第633回/笑顔で最後の想い出を - Last Memory(sskmyGames) - 学園・青春
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第633回/笑顔で最後の想い出を - Last Memory(sskmyGames)

学園・青春
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Last Memory

Last Memory準推薦
■制作者/sskmyGames(ダウンロード
■ジャンル/思い出作り青春ノベル
■プレイ時間/1時間半

5月も終わりになろうかという頃、高校2年生の宮野ひかりのクラスに、1人の転入生がやってきた。しかし彼女、九ノ葉紅葉は、クラスメイトが声をかけても一切答えようとせず、孤独を貫いていた。それでもひかりは何とか紅葉と友達になろうとするのだが、ある日ひかりはひょんなことから紅葉の秘密を知ってしまった。少女達の友情を描いた青春物語。

ここが○

  • それぞれ役割がしっかりした登場人物。
  • 盛り上がる後半。
  • 心が動かされ、強い余韻を残すラスト。

ここが×

  • 前半の紅葉の態度は少々鼻につくかも。
  • 1枚絵と立ち絵で全く絵柄が違っていて戸惑う。
  • 文章がちょっと怪しい。

■笑顔で最後の想い出を

学園ものは、今も昔もフリーノベルゲームの王道ですが(とは言え、以前に比べるとストレートな学園ものは随分減った印象です)、この作品は一見王道の学園もの風に見えて、実は恋愛ではなく友情ものです。女の子同士の友情を描いた物語は、割と珍しい気がしますね。

主人公は、天真爛漫という言葉がぴったりの女子高生、宮野ひかり。快活なスポーツ少女の寧々と、おっとりした優等生の美沙という、仲の良い友人にも恵まれ、楽しい高校生活を送っています。ある日、雨の駅で謎めいた少女を見かけ、その少女のことが気になるひかり。そして彼女達のクラスに転入生がやってくるのですが、その転入生九ノ葉紅葉は、雨の駅で見かけた少女だったのです。

Last Memoryと、出だしはこんな感じです。開始してすぐに、水彩画風の1枚絵が出るのですが、その後で出てくる立ち絵とは全く絵柄が違い、驚いてしまいました。1枚絵の絵柄は素敵ですし、立ち絵もこれはこれで可愛らしいのですが、これほど絵柄が違うと、ちょっと戸惑ってしまいます。まあ、1枚絵が本来の姿で、立ち絵はイメージだと思うことにしましょう(笑)。

まず、転入生の紅葉が、なかなかに読み手を突き放したキャラクターです。ここまで徹底的にやられると、逆に清々しいほど(?)。前半はそういう訳で、ひかりがいくら手を差し伸べても、紅葉が頑なに拒絶するというのが何度も描かれますので、少し読みにくいところがあるかも知れません。

そんな印象を軽減してくれるのは、ある意味定番のキャラクター造形でありながら、しっかりと個性付けがされ、役割が分けられた友人達です。また、主人公であるひかりも、何度拒まれても紅葉に声を掛け続ける、健気なで応援したくなるキャラクターですので、ひかりと友人達のやり取りで、少々鼻につきがちな紅葉とのやり取りを、かなり和らげてくれていいます。

そして中盤で明らかになる紅葉の秘密。これは、色々な描写からすると予想の範囲内なのですが、そこで明かされる「紅葉が他人と関わろうとしない理由」は、もう少ししっかり描いてみても良かったのではないでしょうか。それこそ、前半から回想シーンでも入れてみれば、紅葉が他人と関わらない理由について、読者にも薄々感づかせることができ、紅葉というキャラクターの前半の印象もかなり変わったのではないかと思いました。後半との落差を狙ったのかも知れませんが、それにしても、この紅葉の設定は物語の大きな柱ですから、やはりもう少し筆を割いても良かった気がしました。

後半。紅葉が心を開いてからは、わずかの間だけほのぼのとした日常が流れます。そこから一気にラストまで持っていく手法は、とても見事でした。変に引っ張らず、緊張感が一番高まるところで、ぷつっと終わる。そのため、読み手には緊張感が残ったままの状態でエンディングを迎えます。ですので、大変余韻が強く残る物語となっていました。特に、通常エンドを2つ見た後のエピローグは、緊張感あるラストの後に持ってくるに相応しい、素晴らしい締めくくりです。

気になった点もあります。文章がちょっと怪しい箇所が多いのですね。「太陽が峠をこえる」とか「浅はかな胸」とか、「??」となってしまいました。他にも、誤用、誤変換が妙に目につきました。後半はかなりシリアスな物語ですから、誤用や誤変換が多いと、せっかく素晴らしい展開でも、少し興醒めしてしまいます。そこは少し残念でした。

この作品、全員が全ての台詞を喋ります。主人公達もいいのですが、私としては飛田医師の演技が気に入りました。登場人物としても、ひかりや紅葉を支えるいい役どころですし、ラスト近く、医師としての自分の無力さを嘆くシーンが特に気に入っています。通常、女性キャラクターばかりの物語には、バランスの悪さを感じるものなのですが、この作品はそれを感じませんでした。それは、友情、思い出作りというテーマに合致していたということもあるでしょうし、飛田医師がそのバランスを上手く微調整してくれていたというのも、無視できない点だと思います。

ツールはティラノスクリプト。選択肢で3つのエンディングに分岐しますが、1つは明確なバッドエンドですので、メインのエンドは2つです。上でも書いたように、最後の最後に来るエピローグが、実にいいです。プレイ時間は1時間半くらいですが、台詞をじっくり聞けばもっとかかるでしょうし、台詞を全部飛ばせばもっと早くも読めるでしょう。捻りがある物語かと言われればそうではないのですが、キャラクターとテーマが相乗効果で作品全体を盛り上げている好例とも言える作品。ハッピーエンドではないにも関わらず、その爽やかな読後感と余韻は、味わうべき価値がある一作です。
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