第617回/奇跡の笑顔が浮かぶ時 - ななしのかかし(未来技術製作所(仮)) - シリアス・感動系
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第617回/奇跡の笑顔が浮かぶ時 - ななしのかかし(未来技術製作所(仮))

シリアス・感動系
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ななしのかかし

ななしのかかし準推薦
■制作者/未来技術製作所(仮)(ダウンロード
■ジャンル/夏の田舎思い出回想ノベル
■プレイ時間/40分

小学生の奈々香は、一学期の成績が良かったご褒美に、夏休みに母の田舎へと連れてきてもらった。いつも出会う案山子が、田舎の夏の楽しみだったのだ。そこでたまたまクラスメイトの陽子、更に陽子の母親季紗と出会う。夏祭りに出かけた夜、肝試しの途中で奈々香は迷子になってしまうのだが。凝った演出で送る、一夏の思い出の物語。

ここが○

  • 凝った演出が雰囲気を盛り上げる。
  • その演出が手伝って、定番のテーマながら盛り上がるラスト。
  • ラストシーンを生かすための仕込みが巧妙。

ここが×

  • タイトル画面など、演出が凝りすぎていると感じる場面も。
  • 文章があまりにくどすぎる。
  • 無理に漢字を使いすぎている気がする。

■奇跡の笑顔が浮かぶ時

前回に引き続き、これまた少し古めの作品。登場は2008年ですが、古さを感じさせない力を持った作品です。「ななしのかかし」と言うタイトルも面白いですね。舞台はフリーノベルゲームでは定番の、「夏に田舎に帰省」ものです。更に、「回想タイプ」の物語。回想タイプの物語の場合、序盤が現在、中盤で過去、ラストで現在に戻るという「サンドウィッチタイプ」と、前半が過去、後半が現在というタイプがありますが、この作品の場合は後者です。

もう一つ、物語の分類として伏線や謎を効果的に利用し「展開で楽しませるタイプ」と、演出や会話を活用して「場面で感動させるタイプ」があるとすれば、この作品は間違いなく後者。巧妙な伏線や意外な展開で驚くような物語ではないのですが、とにかく演出が効いており、後半へ向かっての物語の盛り上げ方が上手い作品です。

ななしのかかし竣工の奈々香(七篠奈々香という名前が(笑))は、小学生。冒頭は奈々香と友人の陽子とのやり取りから始まります。夏休み前に帰ってきた一学期の通知表で好成績をとり、母親の実家に連れて行ってもらう事になりました。母親の実家は大変な田舎なのですが、田んぼに立っている案山子に毎年会えるのが、奈々香は楽しみだったのです。そうして訪れた実家で、何故か陽子の母である季紗、続いて陽子にも遭遇します。

この作品は、「思い出探し」という感じの物語。奈々香と田んぼで孤独に立っている案山子との交流を描いています。言ってみればよくあるタイプのストーリーです。しかし、この作品は演出が大変優れています。それは、例えば雨が降るエフェクトが入ったり、効果的に動画を使ったりなどの、見た目の演出はもちろんですが、ある場面を効果的に使うための仕込みが大変上手く、ありがちと言えばありがちなシナリオを、何倍にも強力にしてくれています。

伏線が物を言うタイプのシナリオではないのですが、そう言う意味で「展開伏線ではなく状況伏線」を非常に巧みに活用する作品という印象でした。中盤での奈々香と案山子の一方通行のやり取り、そして一方通行かと思いきや、後半大人になった奈々香と案山子の奇跡の再会、奈々香が送ったプレゼントの上手い使い方など、全てラストを効果的に盛り上げるために、計算して組まれている事がうかがえます。

この手の作品だと、どうしても奇跡や超常現象に頼る展開になりがちなのですが、常識はずれの展開を起こす事なく、奈々香と案山子の交流を見事に描きあげているのが凄いと思いました。もちろん、奇跡や超常現象も上手く使えば効果的ですが、この作品の場合はそれをしなかったからこそ、ラストの感動があったのではないかと思うのです。

反面、文章はあまりにくどく、ちょっと参ってしまいました。捻った言い回しや体言止め、倒置法が非常に多く、途中で胃にもたれて来るんですよね。気障な一言は、ここぞという時に発するからこそ効くのであって、いつも使っていると痛い人になってしまいます。文章でも、凝った修辞法をこうも最初から最後まで連発されると、効果が薄まるばかりか、読み手を疲れさせてしまいます。また、しばしばこの作品を音楽(組曲)に例えた文章が挿入されますが、「第九の呪い」なんて、クラシック音楽にある程度詳しくないと意味不明です。音楽をテーマにした作品ならまだしも、ちょっと「工夫に溺れた」感を感じてしまいました。

あとは「唯」(ただ)「是」(これ)など、「これは平仮名で書いた方がいいのでは……?」と感じる言葉遣いも見られました。そういう言葉遣いが似合う時代・舞台設定ならいいんですが、そのような雰囲気の物語でもないですし。夏の田舎の物語ですから、文章や漢字の綴り方も、もっと素朴な方が似合っていたように、個人的には思いました。

立ち絵や一枚絵は、アニメ風というより劇画チックな、リアル志向の絵です。フリーノベルゲームでこういう絵はあまり見ないですね。好みが分かれる絵柄かも知れませんが、特に大人キャラクターは色気があり、個人的には気に入りました。後半の立ち絵は、「あの子達がこんな風に成長したなんて!」と、違う意味で楽しめます(笑)。上で書いたように、ラストシーンを生かすような仕込みが随所になされているので、最後のシーンは非常に心を揺さぶられる事でしょう。

ツールはLive Makerです。選択肢はなく、プレイ時間は40分くらいです。演出が優れた作品ですが、流石にタイトル画面のボタンがぐるぐる回転しているのはやり過ぎのような気もしました(見にくい!(笑))。とは言え、とても10年以上も前の作品とは思えないところが随所に見られ、最近ノベルゲームをプレイし始めた方にもお薦めですよ。
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