第622回/さあ見せて、愉快な夢 - 眠り姫と鯨の話(mame゜) - ファンタジー
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第622回/さあ見せて、愉快な夢 - 眠り姫と鯨の話(mame゜)

ファンタジー
  • comment0
  • trackback-

眠り姫と鯨の話

眠り姫と鯨の話■制作者/mame゜(ダウンロード
■ジャンル/継母と鯨のお姫様解放ノベル
■プレイ時間/20分

オーロラ姫は、継母のマレフィアントにいつも虐められていた。誕生日が近いある日もいつものようなやり取りをした後、失意のオーロラはお気に入りの場所である浜辺へやって来て眠り込んでしまった。そこで出会ったラキという名前の少年。ラキは、オーロラに同情し、自分の家に来てはと提案した。絵が可愛らしい、童話風のファンタジー。

ここが○

  • 超短編ながらしっかり作られた分岐。
  • 絵が可愛らしく雰囲気十分。
  • 読後感の良いハッピーエンド。

ここが×

  • 字が小さすぎて読み辛い。
  • 一部の背景画像に少し違和感。
  • ラキの秘密について、もう少し伏線を張っても良かったのでは。

■さあ見せて、愉快な夢

童話風の作品って時々出会いますが、普通の日常ものや一般的なファンタジーとは違う味があって面白いものです。最近では「ガラス姫」「騎士の恩返し」がありましたね。童話には童話なりの「お約束」がありますから、それを上手く活かせば、通常のファンタジーとは一風違ったテイストを出せる訳で、これはこれで立派な一つのジャンルなのではないでしょうか。

この作品は、主人公がお姫様で、意地悪な継母に虐められるという、正に童話の設定で始まります。主人公のオーロラにはリアという優しい母親(女王)がいたのですが、ある日突然行方不明になってしまい、その後父王はマレフィセントという女性を娶りました。このマレフィセントがいつもいつもオーロラに非常に辛く当たるのです。いかにも童話という出だしですよね。

眠り姫と鯨の話まず、独特の絵柄が大変印象的です。頭が大きく、目がしっかりと描かれた、デフォルメが利いた絵です。ディズニーとは全く違う絵柄ですが、頭身や頭の大きさのバランスなどから、ディズニーを少し思わせる雰囲気を持っていると感じました。そしてこれが作品のムードにぴったり合っています。こういう作品に、流行のアニメ絵とか、逆にあまりにリアルな絵がついていたとしたら、少々ミスマッチですからね。

逆に、一部の背景画像が少し作品世界に合っていないように感じました。童話のような世界観なのに、電線が写っている写真があったんですよ。まあ、ファンタジーや童話系の作品は、架空の世界観であることが多いですから、背景画像を揃えるのも結構大変ですから仕方ない面はあるのですが、電線が見えたシーンは若干ずっこけてしまいました(笑)。それと、文字サイズがかなり小さく、読み辛いです。もう少し大きくても良かったのではないでしょうか。

さて、この作品は画面構成が独特です。オーロラに関する文章は画面下部のウィンドウで表示されますが、オーロラ以外の登場人物の台詞は、縦長の別ウィンドウで表示されるのです。これは面白い効果をあげており、なるほどこういう演出もありだなと思わされました。ただ、縦長ウィンドウが出ると、通常ウィンドウの時は表示されている、下部の「SAVE」「SKIP」等のボタンが消えてしまうのは、少し不便でもありました。また、選択肢の出現の仕方も面白いですね。フォントもそこだけ違うものを使っており、これだけで、この作品ならではの雰囲気を確立させるほどの効果がありました。

物語は、オーロラとラキを主体に進み、後半のオーロラの誕生パーティへ進んでいきます。ここはなかなか緊迫感のあるシーンです。そして、ここで隠された真実が明らかになる件は、よく考えてあるなと思いました。短い物語なのに、ちゃんと前半の伏線が後半で回収され、謎が明かされ、ハッピーエンドになるという流れが作られているのです。短編なのに、起承転結にしっかり気を配って作られているところに好感を持ちました。

ただ、ラキの秘密については、もちろん作中でそれを示唆するイベントがちゃんとあるにはあるのですが、物語の一番大事なところに関わる秘密なのですから、もう少ししっかり伏線を描写しても良かったのではないでしょうか。まあ、この短さで、ペンダント云々の秘密もありますし、そこはバランスが難しいところなのかも知れませんが、ここにはもう一押しが欲しかったように感じました。

選択肢で4種類のルートに分岐するのですが、分岐はしっかり作られています。うち1つは、物凄いヤンデレエンドで、ちょっと作品世界にそぐわないような印象も受けましたが、バラエティ豊かな分岐で読者を楽しませるという意味では、ありかも知れません。4つのエンディングは、ハッピー、ノーマル、バッド、ヤンデレという感じです。どれも味わい深く、短編分岐ノベルとして非常にしっかり作られていると思います。ハッピーエンドの読後感の良さはもちろん素敵ですが、ノーマルエンドのラキが見せる寂しさ、そしてバッドエンドのやるせなさも味わう価値があります。

ツールはLive Makerです。選択肢は数カ所ありますが、さほど攻略は難しくありません。順番に全部選んでいれば、簡単に全部のエンディングを見られるでしょう。20分という短いプレイ時間なのですが、演出やユーザーインターフェイス、分岐の作り方など、非常に手をかけていることがうかがえる一作です。ヤンデレエンドとハッピーエンドの落差の凄さも魅力ですので(笑)、是非気軽に読んでみてください。
関連記事

Comments 0

Leave a reply