第640回/銃声は黄色い大地の子守唄 - 荒野の復讐者(イトQソフト) - アクション・ドラマ
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第640回/銃声は黄色い大地の子守唄 - 荒野の復讐者(イトQソフト)

アクション・ドラマ
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荒野の復讐者 Grit in wasteland

荒野の復讐者 Grit in wasteland■制作者/イトQソフト(ダウンロード
■ジャンル/火星の大地のSF西部劇ノベル
■プレイ時間/45分

たった1人の父親がある日死んでしまったルーシー。警察は自殺として処理するが、ルーシーにはどうしても納得できない。わずかな手がかりを元に、ルーシーは父の仇を追って火星へ行く。ルーシーはあっという間に捕まってしまうのだが、監獄の中で出会った囚人リンゴと共に脱獄し、復讐を遂げるべく火星の大地へ旅立った。特異な設定のSF西部劇。

ここが○

  • 設定が凝っている。
  • 粋な台詞回し。
  • 音楽、ムービーなど演出がよくできている。

ここが×

  • 少々唐突な終わり方。
  • もう一捻りが欲しかった気がする後半。
  • 人によっては少しドライに感じるかも。

■銃声は黄色い大地の子守唄

透明な街」の作者さんによる新作です。フリーのノベルゲームで、見たこともないような独自の設定の作品ってなかなか見ませんが、この作品は大変独自性の高い設定です。主な舞台は火星なのですが、どこから見ても西部劇。音楽も演出も西部劇風。SF風西部劇なんて、フリーノベルゲームでは初めて見ました。この独特の舞台設定だけで、まず冒頭から強く読者を惹きつけてくれる魅力があります。

ルーシーの父親が、ある日右腕を切られた状態で死んでいました。警察は自殺として片付けますが、ルーシーには納得が行きません。ルーシーは、父が絵の具代わりに使用していた火星の土を頼りに、火星に飛んで、父の敵討ちを誓うのでした。冒頭から、ちょっと退廃的な雰囲気が伝わってきて、こういうのが好きな方ならば、すぐに物語に引き込まれるでしょう。

荒野の復讐者登場人物も多くはなく、物語の作りも、凝った伏線を張り巡らせるようなタイプではなく、驚くような展開をする訳ではありません。しかし、テンポよくイベントが起こってプレイヤーを飽きさせません。特に、台詞回しが実に粋ですね(人によっては少しドライに感じるかも知れませんが、西部劇ですしそこも魅力の一つかと)。また、上にも書いた通り音楽も西部劇風で、選曲が実にいいです。荒れ果てた大地、酒場に集う荒くれ者たち、そういった雰囲気が余すところなく伝わってきます。こういう作品をプレイすると、作品世界にあった選曲というのは地味ながら作品の肝なのだなと思わされました。

冒頭でいきなり3Dムービーが流れて、これも驚かされます。冒頭のムービーに限らず、背景も3Dモデリングされていのですが、これは作者さん自ら作ったのでしょうか。一般に、3Dモデリングの背景というのは、人工的な感じが強く、私はどうもノベルゲームには合わない印象を持っていたのですが、この作品の場合は、逆に独特の無機質なイメージが、「SF風西部劇」という作品世界に合っていて、非常に良かったと思います。

そして、途中に決闘シーンがあるのですが、ここではちょっとしたミニゲームとなります。と言っても、ターゲットマーク(照準)が現れたら素早くクリックするだけですので、別に難しくありません。ターゲットの現れる場所さえ覚えておけば、連打しておけばOKです(見てから押しても十分間に合うとは思うのですが)。こういうちょっとした味付けも、西部劇風のムードを高めるのに一役買っています。

上にも書いたように、展開はある意味ストレートで、さほど読者が驚くようなどんでん返しがある訳ではありません。父の仇についても、意外性が乏しいのは別に構わないのですが(そういうタイプの物語でもありませんし)、もう少し確執というか、そこに至った過程を描いておけば、説得力があったような気がしました。過去回想をもう少し入れてみても良かったかも知れませんね。

そして、物語は選択肢で2つのラストに分岐します(バッドエンドもあるのでエンディングは3つ)。ノーマルエンド(復讐エンド?)とトゥルーエンド(逃亡エンド)という感じでしょうか。どちらも少々終わり方が中途半端な感じで、あまりハッピーエンドっぽくはないのですが、作品の雰囲気からすれば、合っている終わり方という気もします。もう少しすっきりするラストがあれば、より良かったかなとも思いましたが。

上で音楽について書きましたが、途中歌を歌うシーンが出てきます。これが非常に効果を上げていました。ストーリー上は大して重要なシーンという訳ではない、箸休めのような一場面なのですが、この作品らしい味付けとして、非常に効いています。歌がまたいい塩梅にレトロで、何度も聴いてみたくなります。読了したらおまけで歌を聴けますので、心ゆくまで堪能してください(?)。

あまり捻ったところのない物語ではあるのですが、独特の舞台設定、魅力的なキャラクター、粋な台詞回しと、これだけでも十分楽しめると思います。ツールはティラノスクリプト(ティラノビルダー)。選択肢は少ないので(1箇所?)攻略で迷うこともないでしょう。プレイ時間は45分くらいです。ラストで突然ルーシーの声が聴けるのに驚きました。でも、声を入れる場合は、全編ボイスありにするより、これくらい絞った方が逆に効果的かも知れないと感じました(全部声入れても、なかなか全部は聴きませんし)。とにかく、フリーらしさを存分に味わえ、他の作品にはない味を持った意欲作です。プレイ時間も長くないですから、気軽に味わってみてください。
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