第619回/罪を照らしだす命の光 - 贖罪と命(神無月ミズハ) - シリアス・感動系
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第619回/罪を照らしだす命の光 - 贖罪と命(神無月ミズハ)

シリアス・感動系
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贖罪と命

贖罪と命■制作者/神無月ミズハ(ダウンロード
■ジャンル/生と死を見つめる贖罪ノベル
■プレイ時間/1時間

主人公は、14歳の時に意図せずに自分の弟を殺してしまった。しかし彼が弟を殺した事は誰にも知られずに、彼は罪の意識を背負ったまま生き続ける事になる。どこか歪んだ彼の生と死に対する思いと、彼の思いを形成するに至った幼少期の体験。それらが手記形式で回想録として綴られる、独特の物語。

ここが○

  • 文章力が高くて読み応えあり。
  • 読み込む事で少しずつテーマに迫れる深い内容。
  • 描写力も高い。

ここが×

  • 読みにく過ぎる。
  • エンターテインメント性は一切ない。
  • 文章力が高いだけに、誤用が気になった。

■罪を照らしだす命の光

今まで600以上の作品をレビューし、プレイした作品は千数百本にも及ぶと思いますが、その中でもかなり難解な作品です。この作品をレビューするに当たり、1回読了しただけでは私も当惑するばかりで何が何だか分からず、合計3回読みました。それでも理解し切れたとは言い難いのですが、回らぬ筆でもって頑張ってレビューしてみる次第です。私の理解力不足から、十分な考察ができていないと思われまずが、ご了承ください。

この作品は、主人公の手記という形で展開します。主人公は14歳の時に、自分の弟を殺してしまったのですが(そのシーンは冒頭で描かれます)、その事は警察を始め誰にも知られず、彼は弟を殺したという事実を心の奥にしまいこんで生きていく事になります。この出だしで、もう既にどろどろ、真っ黒けです(笑)。

贖罪と命まずいきなり難点ですが、この作品はあまりにも読み辛いです。一文が長いにも関わらず、一行の文字数が多く、文字サイズも小さいので、どうしたって視線移動距離が長くなり、だんだん疲れてきます。改行も少ないので、しばしば画面が文字で埋め尽くされる事に。一文が長く、一度に読ませるべき文章量が多いのはこの作品のスタイルですから、それはそれでいいのですが、もう少し読みやすくする工夫があればと思いました。

さて、冒頭で殺人を犯してしまった主人公。彼は終始、どこか死を願い、死に憧れるようなところが見られます。それは、単に弟殺しの罪の意識に苦しんで、贖罪のつもりで死を願っているという見方もできるでしょうが、私の見解は少し異なります。冒頭のシーンの後、過去回想が描かれるのですが、そこで主人公は継父と実母から酷い暴力を受けます。暴力だけでなく、「お前は生きるに値しない」という言葉も頻繁に投げかけられます。

そのような言葉を日常的に受け続け、死ぬような暴力を日々振るわれてきた主人公は、いつしか、自分は生きるに値せず、また生きる事は苦しい事、価値のない事であり、自分の自然な姿は死なのである、と思うに至ったのではないかと私は感じました。作中、生き物を軽々しく殺す主人公の姿が何度か描写されますが、これは主人公がそう感じていた事の象徴なのかなと思ったりしました。主人公は、取り立てて残酷だった訳ではなく、それが自然な行為だったのです。

なので、主人公は何度か自分で命を絶とうとします。が、その度に不思議にも生に執着している自分を発見するのです。無意識のうちに死を遠ざけようとする自分に呆然とする主人公。これはなかなか不思議な描写でした。よくある、「辛いから自殺します」というタイプの物語とは、全く違った方向性から生と死の問題をせめて来ており、この辺りは大変新鮮に読めました。

そして後半。佳奈との生活、佳奈の明るい生き方を見て、主人公は恐らく光に照らされて影が浮かび上がるように、自分の影を思い知ったのではないでしょうか。それは、単に罪の意識どうこうではなく、「死は願わしいものなどではない。むしろ生きる事こそが自然なのだ」と。だからこそあの告白シーンになったのではないかと、三度目に読んだ時に感じました。ここに気付いたから、その後自首という展開に繋がったのではないかと思ったのです。それまでの彼は、罪の意識を自覚しているつもりで、本当のところは何が罪なのか理解できていなかったのかも知れません。

それを、佳奈が初めて照らしてくれた。生きる事は苦しみに満ちている。その苦しい人生を血を吐いて生きる事こそが、自分の贖罪なのだと気付いたのではないかと。ですから、ラストで自首という、彼にとっても得心がいった本当の贖罪に繋がり、そこで物語が終わったのではないかと感じました。このように書いてみると、一度目に読んだ時は皆目理解できないように思えたこの作品が、実は意外とシンプルな構造をしているのかも、などと今は思っています(私が読み込めていないだけの可能性が大きいですが(笑))。

文章力は高いです。高い故に、いくつか誤用が目について気になりました。「意趣返し」(ああいう状況で使う言葉ではないのでは)「なし崩し」(これはまあ、みんな誤用してますよね(笑))「放蕩」(カエルが女遊びもしないでしょうし、「放浪」の方が合っているのでは)などです。いかにもゲームらしい、口語文主体の作品ならば気にならないかも知れないのですが、何せ物語の体裁が「手記」ですから、ここは少し違和感を感じました。

ツールはティラノスクリプトです。プレイ時間は当たり前の速度で読めば1時間ですが、1時間で1回読んでよく分かった、となる人もあまりいないかも知れません。エンターテインメント性は全くありませんし、何せ読みにくいのですが、高い文章力と、考察したくなるような深い内容は、味わってみる価値があると思います。時間がある時に、ゆっくり読んでみてください。
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