第626回/二人が出会って、不幸が生まれた - 10月32日のハロウィン(灰色) - ファンタジー
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第626回/二人が出会って、不幸が生まれた - 10月32日のハロウィン(灰色)

ファンタジー
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10月32日のハロウィン

10月32日のハロウィン準推薦
■制作者/灰色(ダウンロード
■ジャンル/ハロウィンに魂と邂逅ノベル
■プレイ時間/20分

お化けが徘徊するハロウィンの日。魂を回収するお化けのキュルビスは、魂の記憶を見るという能力を持っていた。キュルビスがその日出会った魂の記憶を見てみると、どうやらその魂は、生きていた頃キュルビスと何やら関係があったようなのだが。出だしはメルヘン、進むとダーク、そしてラストはちょっとだけしんみり、でもやっぱりダークな短編物語。

ここが○

  • ダークだが、ダークさを感じさせないノリ。
  • 大量の一枚絵を使った演出。
  • 暗い話なのに、ある種のカタルシスを感じられるラスト。

ここが×

  • とは言えやはり基本は暗くて重いので読み手を選ぶ。
  • 加えてインモラルなので苦手な人は受け付けないかも。
  • ハロウィンがあまり関係ないような。

■二人が出会って、不幸が生まれた

罪咎オペレッタ」「電波男はお呼びじゃない!」の作者さんの新作です。前作「電波男」は、登場人物に癖はあるものの、明るい雰囲気のラブコメでしたが、この作品はまた本来の(?)作風に戻った感じで、ダークで陰鬱な物語です。とは言え、グラフィックスや主人公キュルビスの言動などが、ダークさをかなり軽減してくれています。

この独特の作風は、この作者さんの大きな個性だと思います。「罪咎オペレッタ」もかなりダークで救いようのない物語なのですが、語り口がそれをあまり感じさせません。ですから、陰鬱でネガティブな部分よりも、物語のストーリーそれ自体を純粋に楽しませてくれるのです。私自身も、こういう陰鬱な物語は、好みかと言われれば全然好みではないのですが、そういう訳でこの作品は楽しんでプレイできました。

10月32日のハロウィン冒頭は、主人公のキュルビスが街を歩き、ある魂と出会うところから始まります。このキュルビス、見た目は可愛いですが実はお化けで、魂を回収する役割があるのですが、魂の記憶を見る事ができるという特技があります。そして出会った魂の記憶を見てみると……という展開です。キュルビスの喋り方が妙に舌足らずで、最初はどういうことかと思うのですが、ちゃんと理由があります。

そして、キュルビスが魂の記憶を見るという展開ですから、過去回想と現在が頻繁に入れ替わるのですが、過去回想は基本的にモノクロームの線画で進みますので、さほど混乱することはないでしょう。何よりこの線画がとても雰囲気を高めています。かなりインモラルな描写もされますが、文章でも絵でも、そこまでどぎつい描き方はされていませんので、あまり心配はありません。

とは言え道徳に反している事に違いはないので、苦手な人は苦手だと思います。私もあまり得意という訳ではありませんし。ですが、上にも書いたような理由もあって、そこまで痛ましい印象はありません。むしろ、独特の演出とキュルビスの語り口調もあって、「悲しみの中の滑稽さ」すら感じさせます。これを狙ってやったのであれば、凄いセンスだと思いました。

後半は、序盤で提示された謎が1つ1つ丁寧に解きほぐされていきます。謎が解きほぐされた結果、誰も幸せにならないのがこの作者さんらしいのですが(笑)、それでもそこまで後味が絶望的に悪いという訳ではありません。なぜかと考えてみますと、例えば悪人と善人が出会って、善人が不幸になったとしたら、それは当然読後感が悪くなります。

が、この作品の場合は(「罪咎オペレッタ」もそうでしたが)、「悪人と悪人(ディートリントを悪人というのはちょっと語弊がありますが、彼女にも大きな問題がありこの事件の大きな要因であることには間違い無いですから)が出会って、どちらも不幸になった」のです。これは「悪が当然の報いを受けた」のですから、当然の帰結であり、そこにはある種のカタルシスが感じられる訳ですね。

とは言え、カタルシスとは言っても「負の方向」であるため、単に救いようの無いラストになったのではやはりどこか後味の悪さが感じられるものですが(「罪咎」がそうでした)、この作品の場合は、上手い具合に謎を散りばめ、それがだんだん解けて行きという、最後には回想の意味が明らかになり、登場人物が全部線で繋がるという、「読者にとっての正の方向のカタルシス」をきちんと感じられるところに、この作品の面白いところがあるように感じました。

「悪と悪が出会ってどちらも不幸になった」と書きましたが、そう考えると何の罪もないキュルビスは可愛そうです。が、そのキュルビスを前面に押したてて、あのような無邪気な振る舞いをさせたところが、ある意味ではこの作品のわずかな救いであり、逆にこの作品の一番「怖さ」を感じさせるところでもあります。最後まで読んで、なんだかハロウィンがあまり関係ないような気もしましたが(笑)。

ツールはティラノスクリプト。読了後はおまけも読めます。おまけまで含めて20分くらいで、選択肢はありません。後味が悪い物語であることには変わりありません。後半で明らかになる事実も、決して気持ちがいいものではありませんので、見た目で何だか童話風のお話だと思って手を出すと、大火傷する人が無いとも限りませんので、ご注意ください。ですが、この独自の味付けは、一度味わってみる価値が大いにありますよ。
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