第623回/この真相、白か黒か - 黒白の夜(Unreality) - ミステリー・サスペンス
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第623回/この真相、白か黒か - 黒白の夜(Unreality)

ミステリー・サスペンス
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黒白の夜

黒白の夜準推薦
■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/仮想空間学園ミステリーノベル
■プレイ時間/40分

カオルを始めとするメンバーは、家にいたはずなのに、目が覚めた時にはみんな揃って学校の屋上にいた。そこにいた女性フラウは、自分の出す謎を解ければこの世界から帰してやるという。だが、解けない時に待っているのは死。解ければ、逆にこの世界を作ったゲームマスターに死が待っている。ゲーム内ゲームという形式が独特なミステリー。

ここが○

  • 絵がいきなり上達していて驚いた。
  • 叙述トリックと物理トリックを組み合わせた、作者さんお得意の凝った構成。
  • 設定も凝っており、短編だが読み応え十分。

ここが×

  • 一部の設定は説明が不十分。
  • 若干反則気味な気もするトリック。
  • カオルの特殊能力にあまり必要性がないような。

■この真相、白か黒か

永遠の紡ぎ」「イミテーション・フラワー」の作者さんの最新作です。この作者さんの作品を取り上げるのはこれで8作品目。気付けば、NaGISA netで最も多くの作品をレビューしている作者さんになりました。今回も、この作者さんらしい持ち味は健在。プレイ時間は短いのですが、かなり濃厚な物語を楽しめます。最近はタイトルがやたら長い文章形式のものが多い中、シンプルで印象に残る作品名は、逆に目を惹きます。

まず起動して驚いたのは、以前に比べて絵が格段に上達していたことです。色使いも、以前は彩度の高い原色系の色が多かったのですが、抑えめの色が増えており、目に優しくなりました。1人で作っている作者さんで、こうも短期間に絵が劇的に上達した例を、ほとんど見たことがありません。作者さんのたゆまぬ努力に、恐れ入りました。

黒白の夜さてこの物語は短編なのですが、物語の構造や設定はかなり複雑です。主人公のカオルは、学園祭が終わった後に学校の屋上で、妹のサキと会話をしているのですが、その会話の最中、突然サキがカオルに対して告白します。「??」と思っていたら、今度は場面がいきなり変わります。場所は同じく学校の屋上に見え、カオルやサキを含め仲間たちが全員集まっているのですが、これは一種の仮想世界。

そこにフラウという謎の女性が現れます。フラウはゲームマスターに依頼されて全員をこの仮想世界に招いた張本人です。そしてゲームマスターが作った謎(ノベルゲーム)を解ければここから出してくれるが、解けなければ全員死ぬことになると言います。逆に謎が解ければ、ゲームマスターの1人を除いた全員がここから出られます。この辺のゲームマスター云々の設定は、明確な説明がなかったので、最後まで読んでも少しすっきりしなかったのですが、そういうものだと納得して読み進めましょう。

そして、中盤からミステリーノベルパートに入ります。ゲーム内で更にゲームをやるという感じですね(フラウがカオル達の脳内に直接見せているのでしょうか?)。ノベルパートでは、登場人物は共通なのですが、一部の設定が変わっていたりするというのがややこしい。また、ゲームならではと言える叙述トリックもあるのですが、メインの謎ならともかく、ミステリーで前提条件の提示なしにこれを使うのは、若干反則気味な気がしなくも(笑)。これが、「白い殺意」のように、犯人及びトリックを自力で入力するタイプだとしたら、絶対に私には解けなかったと思います。

ですがご安心ください。この作品では、「物語の先が何故か読める」という妙な特殊能力があるカオルが、快刀乱麻を断つごとく、ずばずば謎を解いてくれます。謎を解く時のポーズが、何だか金田一少年っぽいです(上の画面写真)。カオルが謎を解く以前に2つの回答をみんなで考えるのですが、そちらは私も割と考える可能性でした。が、カオルが提示した真相は「これは特殊能力がないと解けないよね」というほど、鮮やかで凝った解決法でした(ただ、カオルの推理でも疑問が残る点が。あの推理だとサキ&アキは本当は死んでないという事になり、フラウの第2のヒントを満たしていないような気が。もしかして、現実の設定同様にサキ&アキ、アキの2人ということなのでしょうか)。

ただ、特殊能力だからこそという鮮やかさは感じるものの、カオルの特殊能力は、展開上ではそれほど必然性がないような気もしました。別に正当な方法で推理しても、物語としては成り立ったのではないかと。あの特殊能力を設定に入れるなら、解決だけに使うのではなく、もう一度どこかで使ってみれば、存在感が増したかも知れません。

そしてラストで明かされる驚きの事実。なるほどそういう落ちの付け方をするのかと。見事な幕引きでした。もう少し、現実世界に於ける設定に前半から言及があっても良かった気はするのですが、この短編であまりそれをやり過ぎると、そこだけ妙に浮き上がってしまいますし、くどくなります。フラウの存在やゲームマスター云々の件などと合わせて、あれくらいさらりと流すくらいが、案外ちょうどいいのかも知れません。推理ものとしては、少し釈然としないものが残ったのですが、全体の仕掛けの作り方に感心しました。

ツールはティラノスクリプトです。ミステリーなのですが選択肢は一切ない一本道です。プレイ時間は40分くらいです。この作者さんの作品では私はよくやることなのですが、一度読み終えた後に、すぐ二度目を読みました。二度読むと、一度目では気付かなかったところに気付けて、違う視点で楽しめると思います。この作者さんらしい、凝った構成とトリックが味わえる短編ミステリーでした。
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