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第625回/僕の背中に、すれ違った君 - すれ違ってから(茶飯屋本店)

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すれ違ってから

625.jpg準推薦
■制作者/茶飯屋本店(ダウンロード
■ジャンル/異世界少女と休日ノベル
■プレイ時間/30分

二階堂涼太は高校生。仲の良い友人と毎日楽しく過ごしていたが、幼馴染の白鷺里沙とは疎遠になっていた。それを寂しく感じながら、両親が旅行で留守にする連休、存分羽を伸ばそうと思っていた涼太のところへ、サリーと名乗る少女が突然押しかけてきた。異世界から来たというサリーは、明日死ぬ運命にある涼太を守るというが。上手い設定の短編物語。

ここが○

  • 真実を隠す物語の方向性提示が上手い。
  • 高校生の揺れる気持ちがよく描写されている。
  • しっかりした掴みと起承転結。

ここが×

  • 少々突飛過ぎる気もするサリーの行動
  • サリーとのやり取りにもう少しバラエティがあっても。
  • 友人に名前つけてあげても良かったのでは(笑)。

■僕の背中に、すれ違った君

短編の学園ものですが、学園はあまり舞台になりませんので、何と表現しましょうか。冒頭だけ見れば典型的なボーイミーツガールにも見えますが、それも適切とは思われません(最後まで読めば、その理由が分かるでしょう)。プレイすれば分かる事ですが、この作品の展開は、よくあるようでいて意外と似た作品が思いつきません。

冒頭は、主人公の高校生二階堂涼太と友人の、教室での他愛のない会話から始まります。会話の内容がなかなかお馬鹿です(笑)。そんな様子を離れて見ている、やはりクラスメイトの白鷺里沙。涼太と里沙は実は幼馴染なのですが、中学生の頃からめっきり疎遠になり、ほとんど会話する事もなくなりました。そして土曜日の朝に涼太の両親が旅行で出かける事に。良太は思う存分羽を伸ばせると思っていたのですが、そこに突然謎の少女、サリーが現れます。

625b.jpgサリーは異世界からやってきたといい、更に明日の日曜日にもし出かけたら、涼太は死んでしまうと宣言し、涼太を守るためにやって来たと言います。かくて、サリーと束の間の同居生活が始まったのでした。異世界からやって来た少女が、死んでしまう運命にある相手を守るという設定自体は、他の作品にも見られるように、特に新しいというほどではありません。

が、この作品で面白いのは、いかにも異世界少女ものと思わせておいて、それは単なる隠れ蓑に過ぎないという構成です。サリーの謎については、わざわざ隠そうとしていないためか、先読みをしようと思えば簡単に読むことができるでしょう。しかし多くの作品で、先が読めた場合は少し興ざめする場合もあるのに対し、この作品の場合はサリーの正体が仮に途中で分かっても、面白さを減じることがほとんどありません。

それは、仮にサリーの正体が分かったとしても、「だとしたらどうしてこんな真似を?」とか「それにしても性格違いすぎでは」などの、新しい謎が生まれてくるからです。逆に、サリーの正体が分からなければ、それはそれでラストでのどんでん返しを楽しむことができます。そういう意味で、よくあるパターンのように思えて、実はとてもよく考えて作られている物語であると言えましょう。

とは言え、サリーの行動はその正体を知ってから振り返るとかなり突飛で、何らかの伏線、前振りがあっても良かったような気がします。謎を提示するという意味では効果を落とす結果になるでしょうが、上で書いたように、この作品の物語構成は、サリーの正体が分かったからと言って、面白くなくなるというものでもありませんし。そこには若干の戸惑いを覚えました。前半で、もう少し里沙の心情がうかがえるような描写でもあれば、突拍子のなさが和らいだかも知れません。

涼太とサリーのやり取りは、ゲーム内の時間にしてわずか1日半ではありますが、軽妙で楽しく、また思春期の少年少女らしい気持ちの揺れもうかがえて面白いです。もう少し色々なイベントがあっても良かった気はするのですが、冒頭の設定により、2人で外出するという展開は無理ですから、あれくらいが限度でしょうね。あるいは、自宅の近くを少し散歩した結果、危険な目にあって……などという変化球の展開があっても面白かったかも知れません。

ラストでは、涼太自らが動くところが好印象でした。友人(最後まで名無し。彼にも名前をつけてあげれば良かったのに(笑))に対する一言も男らしいところを見せてくれます。途中までの涼太とサリーの日常シーンは、それだけとれば平凡で、そのまま終わってしまったのではなんてことなかったのですが、それを受けて持って来たラストがよくできていました。この落差がこの作品の魅力だと思います。短編ながら、序盤でしっかり掴み、起承転結がきちんと決まっていましたね。

ツールはティラノスクリプト(ビルダー)です。選択肢のない一本道で、プレイ時間は30分程度でしょう。立ち絵や一枚絵が可愛らしく、見ていても楽しめます。構成の上手さと、心情描写のリアリティが光る作品でした。短編学園日常物語の佳作だと思います。絵の可愛さに惹かれた方は、是非プレイしてみてください。
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