第659回/海が世界を飲み、君が世界を見る - 沈める日(気狂いなすび) - 不思議系
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第659回/海が世界を飲み、君が世界を見る - 沈める日(気狂いなすび)

不思議系
  • comment0
  • trackback-

沈める日

沈める日準推薦
■制作者/気狂いなすび(ダウンロード
■ジャンル/世界崩壊青春ノベル
■プレイ時間/1時間15分

主人公の高校生優は、特に代わり映えのない毎日を、幼馴染の香澄と楽しく過ごしていた。そんなある日、暴走する車に轢かれそうだった同級生、彩をすんでのところで助け、優と香澄は彩と仲良くなる。3人での毎日は今までより楽しいものだったが、世界はだんだん海に侵食され、終わりを迎えようとする。セカイ系青春ノベル。

ここが○

  • ラストで意外な方向から食らわしてくれる1周目。
  • ストレートな青春ものとしてよくできている2周目。
  • 3人の関係が程よい距離感で描かれている。

ここが×

  • 世界が滅ぶかもという危機感が伝わってこない。
  • 背景画像の色使いは目が痛くなりそう。
  • 日本語がちょっと怪しい。

■海が世界を飲み、君が世界を見る

いわゆる「セカイ系」に分類されそうな作品のご紹介です。私はあまりこのジャンルに詳しくないので、的外れなことを書いてしまう恐れもありますが……。最近で雰囲気が少し近い作品と言えば、「ユメミルセカイ」でしょうか。オチの付け方や設定などは全く異なりますが。

主人公は高校生の優と、幼馴染の香澄。2人は似合いのカップルに見えるのですが、幼馴染にありがちな、「相手を異性として意識しない」ことにして、付き合ってるのかと言われても「あいつはただの幼馴染だから」と答えるという、まあ(ゲームでは)よくある関係です(笑)。そして冒頭で、ちょっと目立たない同級生の彩が、自動車事故に巻き込まれそうになります。

沈める日間一髪、優が彩を助けたことで、彩は優、香澄と親しくなります。が、その日から優は街の景色に違和感を感じ始めるのでした。海がだんだん街を侵食していく日々。そんな日々の中、優と香澄はお互いの想いに気付き、一歩踏み出すことができるのでしょうか? と、これだけ見れば、セカイ系の設定を借りた青春ものなのですが……。

このラストに隠された真実は、特に新しい手法という訳ではありません。しかし、セカイ系にありがちな展開に持っていくのではなく、優と香澄に彩も絡めた恋愛模様をメインで描くことで、上手く真相から目を逸らす作りがよくできています。更に、ラストで「ああそういうことね」と思わせてから、更に明かされる意外な事実。これとて、物凄く意外という訳ではなく、最初から「そういう物語かも」と予想しながら読めば、容易に真相にたどり着ける人がいてもおかしくはありません。

が、途中では本当に単なる青春ものなので、読者が油断しやすくなるような作りなのです。また、優、香澄、彩の関係、距離感の描写がよく、そちらに惹き込まれるような物語の作りになっているので、ラストが一層効果的でした。謎という意味では、そこまで捻っている訳ではないのですが、同じ謎でも構成を工夫することで、明かされた時の驚きを増幅できるという、いい見本だと思います。

反面、世界がだんだん崩壊していく緊張感はかなり薄めです。そういう描写があまりないので、実は海が侵食云々は優が見た妄想か幻で、途中までは単なる日常ものなのかと思って読んでいたほどです(それこそが作者さんの狙いなのかもしれませんが)。もう少しここを明確に、緊張感を持って描いてもよかったような気はします。が、そうするとこの作品の良い点を犠牲にしてしまいそうで、なんとも難しいところではありますね。

1周目を読了すると、選択肢が追加され、別ルートへの道が開きます。こちらのルートは、セカイ系ではなく、ストレートな青春ものです。正統派な学園青春ものとして(学園内はあまり舞台になりませんが)、こちらもなかなかよくできたシナリオ。当然、1周目よりこちらの方がハッピーエンドと言える内容です。1周目もよくできていますので、それだけで終わるのも手でしょうが、人によっては後味が悪く感じるでしょうから、2周目を追加したのは私は正解だったと思います(その辺りの事情は、後書きで読むことができます)。

文章は典型的なノベルゲーム風で、読みやすくはあるのですが、ただところどころ日本語が怪しいです。特に目立ったのは「いちよう」という表記。これが頻繁に出てきました。「一応」(いちおう)の間違いですが、流石にかなりの回数出てくるので、ちょっと気になります。それと、背景画像の色が、妙に極彩色で目が痛くなりそうなのも、好みが分かれるかも知れません。物語の設定を考えればありとは思いますが、もう少し違った加工で雰囲気を出してみても良かったかも知れませんね。立ち絵は、懐かしい感じの、手作り感のある絵柄。昔のフリーノベルゲームのような雰囲気があって、私はこういう絵は結構好きです。

ツールは吉里吉里Zですので、軽くて安定しています。選択肢は1箇所だけ。1周目は45分、2周目は30分、合わせて1時間15分くらいのプレイ時間です。仕掛けだけに凝るのではなく、仕掛けと構成、キャラクタードラマを連動させて、全体を効果的に仕上げる手法に感心させられた作品です。セカイ系が苦手でも、青春ものとしてもよくできていますので、敬遠せずんプレイしてみてください。
関連記事

Comments 0

Leave a reply