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第643回/散るも散らぬも天上の花 - 天上の花は散る(しーんーせーかー)

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天上の花は散る

天上の花は散る■制作者/しーんーせーかー(ダウンロード
■ジャンル/神域に召された少女の悲恋ノベル
■プレイ時間/20分

神々が住む神域と、人間の住む上界、下界、底辺と分かれている世界。生まれた時から、神様の花嫁となることを義務付けられた、「天上の花」である上界の少女マキア。収穫祭の期間中にマキアは、幼い頃に自分を助けてくれた、初恋相手の少年に会おうと、下界に降りていく。短編なのに設定が凝っている、ファンタジー風悲恋物語。

ここが○

  • 凝った世界設定。
  • 一途なマキアとインフェルノのやり取り。
  • 儚く、抑えた悲しみが感じられるラスト。

ここが×

  • 設定が少し難解。
  • 因果関係の理屈付けが伝わって来にくい。
  • 尺の割に要素を盛り込み過ぎのような。

■散るも散らぬも天上の花

前回に引き続いて短編作品のご紹介。実は、しばらく前に既に読んでいたのですが、短い作品にも関わらず少し難解なところがあり、すぐにはレビューが書けなかったので、何度かプレイしてみました。未だに、完全に理解しきれている訳ではないのですが、世界設定やキャラクターなど、独特な魅力がある作品ですので、やっとのご紹介です。

まず舞台設定が変わっています。作中の世界は、神々が住んで人間界を治める神域、その下に人間たちが住む上界、下界、底辺に分かれているという設定です。上界、下界、底辺は互いに行き来ができるのですが、名前の通り上界には身分の高い支配階級の人々が住み、底辺は強制労働をさせられているような人や、罪人が暮らしています。そして主人公であるマキアは、上界で暮らす18才の女性。

天上の花は散るマキアは神の花嫁として、神域に召されることが生まれながらに義務付けられている、「天上の花」と呼ばれる存在。そんな彼女には、子供の頃に一度だけ出会った初恋の人がいました。初恋の相手にもう一度会おうと、収穫祭の日に下界に降りていくのですが……。こんな出だしです。短編なのですが、冒頭部を解説するだけでも、その一風変わった世界観が伝わるのではないでしょうか。

その世界観はこの作品の魅力の一つでもありますが、尺の割に世界観が複雑で、少し分かりにくいきらいがあります。また、物語の長さの割に盛り込まれている要素が多く、若干の消化不良感は否めません。冒頭は、マキアが見ている夢で始まるのですが、これも初めてプレイした時は何のことやら分かりません。また、因果関係(どうしてそのようなことになったのか、そうしてそういう行動をしなくてはならないのか)が、少々伝わって来にくいので、プレイしてなかなか腑に落ちないのですね。

特にラスト近くは、初回のプレイでは「どうしてそのような結末になるのか」が少し分かりにくく感じました。一応、作中の登場人物が説明してはくれるのですが、微に入り細を穿つような説明がある訳ではなく、多くのところが読み手の理解次第というところがあるので、少し読み終えてもスッキリしないものを感じたのは事実です。

そんな訳で、ファンタジーものとして見れば、説明不足で掴みにくいところがあるのも事実ですが、恋愛ものとして見れば、マキアとインフェルノのやり取りや苦悩が、短い展開の中から伝わってきて、読み応えのある内容です。幼い頃の出会いから、収穫祭での再会(都合がいい展開と言えばその通りですが、まあ短編ですし)、そしてラストでのやり取りまで、2人の描写はとても良かったと思います。

特にラストにおける、マキアの凛とした佇まいには、惹かれるものを感じました。欲を言えば、インフェルノの側の心情がもっと伝わってくるイベントでもあればより良かったようにも思いますが、キャラクターの描き方、特に心情描写にはとてもセンスが感じられました。もう少し長い尺で、舞台や因果関係の描写を丁寧にしていれば、かなり化けた作品だったのではないかと思います。

文章は終始マキアの一人称で語られます。丁寧なマキアの性格を表すような文章で、とても読みやすいのですが、一ヶ所だけ「そんなに頭下げるなよ。そういうの、歯がゆいし」という用法が気になりました。これ、状況からして「気恥ずかしい」くらいの意味ですよね? 歯がゆいは「もどかしくて苛立つ」という感じの意味ですから、ここは「面映ゆい」「恥ずかしい」「照れ臭い」くらいが適切では。

ツールは初登場のNScripter 2です。さすがNScrの後継ツールだけあって、非常にプレイしやすく、ストレスはありませんでした。特に既読スキップの速さは嬉しいですね。もっと使われていいツールだと思うのですが、NScrからNScr2に乗り換えるのも、意外とハードルが高いのかも知れません。選択肢はなく、プレイ時間は20分程度。悲しい終わり方ではあるのですが、上にも書いたようなマキアのラストの態度もあって、意外なほど読後感は良い作品です。この作品でしか味わえない雰囲気は、一読の価値がありますよ。
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