第649回/立ち上がれ、底辺ボーイズ - Cram School(beco-) - 学園・青春
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第649回/立ち上がれ、底辺ボーイズ - Cram School(beco-)

学園・青春
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Cram School

Cram School■制作者/beco-(ダウンロード
■ジャンル/底辺からの逆転慶應受験ノベル
■プレイ時間/40分

朝比奈伸治は、いつも友人の伴角栄とゲームばかりしており、成績も底辺。そんな彼が、たまたま予備校の冬季講習慶應英語コースを受けるのだが、基礎単語が分からずに散々な目にあってしまう。が、そこで出会った女生徒が気になった伸治と角栄は、一念発起して猛勉強を始めることに。受験の1年間の予備校生活を描いた、青春受験物語。

ここが○

  • 異色のテーマを上手く描いている。
  • 会話が軽妙で、受験にありがちな重苦しさを感じさせない。
  • 主人公の成長の描き方や示し方がいい。

ここが×

  • 起承転結の「結」だけないような収まりの悪さ。
  • 恋愛要素がもう少し描かれていても良かったかも。
  • そのためラストが何となくすっきりしない。

■立ち上がれ、底辺ボーイズ

学園ものの物語だと、当然舞台は大学なり高校なり中学校なりになるのですが、この作品は大変変わっています。登場人物はみんな高校生なのに、高校が一切舞台になりません。ではどこが舞台になるのかというと、予備校なのです。そう、この作品は、予備校を舞台にした「受験ノベル」。なので、ほとんど勉強シーンだけで進み、普通の学園ものや青春もの、恋愛もののような場面はほとんど( 全く?)ありません。これは斬新です。

主人公の朝比奈伸治は普通の高校二年生、いつも友人の伴角栄(すごい名前だ)と対戦ゲームで遊ぶばかりで、当然二人とも成績は芳しくありません。そんなある日、母親から危機感を煽られ、予備校のパンフレットの写真の女の子が可愛いからという不純な理由で、冬季講習を受けることにします。しかも、無謀なことに「慶應英語コース」。

Cram School案の定、授業初日に基本的な単語すら分からず、頭の良さそうな(でも性格の悪そうな)受講生から嘲笑われる始末。しかし、そこで出会った二人組の女子高生、東堂静華と竜崎舞に気に入られようと、伸治は慶應大学、角栄は早稲田大学を目指すことにします。しかし現状では二人の学力で早慶なんて身の程知らずもいいところ。

そこで天の助けが。伸治を気に入ってくれた静華の兄、鉄平は慶應出身の秀才。彼が、伸治に勉強法を細かくレクチャーしてくれることになったのです。かくして、伸治と角栄の戦いが始まったのでした。受験をテーマにした作品と言えば、「入試直前対策ゲーム」がありました。あちらは入試当日と合格発表だけを取り上げた作品。が、こちらは高2の冬から入試までという、なかなかの長丁場です。

その期間を、鉄平のアドバイスを必死にこなしつつ、少しずつ実力をつけていく伸治の様子が上手く描かれていて、読み応えがあります。勉強の様子が細かく描かれている訳ではなく、むしろ結構端折られているのですが、三回ある模試での主人公の描写から、主人公が段々力をつけていく様子がしっかり描かれており、この描写の上手さには感心させられました。単に成長を描くだけでなく、模試を受ける時の主人公の緊張、動揺が軽減しているのが、はっきり伝わってきて、それが間接的に主人公の成長を語っているのです。「過程を過剰に描写せず、結果で過程を語る」というこの手法は、大いに勉強になるところがあるでしょう。

また、鉄平が教えてくれる勉強法が、実にリアルです。調べたのか、あるいは作者さんの実体験なのでしょうか。あの方法を取り入れるだけでも、実際の受験勉強で効果がありそうです。私は、あれほど系統立てた受験勉強をした覚えがありません(笑)。勉強法までは参考にしなくても、試験の解き方は「使える」のではないでしょうか(もう随分試験なんて受けてませんが)。

と、受験ものとしては非常によくできており、主人公の成長物語としても楽しめます。ただ、恋愛ものとしては少し中途半端なところが目につきます。メインはそちらではないので、まあいいかなと思わなくもありませんが、もう少し踏み込んでみれば、より物語が奥行きを増したように思います。

それを顕著に感じたのがラストです。ラスト前で、静華の心を揺さぶるような事件が起こり、そのせいもあっての静華の受験結果となってしまうのですが、ラストでその件に対するフォローが何らありません。フォローがないまま終わってしまうので、何とも言い難い収まりの悪さを感じました。「起承転」まできちんとついてラストまで引っ張ってきたのに、「結」がなかった、とでもいうような感覚を覚えたのです。そこだけ気になりました。せめて、気の利いた後日談でもあれば、だいぶ印象が変わったのですが。

受験ものということで、描き方によっては非常に思い物語にもなったでしょうが、伸治と角栄、あるいは伸治とその両親とのやり取りが、うまい具合に緊張感を緩めてくれて、テーマがテーマなのにかなり気楽に読めます。途中声だけのシーンで、伸治たちの成績が出てきて、講評(?)が語られるのも、いいアクセントになっていました(結局あの人たちは誰たったのか、詳しくは明らかになってないのですが(笑))。

ツールはティラノスクリプト。選択肢はなく、プレイ時間は40分くらいだと思います。テーマの料理の仕方と、主人公の成長の描き方は一見の価値があります。これから受験に挑む方は、心構えや勉強法が取り入れられるかも知れませんし、過去に受験で苦労した方は、昔を思い出せるでしょう。何にせよ、普通の学園ものとはかなり違った感覚で読める作品です。学園もの、青春ものがいまいち苦手という方も、一度お試しください。
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