第627回/想いは星の海を越えて - Stella Cielo(Wherever) - SF
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第627回/想いは星の海を越えて - Stella Cielo(Wherever)

SF
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Stella Cielo

Stella Cielo■制作者/Wherever(ダウンロード
■ジャンル/星を巡る英雄ノベル
■プレイ時間/7時間

星が好きだが学校はサボりがちの少年ロランの家に、ある日ロケットが落ちてきた。ロケットから現れた少女ミナにより、ロランはアレイディアと言う惑星に連れて行かれてしまう。太陽がないアレイディアには、未曾有の危機が迫っているらしい。ロランはその危機を救うための「英雄」として選ばれたのだというのだが。壮大なSFファンタジー大作。

ここが○

  • 凝った設定と壮大なストーリー。
  • 綺麗な一枚絵。美しいオープニング、エンディング。
  • 地の文がないためテンポよく読める。

ここが×

  • 地の文がないため心情描写が弱く、分かりにくさを感じる場面も。
  • ロランが今風の言葉を使いすぎて、違和感。
  • 後半は大変な状況にも関わらず、緊迫感があまり伝わってこない。

■想いは星の海を越えて

ここのところ、短い作品が続いていました。もちろん短編には、気軽に読めるというメリットがありますが、やはり時にはしっかりとした長編も読んでみたくなります。この作品は、ふりーむの作者さんの解説ページによると、プレイ時間が3時間と書かれていましたので、3時間なら土日で読むのにちょうどいいだろうと思って読み始めました。

……が、とても3時間で読めるような長さではありません。私は読むのが早い方ですが、それでも6時間半くらいはかかりました。普通の速度ならば、8時間くらいはかかってもおかしくないでしょう。プレイ時間の情報って、大抵実際よりも長めに書かれている事が多いのですが(私が読むのが早いせいもありますけど)、実プレイ時間と倍も違うのは、ちょっと参ってしまいました。

Stella Cielo気を取り直して作品の紹介を。この作品は、SFとファンタジーを融合させた、面白い世界観です。どちらかと言えばSF寄りだと思いますが、設定も凝っていて面白いですね。冒頭いきなりロランの家の庭にロケットが落ちてきて、ロケットに乗っていたミナに、いきなり別の惑星に連れて行かれるという凄い展開です。その惑星アレイディアは、太陽がなくいつでも美しい星空が見られます。科学技術も地球よりはるかに進歩しています。

ここで気になった点です。作品中での地球は、どうやら100年以上は昔という設定のようです(電話も自動車も、電気すらまだない様子ですから)。19世紀半ばから後半くらいでしょうか。なのに、ロランの口調が完全に現代日本で、かなりの違和感を覚えました。特に「〜とか」を非常に連発するので(これ、最近の傾向ですよね。ある言語学の本では「〜の方」「〜の形」などと並んで、断言したくない現代人の傾向だと書かれていました)、とても19世紀のヨーロッパに思えません。やはり、古めの時代のキャラクターを描くならば、言葉遣いにも少し気を配った方がいいように思いました。

さて、ロランは「英雄」としてアレイディアに連れて行かれました。アレイディアには、数百年に一度大変な危機が迫るのですが、その時他の星から「英雄」を呼び寄せ、事態を乗り切るんだそうです。ここらの設定はかなり凝っており、ストーリーも非常に壮大。特に後半からラストにかけての展開は、かなり盛り上がります。「そういう手で解決するのか!」と。

更に、ラストの意外な事実とその後の戦い。この作品、実は所謂「地の文」がほとんど皆無なのですが、そのため後半からラストはとてもテンポよく読めます。長い作品なのですが、だれると感じる場面もほとんどありませんでした。地の文がなく、ほとんど全て会話だけで進行するのと無縁ではないでしょう。

ただ、地の文が存在しない事で、少し説明がわかりにくかったり、ラストの戦闘シーンも、テンポはいいものの迫力に少し欠ける点があったのは否めません。また地の文がないため、心情描写には少々物足りなさを覚えます。これは地の文がないためのメリットと引き換えでもありますから、仕方ないとは言えますが、あそこまで完全に地の文を削らなくても、要所ではもう少し入れてみても良かったのではないでしょうか。

また、アレイディアには大変な事態が迫ってきているにも関わらず、その緊迫感がラスト近くに来てもほとんど感じられないのが気になったところです(一応、地震が起こるなどのトラブルはあるのですが)。星の危機なのに、のんびりドライブに出かけているのは、流石にどうなのかと思いました(笑)。まあ、あのドライブも後半の大事な一要素ではあるのですが、もう少し緊張感を前面に出しても良かったのでは。

そして、ラストまで物語が終わったと思ったら、驚きの2周目が始まります。個人的には、1周目で十分、読者の意表をつく解決方法で大団円を迎えているように思いましたので、若干蛇足にも感じてしまったのですが、これは好き好きかも知れません。また、設定は凝ってはいますが、ところどころリアリティという意味で「?」という箇所もありました(電話もないはずのロランが、電子書籍を知っていたり。太陽がない惑星で生命が誕生しうるのか、とか色々)そういう意味で、SFというよりはやはりファンタジーなのかも知れません。あまりそこは気にしない方が良さそうです。

ビジュアル面では大変高品質で、オープニングも美しいですが、エンディングが非常に素晴らしい。ゲームのエンディングではなく、長編アニメ映画でも見終わったような余韻に浸らせてくれました。SF風な見た目を纏っていますが、その実物語の主眼は家族愛です。そういう意味で、変化球なシナリオでありながら、安心感を感じさせてくれる物語でした。これだけ長いのですから、恋愛要素でも入れてみれば、物語の軸が重層的になったのかな、とも思いましたが。

ツールはLive Makerです。インストール作業が煩雑ですが、元は有料販売ソフトだったそうですので、これは仕方ないでしょう。プレイ時間は7時間くらい。エンディングは、バッド3種類にちゃんとエンドロールが流れるエンドを3種類、合計6つ確認しました(が、エンドリストが2つしか埋まらないのは何なのか)。おまけのサイドストーリーも結構なボリュームですので、この独特な世界観の物語をたっぷり楽しめると思いますよ。
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