一切なく、純粋に2人を応援する気持ちで読めました。

ストーリーは特に捻ったところはありません。それがこの作品の良さでもあります。香月が、プロを目指すのだから結果を出さねばと焦る中、堺先生や友人達との交流で、仲間の大事さを知るという、誠に王道な展開です。しかしキャラクターの使い方、性格付けが良く、大変楽しく読む事ができます。さほど長いとは言えない展開の中、きちんと起伏も盛り込まれています。

とは言え、もう少し変化球を投げてみても良かったような気もします。特に、ラスト近くで守の絵の要素が絡んでくるのですが、これについてはもう少し重点的に扱ってみても良かったのではないでしょうか。この作品の良さである、奇を衒わない王道的な作りを損なう事なく、物語がもっと重厚さを増した気がします。守と父親の確執なども、さらっと流されるだけだったので、ちょっと勿体無いように思いました。

ラストはもっと盛り上げてもいいのではないかと思ったのですが、意外なほどあっさりと終わります。しかし、作中で呈示された問題はほぼ解決しており、守も目標を持って新しい道へ進んでいますので、「将来に希望を含みに残した大団円」と言えるでしょう。守は、大変な事故で夢を絶たれたにも関わらず、厭世的になったり皮肉っぽくなったりせずに前向きに香月を支えるとてもいい主人公でした。この作品の、読んだ時の「気持ち良さ」は、ほぼ主人公の守に由来すると思います。改めて、主人公のキャラクターメイキングって大事だなと思わされました。

気になった点ですが、やけに誤字・脱字が多いです。文章が途中で切れていたり、謎な文章があったりもしました。それと、立ち絵が拡大して作られているのか、何故かぼやけているのも、気になる人は気になるかも知れません。なお、主要な登場人物はみんな喋ります。音声に限りませんが、プレイ環境は物凄く細かい設定が可能ですので、ストレスがたまる事は恐らくないでしょう。

ツールは(多分)YU-RISです。このツールは、痒いところに手が届く設定など、数あるツールの中では最も快適にプレイできるものの1つだと思います。選択肢はなしで、プレイ時間は45分くらいですが、音声をじっくり聞けばその倍くらいはかかるかも知れません。あっと驚くどんでん返しが好きな人や、鬱展開が好きな人だと拍子抜けするような内容かも知れませんが、こういう作品をプレイすると、「最強の変化球は実はストレート」なのかも知れないと思ってしまいました。
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